再会と決意
「あ、アリラちゃー…」
ダンは無意識にもう一人の俺に目隠しをしていた。
少し大きめの麻の服を着たアリラはズボンを履いておらず、卵形で丸く深めに開いたオーバル・ネックからは白く柔らかそうな胸の谷間が覗き、丈も太ももの途中で終わっていたのだ。風呂上がりなのかホワイトベージュの髪の毛からは水滴が滴り落ち、髪を片手でかき上げる姿は時間を止めて見てしまう。
「お兄ちゃん?!」
覆い隠された方手を両手で引き剥がそうとされ、そこでダンは初めて自分がしたことに気づき短く謝りながら手を離した。すると、もう一人のダンもアリラの姿にぼーっと見惚れダンはなんとも言い難い気持ちになったが。そんな場合ではなかった。
客人が一人じゃないことに驚きつつアリラは不思議そうに首を傾げる。
「お兄ちゃん?」
訝しげに顔をジロジロ眺めるともう一人のダンに説明を求める。
「そう! 僕に生き別れの兄弟がいたんだ」
興奮気味に鼻息を鳴らしながら両手で拳を作る。対してアリラは冷静だ。
「確かに似てるが……あなたそれを素直に受け入れたの」
いけない子を咎めるみたいに人差し指でもう一人のダンを注意したかと思うと、今度は少し照れたみたいに。
「私……昼間あなたとダンを間違えて……」
家に誘ったことを照れているのだろう。間違えるのも無理はなかった。ダンの体は昔と違い筋肉も衰え痩せ細っていた。アリラが死んでからまともな食事をとっていなかったからだ。
つまり、今のもう一人のダンと同じくらい痩せていたのだ。
「入って」
ありらは二人を家に通すと近くの壁にかけてあったランプをもちゆっくりと歩き出す。
「こんな格好で申し訳ない。芸で返り血を浴びたものでな」
ダンは己の耳を疑った。芸というのは王の悪趣味な芸のことかと。あのアリラを喪失した時のことを思い出しダンは表情を固めた。
こちらの世界ではアリラが騎士団長を務めていて、行っていても不思議ではないとは思う反面、目も見えずおっちょこちょいで足をぶつけたりしていたアリラを思い浮かべると信じがたい。
(人を……殺しているのか……あのアリラが……)
こちらの世界にいるアリラは性格は真逆で前のアリラとも別人と考えるべきだ。しかし、出来れば血などとは縁の遠い存在であって欲しかった。
「なぜ……」
そう問うと彼女は朗らかに笑いダンの瞳を少し見つめた後目を細めた。
「泣き虫さんに悪い人はいないと思うの」
意図したこととは違う内容の返答だったが、ダンを招き入れた理由なのだろう。




