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84ワンコインのジューススタンド

 透明な容器に入った不透明な黄色っぽい液体。


「甘くて、爽やかな口溶け」


「お、美味しい」


「ほお、飲み物ですか」


「素晴らしいですこと」


 あとはレモンを取り出して、砂糖を加えてこれを聖女たちが作り売るという方法をすれば、皆買いにきてくれるだろうと言い終えた。


「手作りのクッキーなどを売る人もいますが、飲み物はあまりありませんでしたね。それも、このような美味しいものを」


「ジューススタンドっていうんだよ」


「お店ですか……聖女様たちも楽しく売れるでしょうし、お金が入ればやる気なども違いますでしょう」


「警備が不安なら建物をそのまま対象施設にすればいい。氷も入れればいいかも。騎士団の詰め所とか運動施設とかでも」


「最初はそこがいいでしょうな」


「なんと聡いことを。素晴らしいです」


 老聖女の方がベタ褒めしてきた。ペコラが少女という面も大きいからだろうか。褒められるところはなにもないはずなのに、どこかむず痒い。

 彼女は褒めることが上手みたいで、普通の人に褒められてもなんてこなく受け流す自分をこのような気持ちにさせるプロ。


 こほんと口から咳が出た。話を仕切り直さないと。レモネードの件を検討してもらえるのかどうかだ。彼女らはいいのではないかと言う。そもそも聖女の意見なので否やはないが、ペコラは別にイエスだけが欲しくて聞いてもらっているわけではない。


 彼らだって、それをわかっている前提でいいのではと肯定してくれていると、勝手に判断しておく。一々その都度一人一人に、あなたは本音を言っていますか?と聞き回るわけにはいかず、相手がそれでハイというに決まっているから無駄だ。


「レモンと砂糖だけなら作るのは簡単ですね。これなら皆様も楽しく行えるでしょう」


「作る準備は全てこちらでするから」


「レモンというものは無理ですが砂糖はご用意できます」


「ジューサーみたいなのないよね?絞ったりするもの」


 ギュイイン


 魔道具ではないがミキサーを取り出してレモンと砂糖を入れて目の前で刻まれていくレモンに心なしか、否、完全に引け腰だ。


「ひっ」


「うわ」


 音も静かではないから迫力はかなりあるし、誤魔化しが効かない。


「これを入れ物に入れて、はい。飲んで」


「え、ええ。いただきます」


 聖女は絶対なので飲むしかできない彼ら。強制するつもりはないが、話が進まないので今回は目力で押し通す。飲み始めた面々は最初は唇をちまちま動かしていたのに、喉を通る頃にはグラスの中身が半分消えていた。

 先ほどのレモネードと味が同じだから、別にこれといって及び腰になる必要はないのだ。彼らは飲み終えるとホッと息を吐き出す。機械が怖くて飲みにくかったが、美味しさには負けたようで何よりだ。


「美味しゅうございました」


「何度飲んでも飽きませんな」


「これを飲めるのならお金を払いたいです」


「無料なんて勿体無いことですね」


 彼らの後押しにそれならばと、聖女たちが戻ってきたタイミングでレモネードについて説明することに決めた。戻ってきた聖女たちが、団欒室で話している大人に混じる少女を見つけると嬉しそうに近寄ってくる。まるで人気者になった気分になるので、自己肯定感が上がっているのかも。


「まあ、ペコラ様。前回よりも早く来てくださったのですねぇ」


「うん。お久しぶりではないけど。今回は企画を持ってきただけ」


「企画、ですか」


 聖女たちは楽しげにフフッと笑う。


「ペコラ様の考えるものはどれも面白いので楽しみです」


「ええ、本当に」


 他の聖女も話しかけてくる。もう一度、レモネードについて聖女たちに説明をする。内容に一人一人が反応を示して、好感はよかった。


「ってことなんだけど」


「素晴らしいです」


「是非やりたいです」


「いつもは誰かのものを配るだけなので、自分が作るのは余りないわ」


「クッキーはあるけれどね」


「あれも寄付よね」


「楽しみだわっ」


 聖女の給料は高い。帝国の平均を上回り、税金を納めている金額が総じて高額なのは察している。この国に聖女がいる限り金持ち番付なんてものがあったら、一位から五十位くらいまでは聖女の名前が並ぶだろう。


 皆はもうレモネードのジューススタンドをやる気で、今から楽しみねぇと話し合っている。それを見ながら、提案してよかったとこちらも手を握った。


 レモネードをせっせと作り、数週間後から聖女手作りのジュース販売が始まる。レモネードにはミキサーがあればいい。最初は勢いと音に驚き、震えていたが様々な経験をしている聖女たちは直ぐに慣れてしまい手際よく作っていく。

 レモネード自体も美味しいと、皆はコクコク飲む。ここまで彼女たちに飲まれるのならば、これはこれで後々売れるなとアゴを摩る。


 聖女たちが幟を掲げたジューススタンドに立ち、聖騎士に囲まれたレモネード店を始めるとすでに人がずらりと並ぶ。お店自体はいくつも作っておく。

 一つだけではなく、それぞれお店をやり、お金のやり取りをする。ワンコインなので相手も払いやすく、安いから子供でも買える。

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