武器屋②
シングルベットとアンティークな書斎机と椅子がある部屋だが、もう一人のダンのことだ。物が散らばっているイメージだったがそんなこともなかった。きっとアリラが定期的に整頓しにきているのだろう。
ベットから片足を投げ出し、いびきをかいている姿は幸せそうだ。
「起きろダン」
細い体を揺すりながら、自分自身で名前を呼ぶというのは違和感があった。
「むにゃむにゃー…アリラちゃんおはよー…」
目をこすりながら体を起こすとしばらくしてアリラではないことに気づき驚いた顔をする。
「おはよう今日は兄さんが起こしてくれたんだね」
昨日とは違って綺麗な麻の服を着ていて、近くに立てかけてあったボロそうなベルト付きの剣を身につけた。
一緒に一階のリビングまで降りると食卓の上に湯気が出ているパンと牛乳が並んでいた。
「おはようダン」
「おはようアリラちゃん。なんだか新鮮だね」
そういうとお互い嬉しそうに微笑んだ。
昨夜と同じ席に座ると、それぞれ「いただきます」と食事を摂り始める。
ゴツゴツした岩肌のようなパンを小さくちぎると、パリッと軽快な音が鳴った。口の中に入れるとパンに染み込んだ塩とイーストの独特な香りが口の中に広がる。
「どうだ? ジンの口にここのパンは合うか?」
アリラはパンをちぎると牛乳につけながら聞いてきた。
「悪くない味だ」
もう一人のダンはパンを両手に噛じり付きながら幸せそうに頬ばっている。
「それはよかった。そうだ。今日の武器屋私も行く。おすすめの武器屋があるんだ」
「別に構わない」
どのみち全ての武器屋を回る予定だ。ダンが知る限り武器屋はそう多くない。
「騎士団の方はいいのか」
「今日と明日は休暇をもらっているんだ」
「そうか」
食器を溜めた水で洗い流しながし、アリラの食べ終わった分も綺麗にした。
「その剣は思い入れでもあるのか」
もう一人のダンが遅れて食器を持ってくると、腰につけた所々錆びていて刃ころびもある剣をちらっと見て洗い出した。
「うん。これは僕の父親からのプレゼントだったんだ。剣を手放しちゃうなんて剣士失格なんだけど僕いじめられてて、この剣も悪戯されてこんなボロボロになったんだ」
手放しづらいのだろうが、剣としてはもう使い物にならない。しかし、ダンには話の中で気掛かりな点があった。
『父親』からの贈り物。ダンは物心ついた頃から孤児だった。こちらの世界では親がいることに驚いてしまう。
「生きているのか」
「そっか。兄さんは知らないんだね。去年馬車の事故で両親とも亡くなったんだ。今はおじい様のお世話になってる」
嘘がバレないかハラハラしたものの。ダンは答える言葉を失った。
「おじい様にも兄さんに会って欲しいよ」
もう一人のダンはそう言って朗らかに笑った。
食後は家事を分担し、よろけながら洗濯物を脚で踏み洗うもう一人のダン。家の仕事を全てし終わるとのんびりした後3人は家を出た。




