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87最年少聖女ホマロVS押しかけ王女フラニー

 珍しく帝国に他国の王族がやってくるらしい。話を聞いたのは麗らかな陽気を運ぶ風を浴びながら、聖女たちとおしゃれなカップで香りのよい紅茶を勧められてチマチマ飲んでいる時だった。


「帝国に入国するのって厳しいのに、よく許可が出たね」


 素直な感想が口から紅茶の余韻と共に出る。このお茶は絶対にお高いものだ。舌が肥えたわけじゃないが、聖女たちが飲むものなのだから間違いないだろう。


「小さな頃から皇帝を慕っている方なのですって」


 音を出さずにカップをソーサーに置いたのは、青色の布をスカーフのように巻いた女性。聖女として長くいるうちの一人だ。


「今になってなんで来ることに?」


「ようやく許可が出たということですよ。長年ここに来ることを望んでいたのですが、許可が出ませんでしたからね」


 こちらの疑問に横から説明するのは、指輪を嵌めた既婚者の聖女。ここには聖女と聖騎士しかいないので、座っているのは全て聖女だけだ。


「私は会わないけど、そんなに話題に登るようなことなの?皆も会わないでしょ。聖女ってわけじゃないんだろうから」


 聖女なら一番初めに聖女が見つかったと言うはずなのに。一々王族が来ることに気をやるほど彼女たちは暇じゃない。それなのに、話題に出すようなことじゃない気がして。


「それが聖女だと言い始めたのです」


「また?またその枠が出たの?女の子はそういうのやりたくなるんだね」


 最強だなとしか言えまい。いや、酔狂だ。聖女にあったら即バレするというのに。


「皇帝陛下がお好きとの話ですし、聖女となれば皇帝と結婚ができると思われてしまった、のかもしれません」


「聖女にのらりくらり会わないことは不可能なのに」


 聖女ではない女の子と聖女の権力の差は明らかだ。それでも逃れられるアテでもあるというのならわかるが、なさそうだ。

 帝国とも友好的な状態なのに、嘘とわかる聖女宣言をする自国の王女。偽物と知られたら友好のままにはならないというのに。


「ペコラ様よりも年下ですのでお気をつけくださいませ」


 まつ毛をくるりと巻いた聖女が、整えた爪を一つ立てて忠告してくる。


「ああ、絡まれるからって意味?」


「それもありますが、聖女コミュニティによれば王女はワガママらしいんですのよ。嫌な予感がしますので」


 リップが艶やかな女が優しげに笑う。


「絡まれる率、今の所百パーセントだからな」


 最後にアルクレイが聖女の持って来たキャロットケーキを食べながら、運命は決まってますと言い切った声音で飲み込む。口の端にオレンジの欠片を付けていて、可愛いから言わないでおこう。


「しかもですね。病弱だとご本人が言っておられますの」


「は、病弱?聖女が?」


「今現在病魔に侵されておりますものの、病弱な聖女と確認されておりません。食べてなくて弱っている方は過去ありましたが、病気による衰弱はいませんでしたので、ほぼ嘘でしょう」


「嘘でしょうね」


「なんの病でした?」


「それが聞いたことがなくて耳馴染みがなくて」


 耳馴染みがないとなれば怪しさがさらに上がるんだけど、なにがしたいのかわからない。聖女で病弱とは。王女という肩書きで満足できなかったの?


 自分から病弱を名乗る意味を見出せない。逆に不利になるのでは。王家に近づきたいのなら健康体の方が求められるだろうし。

 失敗して割と、空回っている気がしなくもないけど相手がそれでいいなら、いいんじゃないかな。関与しないのでお好きにどうぞといった感じだ。


 そう思っていた時期もあった、と言いたいけれどそうならないんじゃないかと八割展開を受け入れていた己もいるので、時期なんてなかったんだと思う。本当に。


 やってきた王女は表面上はお淑やかでペコラと同じくらいの歳だからか、聖女たちとは会わないまま自分に会いに来た。

 幼いとは言わないけど、あっちが聖女かどうかくらいは見抜ける。どうせこちらの年齢の幼さを理由に判断に疑問があるとか言って、真偽不明にするつもりだろう。


 仮に出会おうとその時には他の聖女を一瞬で連れてきて召喚し、証人にすれば住む話。逃げ場を向こうに与えることなく、相手が偽物と全員がわかれはそこで終了だろう。


 他の人たちには会ってないので、まだ聖女は一人も面会してもいない。だからこそ、狙いはわかりやすいのだ。そんなのだから、皆が疑いの目を向けられるのだ。聖女か否かを知りたいから来たのに、会わないなんて聖女と知られたくないからとでも、思っておいてもいい。というか、それしかないだろうに。


 現実逃避はここまでにして、パフェ農園の向こうにいる御一行に目を向けた。聖騎士たちがドミノみたいに綺麗に並んでいる。なぜなら威嚇すべき相手が向こうにいるから。威嚇も込めて濃厚なピリッとした空気が漂う。


「まだですの?私を、王女を待たせるなんてっ」


 なぜ来た王女。帰れ祖国に。


「なんなんでしょうね。欺けると思っているんでしょうね」


 遊びに来ていた、カカオの聖女と最近自称している本物の年下が呟く。こちらは偽物なんかではなく正真正銘の公認だ。

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― 新着の感想 ―
そういえば、ペコラさんって何歳なんでしょうか? アホばっかりの極小国に留学した時『新入生として』とあったのと、  毒家族に森へ棄てられたのが10歳前後→帝国で聖女認定→数年経過←今ここ  と仮定して、…
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