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月の王子さま  作者: 三重野 創


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14/18

タレが一番大事

「この時期の秋刀魚は格別だわ」

 魚食系女子・紅。


「高価なお肉を食べるより、安くても新鮮な魚がいいね」

 ここで煮るだけでぱくついてる人はいるけど。


「秋刀魚に関しては焼くときに塩をまぶしてカボスを搾れば上等ね」

 紅はあれをやりたいこれを食べたいなどの願望は多いが、自分でテキパキやるので我が儘を散々言う人間とは大きく異なる。


「醤油も忘れないでよ?」

 混ぜないこと、掛け過ぎないこと、はみ出さないこと、三時抜くこと、わさび入れてもいいよ、タレが一番大事。


「七輪にも困ったものね」

 珪藻土で出来ているのだが、扱いが難しい。購入した時点でひび割れしていることもザラだ。おまけに水に弱い。


「うん。慎重に使わないとね。丸い網もおもしろいけど、まあ普通売ってないしさ」

 DIY好きの年往。


「陶器で作ればいいんじゃないかと思うけど」

 七輪を購入した人は驚いたかも知れないが、あの特徴的な黒いラインは、プラ製でピン留めしてあるだけだったりする。


「そうだよね。カラーリングも陶器なら何でもござれだよ」

 

「角形のほうが便利そうだけど、風流があるのは断然丸形なのよね」

 三角型は使い勝手が悪くて失格だ。


「いいの? 紅さん」

 この七輪会には、松茸が饗された。


「気にしないで。今年はニョキニョキ生えてたから」

 椎茸農家は背が高いという俗説があるが、キノコを食べてスーパートシオになる。


「ありがとう!」

 年往は紅顔の美少年である。


「料理は素材が命っていうけど、タレの選択を誤ってはいけないわ」

 どちらかと言うと辛党の紅。ただ、酒飲みになることはなさそうだ。


「この食材にはこの調味料が合うっていう組み合わせが、もうある程度確立されてると思うよ」

 

「カレーまんを甘くしないで欲しいわ」

 甘辛チキンもお気に召さない紅。


「味噌カツもしょっぱいのが食べたいよ」

 ここに紅が居なかったらどんなに切ないだろう。それ以上にそんなことを想像してしまったことに、年往はせつなく感じた。








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