第4話 武器屋
ダンには今までの相棒がいなかった。転移する前付近には置いていたが、【鷲】が彫り抜かれた、金の両刃の剣は藁の上にはなかったのを思い出すと両肩を下ろした。
剣をずっと持っておくタイプでは無かったものの、手に馴染んでいたものが無くなったのは悲しいものだ。
朝の涼しい時間、ダンは眠っていた部屋から向かいにあるリビングの部屋に向かった。昨夜、2階の二つある内の一つはアリラの部屋でもう一人のダンが使っている部屋で「一緒に寝るか」と言われたが断った。
以前はもう一人のダンが寝ていたベッド使わしてもらっていたが、一階の向かいにある部屋も悪くない。シンプルではなく夏場だからか空っぽになった暖炉の中にエリゲロンという白い花が飾られていてその前には揺り椅子あり一人だと落ち着くルームとなっていた。
青白いリビングで木のバケツを二つ持ち外に出るとすんだ空気を一気に吸い込み吐き出した。
まだ誰もいない広場に向かうと共同井戸で手押しポンプを使い水を汲み速やかに家のリビングに戻る。
「おはようジン。よく眠れたか?」
ダンが井戸の水で顔を洗っていると、アリラの声が聞こえてきて少し驚く。早起きだったからだ。
久々によく眠れたとダンは「ああ」とと小さく頷く。アリラを抱いていたときはずっと心あらずで仮眠状態か眠れない夜を過ごしていたからだ。
横にアリラも立つとひんやりとした水で顔を洗い出した。朝の冷たい水は洗っていると体に染みるようにいい。
「早起きだな」
アリラにタオルを手渡すと顔を拭きながら。
「ダンを起こす役目があるからな」
それを聞いてダンは明日からは遅起きにしようとひっそりと決める。
「今日は俺が起こそう」
「もう少しだけ寝かせといてあげてくれ。パンを温めよう」
紙袋に入っていたパンを三つ取り出すと暖炉の火をつけるように促した。
火打ち石と火打ち金で火花をちらしすみかした布に引火させるとアリラがトースティングフォークに刺したパンを持ってきた。ダンが受け取るとアリラは牛乳を木のコップに注ぎ始めた。
牛乳を入れ終わる頃アリラがもう一人のダンを起こしてくると行ったので、唾をごくりと飲むとまたあのぶっきらぼうな声で棒読みに。パンをわざと焦がすのも勿体無いし。誰がどう見ても焼き始めだが。
「や、やばい焦がしたかも」
「落ち着けジン。まだ温め始めたところだ。こうやって回転させながらするんだ」
お覆い被せてきた手はほんのり暖かい。
「俺が起こしてくるから変わってくれるか」
アリラ本人が起こしたそうな顔をしたが承諾したので、ダンは2階に向かった。右側のドアに花が飾られているのがアリラの部屋で左側にある装飾のない扉を開いた。




