第164話 覚えてますか?俺が主人公なんですよ
『さぁさぁさぁ! 遂に始まりますロディニア闘技大会タッグ戦です! 実況はロディニア大陸が誇るフルオートショットガントーク、マルチェロと、解説は──』
『リエース共和国で指導者やってたルチアだよ』
『で、お送りいたします!』
放送席からのアナウンスが選手控室に聞こえてくる。なにやら既視感を覚える実況と、ルチアが解説のようだ。第一試合が始まるということで選手たちの緊張度合いも急激に高まる。そんな中──。
「……ししょー。そろそろ」
「あぁ、そうだな。つーか、ウェンディネヴァさんヤバイわ。いや、命の危機は修行で何回も味わってるから馴れたと思っていたが……。久しぶりにビビっちまったよ」
「……棄権する?」
ベンチに腰掛け苦笑いを浮かべているテュールにレーベがそんなことを言う。
「はっ。冗談言え。ここまで来て、ビビって逃げましたって言ったら、それこそ、うちの家族から殺されるからな。それに、ビビったからと言って負けるつもりもない」
「……ん、良かった」
そんなテュールの言葉に良かったと言うレーベだが、表情に変化はない。テュールが棄権するつもりなどないことは最初から分かっていたのだ。しかし、それはテュールも承知の上。
「あぁ、でも面白いよなぁ。毎回、大本命の初戦相手はハルモニア校の生徒だってな」
そしてテュールは笑顔になり、今から向かうべき場所の話をしはじめる。
「……ん。理由は学生に世界の広さを体験させるため」
「だが実際には、本命選手の準備運動と揶揄されている」
レーベが感情のない声で理由を述べると、直ぐ様テュールが返事を被せる。
「……でも本来は」
「あぁ、モヨモトたちが劇的な下剋上を見てみたいから、だろうな」
そう、大会創始者である五輝星の計らい。一回戦で学生が本命選手と当たる。観戦者からすればただのエキシビジョン。前座試合。学生に温かい声援を送り、負けたらよくやったぞ、と慰める。もはや毎回のお決まりごとであった。
「ふふ、幸い俺たちの実力は誰も知らないわけだ。リバティやハルモニア校の人たちも」
「……ん。本気なんか出したことなかったから」
「つーわけで、最高のシチュエーションだな。久しぶりに主人公らしい場面到来ってとこか」
「……? なにか言った?」
「んーにゃ、なんでもない。さて、レーベ。いっちょド肝を抜きにいきますか」
「……ん」
最後に二人はコツンと拳を打ち付け、控室を後にし、闘技場へと向かう。
『さぁ、各国から集まった六十四組の中で最も年齢が低いペア!! 私の妹も通っているハルモニア校、その代表であるテュール選手とレーベ選手ペアだ!! しかし、学生だと侮ってはいけません! 先程の五輝星の言葉にあった弟子とはズバリ彼らのことなのですから!!』
実況の紹介により歓声が上がり、その歓声とともにテュールとレーベがリンクへと立つ。二人は観戦者たちに手を振りながらぐるりと辺りを見渡す。どうやらSSSランクペアはまだ登場していないようだ。
そして、しばらくすると観戦者たちが突如沸き上がる。どうやら登場のようだ。
『さぁ、遅れて登場してきたのは、本命中の本命!! 今回の優勝候補として他の追随を許さない圧倒的な人気を誇るSSSランクペア!! 竜族、絶氷ことウェンディネヴァ選手と獣人族、土兎ことメイア選手だぁぁぁあああ!! SSSランクとは各種族の頂点に贈られる称号。やはりどうしてもテュールペアの方が不利だと思ってしまうのですが、ルチア様どう見ますでしょうか?』
『ん? そうさね。普通に考えればSSSランクペアが勝つさ。当然初戦で、学生に、負けるなんてことはあり得ない。あり得てはいけないさね。けど……テュール、レーベ! なんであたしら五輝星が毎回初戦から一番強いヤツとハルモニアの生徒の試合をやらせてるかは分かってるさね!』
マルチェロの実況の後、ルチアがその試合予想を口にする。その途中、予期せぬタイミングでテュールとレーベに声がかかった。この演出に観客席からは大きなざわめきが生まれる。
(あぁ、もちろん分かってるさ。世界最強と渡り合える学生を育成するのが目標だったんだろ? 流石はブラック師匠陣だ。実にらしい教育方針だよ)
テュールは放送席に答えることはなく、不敵に微笑む。そしてレーベは表情をまったく変えず、只々目の前の敵を睨み続ける。どうやらそれだけでルチアには分かったようだ。
『カカ、どうやらあいつらは分かっているようさね。このロディニア闘技大会の初戦は毎回、やれ前座だの、チュートリアルだの、準備体操だの言われてきてた。この試合が終わったあとその歴史が変わるさね』
『おっと、ルチア様の意味深な発言だぁぁあ!! それではまるで学生である二人が世界最強ペアと真剣な試合、互角の戦いを繰り広げるような言い方であります!!』
その実況の言葉に思わず吹き出すテュール。
「おい、レーベ、実況の人は互角の戦いをするだけでも奇跡と言ってるようだぞ」
「……心外。まぁけどその方がオイシイ」
などと軽口を叩きあう二人。だが、その言葉が当然耳に入っている目の前のSSSランクペアは──。
「おい、テュール? お前を殺さないとは言ったが、補足しよう。最終的には殺さない、だ。安心しろ、心肺が停止してもすぐに殴り起こしてやる」
「ふふ、レーベ? ボクとの戦績忘れちゃった? って、ボクも忘れちゃってるけど。とにかく何百勝ゼロ敗。それがボクとレーベの戦績だよ?」
自分たちに勝つ気でいる若者に挑発的な言葉を掛ける。
「すみません、ここでカッコいいことを言えるような主人公属性がないので……、口だけじゃないことをコッチで証明してみます」
「……ん、賛成」
「うん、分かりやすくていいね」
「いいだろう」
テュールが拳を突き出す。満場一致で決まった。もう言葉はいらない。あとは最後に立っていた者こそが正義だと。
『どうやら名乗りを上げるのは終わったようです!! ではロディニア大会一回戦第一試合を始めます!!』
その実況の言葉を受け、審判がリンク上へあがる。
「ガハハハ、思う存分やりあえ。多少死んでも俺は止めねぇからな? ガハハハ」
どうやら五輝星の権力を使い、リオンが審判となったようだ。これで全力で無茶ができる。そう四人が四人とも考え、笑いながら闘気を徐々に高めあい──。
「んじゃ、はじめぃっ!!」
──爆発させる。
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これからもどうぞ「とある英雄達の最終兵器」うをよろしくお願いいたします!m(_ _)m




