ATOKでええ徳(トック)
「スマホの変換がヘボすぎて嫌んなっちゃうよ」
へーイ、ボーイ 空を見ろ うつむかないでさ
「ほんと海外企業にいいようにやられてるわね」
紅は自作スマホを使っている。
「候補の一覧で選んだやつがちゃんと出て来なかったりするしさ」
不良品と呼べるレベルである。
「論外ね。それから、多少の誤タッチでも気を利かせて予測してくれるものだけど、変換が律儀すぎて融通が利かないのよ」
一文字でも打ち間違えると正しく変換できないので、やり直しになる。
「僕も紅さんのスマホにしようかなあ」
情けないのお。
「前も言ったけど、機種変したばかりじゃない!」
物を粗末に扱う人間に、嫌悪感を抱く紅。
「そうなんだけど、ほんとにこの会社はよく独禁法にひっかからないよなあってつくづく思うよ」
紅の髪留めは、このメーカーを意識したものではない。値段が手の付けられない領域に到達しつつある。
「スマホを変えなくてもATOKを入れたらどうかしら? ただし、覚悟が要るけどね」
日本の置かれた現状に満足できず異を唱えたいなら、挑戦状を叩き付けるべきだ。
「噂には聞いてるけど、導入しようとすると結構妨害が入るみたいだね」
うまく立ち回らないと、すぐ画面が固まってしまう。
「最初の設定を念入りにやることね。過剰なサービスもあるから自分の欲しい機能だけチェックすればいいと思うわ」
スマホだけで完結させず、PCから登録させたほうがよい。月額1北里ほどチャージすれば、PCにもスマホにも1台ずつATOKを使えるようになる。
「OSの更新の時とかすごく時間が掛かるみたいだね」
敵対勢力をそうのびのびと使えるようにはさせてくれない。更新や起動に時間が掛かるのは、外来アプリと国産アプリがバトルの真っ最中だからである。
「1994年以前に戻りたいものだわ」
紅ならタイムリープも可能ではないかと思えてくる。
「ATOKってさ、予測がとても優秀だから単語登録する必要がないんだよね」
ビジネスメールを書くときにも非常に役立つ。
「そうなの。文章を作るのが楽しくなるわ」
紅の文字は手書きも美しい。
「帰ったら早速課金するよ」
年往の言葉を受け、紅も微笑を浮かべる。
「変なコトを言うようだけど、願い事を紙に書くときや大事なお手紙を書くときって、便箋やペンにも気を遣うでしょう? 電字を打つときもまったく同じことが言えると思うわ」
まがまがしいデバイスで文字を打ち込んでいては、良くない出来事が起きるばかりである。
「AIにお願いするときもそうやって道具や環境を整えてからのほうが、楽しいことが連鎖反応で起きるんだろうね」
朗らかに清く正しく美しく。




