第1話:目覚めた世界と小さな輝き
「――ちゃん レティシアちゃん、起きて…朝ですよ~」
優しく温かな声と、柔らかな光。
目を開けても視界はぼんやりと霞み、立ち上がれない…手を天井にかざすと、小さな小さな赤ちゃんの手…
(え……? 私、どうなったの……?)
脳裏に蘇るのは、前世の最後の記憶。
あの時、苦しさと理不尽な絶望に喉が締め付けられ、助けてと叫ぶことすらできず、私はただ静かに涙を流して息絶えたはず…
また…思い出すだけで身体が震える。
喉の奥が張り付いたようにカサカサで、
うまく声が出なかった、あの感覚…
コワイッッ…助けてッッ…助けてッッ…
『ふぇっ…ふぇッッ…おぎゃーッッおぎゃーッッ』
喉を引き裂く勢いで、私は必死に泣き声をあげた。かつて静かに涙を流すことしかできなかった私が、命の限り叫んでいる。
「まあまあ、レティシア……! こわい夢でも見たのかしら? 大丈夫ですよ、お母様がここにいますよ」
直後、全身をふわりと包み込むような温もりに抱き上げられた。
母であるリリアーナが、トントンと優しく背中をあやしながら、私の小さな体を愛おしそうに胸元へ寄せ抱きしめてくれる。
前世の冷たい床とは違う、陽だまりのような暖かさと甘い匂い。トックン、トックンと心地よく響くお母様の心音に包まれ、ささくれ立っていた心がすーっと穏やかに凪いでいく。
(あ……あたたかい……。私、もうひとりじゃないんだ……)
前世の孤独と恐怖が嘘のように消えていき、極上の安心感に満たされた私のまぶたは、とろりと重くなっていった。
これならもう、安心して眠れる。
ピンと張っていた意識の糸がふっと緩み、深い眠りの淵へと落ちていく——その瞬間。
――ちりん。
誰もいない静かな部屋の中、壁に飾られている宝石の付いたペンダントから可憐な鈴の音が優しく響いた。
恐怖に凍りついていた心が溶け、命が真っ直ぐに安らぎへと向かうその無意識の営みに、宝石はぽっと温かな光を灯す。
ふわりと優しい余韻を残しながら、私はそのまま穏やかな夢の中へと吸い込まれていった。




