5バック対策
「明日が待ちきれないね!」
大のサッカー好き、年往。
「北伊勢からも日本代表が出場してるんだから、誇らしいわ」
三重野作品のクロスオーバーである。
「北伊勢高校のサッカー部員も、明日は試合の予定を組まずにジムネイジアム・ビューイングするらしいよ」
火輪還ノボルの先輩が在籍している。
「一生に一度あるかないかの出来事だものね」
時よ止まれ、そなたは美しい。
「ところでさ。明日の対戦チームは、絶対に引いて守ってくると思うんだよ」
アジア予選でも日本の攻撃力を畏れた各国が、ガチガチに守備固めをしたせいで、大いに苦しめられた。
「それも立派な戦術よね」
点を取られなければ確かに負けはないが、観客を楽しませられるかは別だ。
「5バックを布いて来るんじゃないかなあ」
もっと枚数が増えるかもしれない。
「こういう時は陣形を紙に描いてみることね」
『5バックの崩し方』で検索しても、なかなかピンと来る解説に出会えない。それだけ攻略法が見当たらないということなのだろう。
「5枚が最終ラインに一直線に並んだとして」
ノートの上部に5つの赤丸を描く年往。
次に、日本の3トップを青丸で印する。年往はトンボの赤青鉛筆を泥棒削りにして愛用している。赤(朱)はバーミリオン、青(藍)はプルシアンブルーなどど気取った英字が記されている。
「うわあ、これはまったく打開策が思い付かないよ」
ボールをはじき返されるイメージしか湧かない。
「ちょっと待って。相手国のMFとFWもきちんと描くのよ」
「あんまりパターンは無いけど、ハーフは下げ気味が二人、上がり気味が二人かな。で、一人だけアタッカーを置くんじゃないかな」
「何か気付かない?」
ノートに目を凝らす、理数科No.2。
「そうか。相手チームのMFは、どうしてもサイドが手薄になるね」
サイドに寄せると真ん中がガラ空きになってしまう。そんなリスクは犯せない。
「この陣形を見たら自ずとサイドから攻めるのが基本の戦略ということが分かるわ。中央は密集しすぎだもの」
ウイングバック、シャドウの激しいサイドからの出入りでDFを引きつけられたら、そこで初めて真ん中にボールを供給すれば良い。
「ただ、相手は基本の陣形をほぼ動かさない気がするんだよね。5枚のディフェンスの間隔がほぼ固定されると思う」
「サイドからなら、相手の寄せは一人のハズだわ。そこは思い切って勝負してもいいと思うの」
日本にはスピードスターかが何人もいる。
「そこで極上のクロスボールだね!」
シュートをフリーで打てる余裕は、もちろん無い。
「ハーランド選手も決めていたけれど、ディフェンス最終ラインのほんの数十センチ先にラストパスを出して、飛び込むことね」




