95皇帝からの呼び出し
カミツードと呼ばれた男は仕える女の子に向かって、ずっとずっと苛立ちげにしている。皇帝にしっかり叱られて大泣きしているらしい。
巻き戻して公的に叱られている場面まで逆戻しする。なるほど、と止めると再生させた。
「あ、ここで連れてかれて……問答無用で引っ立てられてる」
普通なら他国の王女に他国の王が裁くことはできないのだが、今回はこの国へ来る前に何かあった場合の責任は王女自体が払い、問題が起こった時の全権を帝国に引き渡す契約がなされていた。
これは聖女がいる国ならやる契約だ。でないと聖女に何かされたときに国ごと遮断されて吸収や消滅、弱体などという国家の危機に陥る。
聖女の怒りを一人にぶつけさせるための保険的な処置。それでも許せない聖女もいるので、補いきれないときもある。ペコラのやり方なんてその例だ。
「ちょっと、なにするの!私を誰だとっ」
王女は強い力で引き立てられる。ブティック店から強制的に連れて行かれたのだ。
「なによ!どこに行くの!?」
それなりに暴れるからロープでぐるぐる巻きにされている。口もそろそろ塞がれそうな勢いだ。怒りさえ浮かぶ顔に王女が初めて怯えを見せる。今さら怯えたところで手遅れなんだけどな。
手遅れで思い出したけど、聖女の偽証は罪に問われるのだろうか。聖女だとわからないから審査しにきているのだから、わからなかったとしても偽物だとか違ったとわかれば、そこで終わりなのが普通だろうし。
故意か故意ではないかを判定するなんて前世と呼ばれる世界でも不可能だったんだから、悪魔の証明に近い。
「皇帝陛下のところへ行きます。粗相の内容を告げられており話したいことがあるとの仰せです」
「え、陛下のところ?な、なぜ」
御付きの人たちも当然ながら当事者として共に連れて行かれる。王族も誰も彼もが契約書にサインしているので身元はこの国に預けられていて、罪も罰も下せる。
「その身の中から心当たりをじっくり思い出してください」
「え、え、そんな。カミツードなんとかして!」
隊長格の男が厳しい目で見遣るとフラニーは身を縮こませる。カミツードと呼ばれた男は意気消沈した顔で、王女の顔を見てはため息を吐きながら窓の外を見ていた。全てを諦めた様子で空を眺めている。
子羊や子牛のように馬車で運ばれて行き、王城が見えると顔を青ざめる面々。
今になってやったことのヤバさを実感するのも遅すぎるし、これはもしや自分たちの生まれた国に言ってもいなさそうなので後々、雷がバンバン自分たちの上司や家族たちに落とされる未来しかないんじゃないかな。
苺クッキーとメロンクッキーをアルクレイと食べつつ鑑賞する今日のクッキーはよくできている。とはいえ、自動クッキングで作ったので味にムラがあるわけではない。
熟練度くらいなので、ますます美味しくなるだけだ。パフェも熟練度が上限なので普通のパフェなどと比べてワンランクどころの美味しさではない。
夢中になってまた食べたくなる異次元の美味。デザートとして大陸内で今年ブームが起こりつつある、という話があるらしい。店舗を出しているから、さらに広まるのも早いのだ。
「皇帝陛下がお待ちです」
「陛下が?そんな、そんな。え、一番いい服を着てないのに……一度帰らせて!こんな格好じゃ嫌よ」
「至急来られたしとのご命令、従わないのであれば逮捕となります」
「逮捕?え、なぜ、なぜわたしが?」
画面内で漸く、今回の結果に伴う問題が噴出している。フラニーは顔がどんどん青くなり目元までサッと温度が下がった。
「逮捕とは穏やかではありませんね。我々に説明する責任がそちらにあると思います」
「弁護士を呼ばれるのであれば国の法律に基づき、お呼びいたしますがどうしますか。黙秘権を使いますか」
「も、黙秘権……」
さらなる言葉に訴えられたのだと知る他国人たち。どこから訴えられたのかと御付きの、カミツードと呼ばれていた男がたずねた。騎士たちは重々しく口を動かす。
「国です」
「く、に?」
二人の異国人は絶句してしまう。騎士の言葉がまだ飲み込め無いのだ。やらかした人はやらかしたことを本気で軽く考える。人間の思考の中にある楽観的な方面に持っていきたい、心理的なものらしい。
彼らもその口だろう。人は追い詰められるといい方向に行っているから平気だと思ってしまうバイアスがかかるとかなんとか。観たことがある。
心理的に思ってしまった二人はあっさり、捕縛のようなものに即かかってしまったのだ。服屋に行ったのは甘やかされ王女だが、聖女二人に迷惑をかけたというのにノコノコついて行き焦りもしない。
実は脳内で大変なことになっているのではないかとアドレナリンでも出ていたのかもしれないが、王女が平気な顔をするから空気が感染したのかもしれない。
結局、大変なことになっているなと思ってるけど、逃げられないのだから諦めて叱られるだけだ。
王城に着いて王女は素直についてきている。否、従うしかない。




