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月の王子さま  作者: 三重野 創


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12/18

挙国一致

「新しいリーダーが誕生するわね」

 紅がテレビにかじりついている。


「立候補の時はみんな良いこと言うんだよ。その後も見越して一票投じるのが難しいね」

 年往は保守党の党員ではない。


「国難ですもの。一致団結というのがどのレベルを指しているのかしら」

 政治の話は食事会などではタブー視されるが、その話しかしない相手は紅も辟易だ。


「たとえば統一っていうのもさ、個人の信仰するものは変えられないと思うんだよ。そういった棲み分けはしつつも国をまとめるってのはよっぽどの実行力のある人じゃないと無理なんじゃないかな」

 日本に入ったら当然日本のルールに従ってもらわなければならない。


「労働もせずに裕福になろうとするのが、貧困の入り口だわ」

 略奪の図式が浮かび上がる。


「まともな話が通じなくなってるっていうのかな。そのまともな考えのほうがおかしいんだなんて言い分が跋扈してる」

 悪の根を抜根しなければならない。


「聞く耳を持つなんて言うけど、そんな暴言に聞く耳を貸しちゃ駄目よ」

 紅の耳はやや大きめだ。佐藤藍子ほどではないが。


「SNSから世論が形成されたりするけど、大多数は自分に関係ない話なんだよね。Xでもおすすめにしてると頭がおかしくなりそうだよ」

 そうした投稿は積極的にミュートすること。自分のタイムラインが穏やかになれば、不思議と世界も平和になる。


「トシ、Xやってるんだ」

 紅は知られたくないので公にはしていない。


「Twitterの頃からね。絵を投稿したりしてるよ」

 漫画愛好家の年往は、誰に言われることなく自然とペンを執った。


「トシ、上手だものね」

 タッチは違うが、紅も相当な腕前だ。


「描くのは感性なんて片付けられるけど、一応こうやってしようああやってしようの積み重ねなんだよね」

 AI画はそれらをすっ飛ばして出来上がる。


「大袈裟なようだけど、生きるための基礎鍛錬という感じね。小学校で計算ドリルを解いたり教室の清掃をこなしたりとかね」

 こうしたことは、後々必ず活きてくる。


「そういうのを無駄だって言ってしまう声は、ミュートに限るね」

 言ってるほうは気持ちいいかも知れないが、あまりにも無責任すぎる。


(僕の描く未来予想図では、紅さんが日本のリーダーになってるんだよ)





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