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88/106

88関係者に今起きていることを知らせていく

 マッチ売りの少女ばりに、カカオを売っていたホマロ。本物で公認の聖女だ。肉体的にかなりまともになっていて、最近出歩くのをよしとされたらしい。

 中でぬくぬく保護されていながらも、カカオについて研究していたのだと成果を見せに来てくれた。ちょっとしか過ごしていないのに、恩人と毎回ペコラの名前を出すと風の噂で聞く。


 止めはしないが、言えばいうほど尾鰭がつかないか気になる。周りからいい人みたいな薄いものがまとわりつくのは、全面的に嫌だ。


「ああっ。ペコラ様を困らせるなんて許せません!行きます!」


「怒鳴りつけに行ったら相手の思う壺だと思う。病弱装って悪役にされるからやめておいた方がいい」


「病弱?え、病弱な人が出歩いていますけど……あと、私も病になったことはないので聖女なら嘘ではないですか」


「どっちかにすればよかったんだけど、どっちにもなりたかったんでしょ」


「病弱になりたいって意味がわかりません。あんなに肌がツヤツヤなのに、顔も青白くないし、唇も艶々だし無理がありますよね」


 元ボロボロだった過去の体験を思い出しているのだろう顔つきは険しい。身動きが取れない状況に怒りに火がついたのか、挑むように向こう側を見ている。


 怒っているから不謹慎かもしれないが小さい子供VS小さい子供のやり取りは、年上の聖女たちの栄養分にしかならない。きっと上映したら可愛らしいが聖女たちからの連呼がされることだろう。


 彼女は外に出て、威嚇する聖騎士の一団に加わる。肩を上げていくのはいいけどなんの怖さもないので、プラスになっておらず可愛さが発生しただけだ。

 現に聖騎士たちが「どうしよう?」といったアイコンタクトをお互い取り合っている。帝国にいる中で公式に認められている聖女。一番年下だ。


 プリプリと怒りながら相手を見上げて、腰に手をやっている。怒っていますのポーズに、向こうの騎士たちも少し困ったような空気になった。


 そもそも今回の騒動の原因は帝国に来たばかりの第五だかの、王女のせいだ。こちらに来て早々、パフェ農園に住む聖女のところへ遠路遥々やってきた。うちに。わざわざ。

 来いと言った記憶はなく、来ていいでしょうか?といった手紙はあったと知っていたが、当たり前であるけれど無視した。無視なんかせず、ブンブンとこちらの特権を強行して抗議文でも送っておけばよかった。


 無視は来るなと言う意味。全ての国、土地の常識だ。ガン無視し、突貫的にやって来たフラニー。よくもやったなと言わんばかりに聖騎士たちが集まってバリケードを築いている。


 ペコラの農園には虫除け結界が張られており、完全防御魔法であるからして許可した者しか通り抜けられない。

 聖騎士たちが筋肉でディフェンスをしているが、そもそもこちらへ来られないので向こうの無許可者たちが、強行突破することは不可能なのである。産毛も入らない。


 ガンガンと気に触る訪問の仕方にすぐさま責任者でありながらも、王女の滞在を許した帝国国王の男を呼び出すことにした。このまま、ビリビリとした空気で偽物対本物の喧嘩をさせ続けても、よいことなどないのだから。思案をくるくるさせながら相棒を見た。


「フラニーだっけ、来たばかりなのにここに来るって最初から狙われてたのかもしれない」


 きゅうりを食べているアルクレイに話しかけた。昨日まできゅうりの漬物を作っていたのだが、きゅうりだけ食べるのにハマった彼がゴキュッと飲み込む。


「お前はまだ幼い方だからな。懐柔しやすいと思われる。ホマロは聖女にずっと囲まれているが、お前はソロだからな」


 相棒のきゅうりのボリボリとした咀嚼音を聞きながら、皇帝に電話をする。魔法で使えるのでいつでも一方的にかけられる仕様だ。トップにそのままストレートにかけられるのは、ある意味これ単体でチートかもしれない。


「ペコラ様、いかがなされました」


 ちょっとだけ慣れてきたのか、卒なく対応してくる。今から余裕が崩れるかもしれないけど。彼の心の平穏が崩れるだろうが、言うしかない。遅かれ早かれ聞かされるのだ。


「フラニー王女がこっちに先ぶれなしで押しかけて来た」


「…………えっ」


 可哀想なほど、間の空いた空気の抜けた返しがきた。帝国の最上位なのに、苦労人の一面ばかり見ている気がする。


「フラニーがそちらに?ほ、んとう……ですよね。はい。ペコラ様が言うのなら本当に来ているのでしょう。申し訳ありません」


 相手の顔の映像がこちらに見えており、向こうにも見えるようにしてあるからあちらの焦った様子が、ありありとわかる。


「すぐに回収いたします」


「最年少のホマロもうちに遊びに来てたときに来ちゃって、王女の訪問に怒ってるからそっちも対応した方がいいよ」


「な……なんと間の悪い」


 皇帝の顔が煤けていく。吹いたら粉々になって崩れてしまいそうだ。


「抗議して、フラニー王女の国にも責任追及をいたします」


「追及の前に今すぐ国に帰した方がいいんじゃない」


「まだ聖女の認定が終わっておらず」


「この騒動で聖女と認める人が一人でもいればいいね……」


 もしかしたら聖女の資格なしと認められることなく、聖女だが聖女じゃないなんてことになるかもしれないのだ。

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