年往バーガー
「美味しいわよねえ、月見バーガー」
月に代わっておしおきとは?などと深く考えてはいけない。
「名前にどうしても反応しちゃうよ」
少年の名は、月見年往という。
「そういうのあるわよね」
彼女なら、紅一点と言われるたびにペンが止まる。
「月見バーガーってマクダの中でも上位の人気だよね? 期間限定だけど季節問わず話題に出るし」
ネーミングの勝利かも知れない。
「月見うどんも好きだわ」
風流である。
「アイスコーヒーに大福を入れて、雪見コーヒーなんてね」
アリやな。
「もみじ饅頭でも出来そうだわ」
紅は予想に反して、言葉遊びが大好きである。甘いのははんばーかーれるが、星見バーガーも作れそうだ。
「『僕、月見なんですけど』って言ったら、割り引いてくれたりしないかなあ?」
「お金持ちなのに、厚かましいわね!」
バンズよりバーグの厚いほうが良い。肉は厚い内に食え。
「でもさ、企業側がそういうキャンペーンを張ることがあるよね? 全国のナオミさんは今日だけ半額! とか」
ナオミは旧約聖書にも出て来る国際的な名前である。
「確かにね。野球選手の特別な試合で同姓同名の人だけ限定とか」
ただし、証明するものが必要だ。
「スナックで下の名前が付いてる店あるよね。そういうとことか話弾みそう」
「あなた、出入りしてるんじゃないでしょうね!」
本名ではないかもしれないが。
「まさか! でも、どんな形態のお店でも個人名ついてるとこはあるから、話の切っ掛けになるかも」
人名では無く、外来語の意識高そうな名前も増えた。
「わたしね、漢字だけの社名って好きなのよ。海外的には表記を使い分ければいいんだし」
任天堂は漢字もローマ字表記も美しいが、カタカナやアルファベットにしてなんだか間の抜けた字面になる社名もある。
「そうそう、漢字のほうが堅実できめ細やかなイメージがあるよ」
それとは違うが、英字社名で海外メーカーだと思っていたら、日本の会社だったと判明することも。
「資生堂とか文明堂も視認性が高いわ」
短くて情報量の多いのが、漢字の特性だ。
「かつやでカツヤさんが名乗り出た、なんてことはあると思うよ」
いきなりそんなことを言われた店員は迷惑だが、キャンペーンが採用されたら全国のカツヤ氏が常連になるだろう。




