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93/106

93アルクレイはオスなんだけどね

 そんなわけで王女は本人が知らないうちに赤ちゃんのあだ名を貰ってしまう。これがフラニーの祖国に知れたらとんだ赤っ恥。他国にもシレッと広まるだろう。

 聖女がこんなことがありましたと言うだけで、フラニーイコール赤ん坊なのだと性格が知れて二度と部屋から出られなくなるかも。そもそもあんな存在を外に出した国が悪い。育てた国も悪いのだから自業自得の末路。


「王女はまだ部屋に帰ってないの?」


「あのあと痕跡を辿りましたらドレスの店に向かっておりまして、今使者を向かわせて呼び出そうとしてます」


 皇帝に確認を取ると、聖女でトラブルを起こしてしまったすぐあとに他店に行くなど、頭の動作がバグっているとしか思えない。周りのお付きの人たちもなにをモタモタしてるんだか。


 もしかして王女が嫌で放り出したなんてオチはないよね。国がこんなの持っていられないと帝国に丸投げしたなんてこと。

 仮にしたとしても肩書きの王族くらいは凍結させておけばいいのに。それがなかったということは、まだ放り投げているつもりはないということか。

 国自体に責任を取ってもらわないとガチめに、割に合わなくなってきたぞ。ペコラは想像を働かせてみたが個人的な罰が浮かばない。


 何がいいかと考えてもまだ被害という被害がないせいでやる気が出ない。元々喧嘩っ早くもないから仕方ないことなんだけど。


「なるべく早く叱った方がいい。あの子は悪いことをしたとか思ってない」


「そうでしょうね……」


 ブティックの店に行く精神面の鈍さに男も苦いものを含んだ顔で息を吐く。せっかく国に入る許可を出したのに王の顔に泥をビッチャビチャに汚したのだ。

 二度とこの国に王女の国は関与できなくなる。国際的な力も弱くなるだろうし、融通していたことや提携していたことも解除されるのだろう。それもこれも一人の子供によって。


 向こうの国は速攻王女を迎えにくるだろう。それとも帝国に謝りに頭を整列させて下げるのだろうか。そうでなければ今までの友好国のアドバンテージなんて、呆気なくなくなる。


 それなのに娘を送り込み、素っ気なくなる。友好国というものもあっという間になくなるだろう。逆の関係性になるのは確実だ。


 ペコラは王女は何しに来たのだろうと気になった。どうしてもああも、皇帝が喜ばないような真似をしてしまったのか。子供だから言ってしまえばキリがないけど。


 皇帝は疲れを吐き出すようにふう、と音が聞こえる。頭が痛いことだろうな。彼はこちらを向くとスッと頭を下げてから部屋を去っていく。

 聖女たちが去っていく男を目だけで見送る。王より上なのだと、こういう時にわかりやすい。


 ペコラはソッと王女フラニーの様子を見てみると荒れていた。ブティック店を見てみると買い漁っている。彼女がお金を持っているわけじゃなさそうなのに。

 高級店なので買える服の枚数に限りがあるし、そんなに買えないと思うけど。大国というわけじゃないしなぁ。絶対に予算以上になって止められるでしょ。


 フラニーはストレスを発散するように喚きながら、あれもこれもと買っている。爆買いだ。値札を見てないのでそろそろ止められている。

 それを跳ね除けてまだ買うわ!来ないで!と喚いていて耳鳴りがしそう。だから年下や同年齢と、これだから関わり合いたくなかったのだ。


 そこに帝国の王の意を受けた人が近寄る。今すぐ帝国の城に来い、と兵士付きで言われてお付きたちは顔面蒼白。なんのようかは、あんなのでもわかっているらしい。それならそうとさっさと出頭すればよかったのに。


 長引くことになるし、自首しないとなれば怒りもさらに強くなるし、いいことにならない。聖女は成人じゃないのに、大丈夫だと思った理由がわからない。怒らせたと皆わかっていたはず。


 向こうは反省するのか怪しいけど。皇帝が怒ってもその時は反省したフリをするけど、自分の部屋の中で反省するのやめそう。というか、もうこの国に置いておくのをまず止めてほしい。


 あんなのと同じ国にいると思うだけで神経がドッとすり減る。あちらは聖女でもなんでもないただの王家の娘なので聖女の意見を真っ先に受けるだろう。そう願いたい。いや、皇帝ならそうする。


「お帰りになられました」


「ありがとう」


 皇帝がいなくなった空間は一気に、聖女だらけの乙女たちの空間に早変わりした。騎士が聖女たちに伝えた瞬間、パッと切り替わる。


「さてさて。男の方は帰ったのですからここからは女だけの時間ですの」


「ふふ。楽しみだわ」


 何か遊ぼうとしているのか、ワクワクした顔をする女たちに首を傾げた。具体的に言うと、アルクレイはオスで男で男性なんだけど誰も気にしまい。ウサギに異性を感じ取る人は今のところこの中には居ないので、無問題。


 聖女たちは学生の修学旅行の時間を彷彿とさせる仕草で、ソファに散らばって座る。何かを取り出してキャアキャアと言い合う。


「マーカー様のブロマイドじゃありませんの。何度やったら出るのですか?根性がおありなのねぇ!」


「ふふっ。通い詰めましたわ〜。お金もそれなりに振り飛びましたが傷は浅いんですの」


「一般人なら今頃破産ですよ……」


 色めき立つ聖女たちが取り出したものを見て魚の目になった。

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