武器屋③
町がゆっくり目覚める頃。扉が開くと共に焼き立てのパンの香ばしい匂いが朝の通りに流れ出て、まだ静かな町に1日の始まりを告げていた。中年くらいの女性がが看板を立てに外に出てくると、
「あらアリラちゃんダンくんもおはよう。朝早いわね」
「おはよう。エリおばさん」
二人は息を揃えて挨拶をし、エリおばさんの表情が和らいだ。
「あらダンくんのそっくりさん」
「ジンだ。ここのパン屋は朝食べたパンのところだ」
アリラが自己紹介をしてくれる。ダンはこんなところにパン屋があっったのかと思いながら不思議な感覚に陥った。
「どうだいうちのパンは美味しいだろう。寄ってくかい。今日は新商品の安らぎのパンがあるんだよ」
もう一人のダンは寄りたそうにウズウズしているがアリラが「パンはまだ残っている」というと、あからさまに肩を落とした。
街の通りを進むと彫刻で彫られたおしゃれな看板が目に入った。そこには「暮らしを少し便利にする魔道チェリー雑貨店」と書かれていた。
「魔道……?」
ダンが少しおかしな名前のお店を不可解に思っているのを見かねたアリラが「少し寄ろう」といった。
緑の扉を開けると鈴が軽やかに鳴った。
もう一人のダンが商品に駆け寄ると「見て。魔石のランプだって」そういうと瞳を輝かせた。
ダンには普通のランプにしか見えない。何をそんなに瞳を輝かせているのか。
すると「いらっしゃい」と若い女の店主がやってきて道具を勧め出す。
「見るのはタダだ」
アリラもノリノリで店主の話に耳を傾けた。
「これは水恵みの小瓶と言って少量の水を何度も出せる小瓶です。ただし1日に出せる量は決まってます」
ガラスの小さなコップに実際に水を注ぎながらダンたちに水を渡した。
飲み水は井戸水よりずっと美味しく感じ、ダンは水を飲んだ後魔道具を受け取ると。
(嘘くさいな……)
便利ではあるがダンは何か仕掛けがあるのだろうと考えて道具の裏を見たり細かく観察してジロジロ見てみたがタネはわからなかった。
他にも簡単に出る火の粉や冷たいままの枕や少し変わった忘れ物探しのメダルなどがあった。
商売だから仕方ないが、どれもダンには本当かどうか怪しいものに映る。
「何か買っていくか」
アリラがそういうとダンは首を振った。すると明らかにもう一人のダンが残念そうにした。
「必要なものがあればいい」
今必要なものは剣だった。そろそろ店を出ようとすると、もう一人のダンが名残惜しそうにした。
「また来たらいい」
「またお越しくださいませ」
アリラがそういって宥めると笑顔で見送られながら店を後にした。
また通りを進むと今度は木の大きな看板に剣と盾のマークがあるお店があった。ダンは首を傾げた。やはり間違いではない。
ダンの知る限りでは以前の世界とは違う位置に店があったのだ。
木の少し重い扉を開けるとう太い声で「いらっしゃい」が聞こえてきた。
壁に剣や盾が並んでいた。少し変わっているのは木の棒、老人が使いそうな杖なども飾ってあることだ。
ダンは早速剣を持ってみると、
「軽いな」
そういうと他の剣も持ってみるが全てに対し首を振った。
「僕はこの剣がいいと思ったけど」
もう一人のダンがそういうと装飾だけが立派な剣をダンに見せた。
「見た目だけで判断するな」
そういうとしゅんとした。アリラがダンを見る目を変えた。
「お兄さん剣士か」
「ごほん……違う。もう少し……重くてかっこいい剣はないか」
さっきと打って変わって違う反応をしたためか、アリラがやれやれと首を振るった。
アリラに強いと思われては困るため濁すが、店主がダンの手を見るや。
「なんか訳ありみたいだが、この手はずっと剣握ってきた手だ」
そう小声で言うといつの間にか奥のアリラ達が先に入っていた部屋に案内された。
「ここは貴族たちや強い剣士にしか案内しない部屋だ。この剣はどうだ。結構重い剣だが」
ダンは軽々しく持ち、そこでも全ての剣を握るがイマイチな顔をした。




