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第165話 赤+青=

『おぉぉおおっと!! 放送席にも伝わるほどの闘気がぶつかり合って弾けた気がしましたが、四者とも開戦の位置から全く動いていないです!! ルチア様、これはどういうことでしょうか!?』



『カカ、立場とプライドのぶつかり合いさね。あたしたちの弟子は本気でSSSランクと対等だと言っているのさ』



『……と、おっしゃいますと?』



『んー? なんだい察しが悪いねぇ。ウェンディとメイアは先手を譲ろうとしているのさ、全力で攻撃してこいってね。SSSランクの立場ってやつさね。で、うちの弟子どもはその先手を譲るって行為に無言で抗議してるのさ』



『な、なんと!! 大本命優勝ペアになんたる度胸!! これで瞬殺されたら流石に恥ずかしいと思われます!! さぁ、一体この試合どうなるのか!? おぉーっと、なにやら会話をしているようです。音声を拾ってみたいと思います!!』



「あー、その先手を譲ってもらってありがとうございます。でも僕らは堂々と優勝をしに来たんですよ。……つまり、先手を譲られて勝ったってなると後々周りからSSSランクペアに勝ちを譲ってもらった、と言われかねないのが嫌なんです」



 テュールは、フッと闘気を収めSSSランクペアに語りかける。レーベも同意見のようでコクリコクリと頷いている。



「なるほど。そこまで言われたら私たちも黙っていられないか。実は、このロディニア闘技大会の運営から制約を受けていてね。一撃をもらうまではこちらから攻撃してはいけないと言われているんだ」



「うんうんー。ボクもあまり他の対戦者を舐める行為はしたくないって抗議したんだけどね。そこはまぁ大人の事情ってことさ」



 あっさりとウェンディがネタばらしをし、メイアが補足をする。その言葉は濁してあったが、こっそり手の形がお金を表していたところを見るとスポンサーや観戦者への配慮ということだろう。テュールは、その二人の言葉に納得する。



「わかりました。では、一発ずつ攻撃すればいいんですね?」



「あぁ、そうだ」



「……避けないの?」



「あぁ、ボクたちは最初の一撃は避けないよ」



 その言葉のやり取りでテュールは、レーベに視線を配る。二人は頷くと一度ウェンディとメイアから距離を取る。



「では……」



「……じゃあ」



「これは、そんな下らない制約を作った運営への反抗心ということで……」



「……ん、避けないなんてルール作ったこと後悔させる」



「半竜化」



「……真化」



 テュールは、半竜半人のデミドラモードへ。レーベはその身に黄金の武装を纏う。そして二人の手には──。



『な、な、なんということでしょうか!? ご、ご、ご、五十メートルはあろうかという魔法陣を学生の二人が描いております!! というか、テュール選手は竜人だ……いえ、あれは竜人とはまた違います!! 謎です!! 謎の種族でした!! そして、レーベ選手は獣人族の中でも極わずかしか体得できない真化を使えたようです!! ど、どうやらこの二人、口だけではありませんでした!!』



『カカカ、弟子どもはのっけから全力を出す気さね。さぁ、これは面白くなってきたよ』



 放送席では、実況のマルチェロが慌てふためきながら状況を説明し、その横でルチアが実に楽しそうに笑っていた。



「「……神獣王拳!!」」



 そして、二人はその身に神代級魔法を降ろす。両者の髪が逆立つほどに赤いオーラが立ち昇る。その異様な光景に観戦者のざわめきは治まらない。だが、そんなテュールとレーベを見ても尚、ウェンディとメイアは微笑んでいた。



「いいぞ。神獣王拳の使い手などもうこの世にはいないと思っていたからな」



「うんうん、レーベも真化が使えるようになってたなんて驚き。だけど、それで殴ったら君たち死ぬよ?」



 身体機能の限界など優に突破させる神獣王拳は動かずとも一分一秒ごとに体を自壊へと導く。まして、全力で動き、攻撃などすれば死んでもおかしくない。そうウェンディとメイアは忠告する。だが、これに反応したのはリオン──。



「ガハハハ、お前らバカか? 俺がお前らと小せぇ頃遊んでやった時の言葉をもう忘れたか?」



「……真の強者はどんな戦場からも生き残り続ける奴」



「死んでも、なんて言いたがる奴は自分に酔ってるだけの役者。俺が生き残り続けるための強さを教えてやる……」



 リオンの問いかけにウェンディとメイアは遠い過去の記憶から引っ張り出した言葉を淀みなく(そら)んじる。



「なんだ、覚えてるじゃねぇか。んじゃ、お前ら覚悟した方がいいぞ。あいつらはあの状態で全力で動いて死なねぇってこった。なんせ、俺の弟子でもあるんだからな?」



 そして、リオンはウェンディたちの言葉に満足そうに頷くと、あれが虚仮威(こけおど)しではないとそう言う。その言葉を肯定するようにテュールとレーベはフッと笑い、その手に蒼く巨大な球体を浮かべる──。



「「理からの解放(オーバー・ザ・ロウ)」」



 そして、蒼いマナの塊を体に取り込むと、その蒼の輝きが立ち昇り、赤を塗り替えていく。そして拮抗するかのように赤と蒼のオーラはお互いを喰らい合い──混ざり合う。



『あ、あれはなんなんでしょうか!? テュール選手とレーベ選手が謎の球体を体に取り入れた瞬間、青く光り、またしても謎のオーラを立ち上らせました!! どうやら技名はオーバー・ザ・ロウとのことですが、聞いたことのない技です!! そして二人から立ち昇った赤と青のオーラは今、紫色のバチバチした何かに変貌を遂げています!! なんというか禍々しい印象を受けます!!』



 実況の説明通り、神獣王拳と理からの解放(オーバー・ザ・ロウ)によるオーラは混ざり合って紫色になり、ところどころスパークするように爆ぜている。



「……驚いたな。私たちに近いレベルでマナを操れている」



「たはー。本当だね。こりゃちょっぴりマズイかもね」



「ガハハハ、おいおいあんなのに殴られてもお前らは蚊に刺された程度だろ。当然、まだあるぜ?」



 焦ったようなことを言いながらも表情にはまだまだ余裕がある二人。そしてリオンは、そんな二人にこの先があると告げた。

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