拭く男
「トシ、やっぱりオシャレね。ハンカチも日替わりだもの」
ファッションセンスと成績は、なんら相反しない。
「日替わりってほどは持ってないよ。せいぜい曜日替わりかな」
七色のハンカチを備えている。
「ハルヒちゃんの例のアレね」
ハルヒは曜日ごとに髪型を変えていた。
「トシオの七変化さ」
見えないところのオシャレも大切なのだ。
「まあでも、トシみたいにハンカチを持ってる男子は少ないわ」
女子でも少数になって来た。
「環境保護を声高に叫ぶ人がハンカチを持ってるか、要チェックだね」
紙タオルをもったいないと思うのは、貧乏性とは言わない。
「ちょっと汗をかいたりした時とかね」
甲子園を湧かすことも出来る。
「こぼした時とか、怪我をした時も役立つよ」
ジュースをこぼしてオロオロしていた年配者を、助けたことがある年往。
「わたしは真似出来ないけど、鼻をかむ人もいるわね」
外国人がそうする場面に、出会ったことは無い。
「花粉症の時とかは、絶対必要だよ」
ティッシュももちろん携帯している。
「日本の小学校教育って、これ徹底してるわよね」
ティッシュとハンカチを持ってくるように指導される。ティッシュを忘れて鼻が垂れると、トイレットペーパーでかむ羽目になる。
「すごいよ、日本の教育は。5教科さえ出来ればいいなんて考えじゃないからね」
そんな物は無駄だと言う論者は、理数科で紅たちと机を並べることは出来ない。
「義務教育が終わるとその精神が薄れちゃうのが、なんだか悲しいわ」
ハンカチで涙を拭く仕草をする紅。
「でも、拭くって生活に密着した本当に基本となる動作なんだと思うよ」
ポートピア連続殺人事件のコマンドに、拭くがあってもおかしくない。たたけ→トンカチでキャラ名は、これぞゲームと言ったところ。
「飲食店で調味料入れがホコリをかぶってると、心配になるわ」
姑のような発言である。掃除のポイントをもっとも短い言葉で表現すると、ハクフク!となる。
「ホコリが物語るってことあるよね」
無駄に高いプライドを持つより、まずはそのホコリを拭くことだ。
「わたしね、毎回気になるんだけど、カードリーダー(決済端末機)ってあるじゃない? あれの掃除ってほとんどしてないんじゃないかしらって感じるの」
お金を頂戴する側の受け入れ態度として、これはいただけない。せっかく拭いても水拭きの跡が残ってるのは、いけませんぞ。
「なんかさ、風水とかを馬鹿にする人がすぐあらわれるけど、そんなものは汚くていいんだって人とは、友達になれないよ」
一言でいえば、お金にだらしない予感が働く。
「けっこう名の通った立派なお店でも、そこが疎かになってるわ」
教室の汚れを発見した紅が、雑巾でさっと拭いた。ボロ布で良いので、拭く物は身の回りに置いておくこと。
(やっぱり女の子が掃除してる姿って、いいよなあ)
紅拭くの始まり。
拭くと、運もツイてくる。




