83引退した聖騎士の再就職先としてパフェ農園は人気
聖女たちから夫を働かせて欲しいという。ある意味、熱烈ラブコールラブレターが送られて来ていると聖騎士たちに聞かされたときには、どう反応すれば良いのか一番困った時期もあった。
「聖女たちが一番多くいるところに行きたくて」
こちらからしても一人だろうと二人だろうと、百人やら一億人送られて来ても魔法に影響しないので、好きにしたらいいと言っておいた。
「そうですなぁ。今はきっと聖堂から帰られている時間ですので……もう直ぐ城の住居やリビングに帰られるのではありませんかね」
そうしたらロマンスグレーの聖騎士だった彼らが、どこからともなく増えたのだ。妻や元聖女たちはどうしているのか、と聞いたら今は聖女たちの相談役や孤児院で、ボランティアをやっていたりするのだとか。
その間、元騎士の夫は手持ち無沙汰だったので、ここの仕事が出来て凄く嬉しい、と毎回お礼を言われる。またもやレターが送られてきて、キリがなかった。
長時間の無理はしないように、条件を後から付けたけど今のところ不満は出ていない。とは思う、多分ね。でも、楽だとは思う。警備員みたいなものだし。
老聖騎士はこちらを仄かに笑いながら見つめてから、お供しますよと付け加えてくる。ペコラの移動方法を知っているはずなので、転移でということなのだろう。
「巡回スケジュール変わるでしょ?他の人に言いにいくんだろうし、ここで待ってるから行って来て」
楽しげに言われるとダメとは言えまい。別に街歩きするわけでないから、居ても居なくても聖騎士によって影響することはなにもない。
彼はうきうきした声を発して、足早に聖騎士たちのいるであろう方向へ行く。年齢は結構いってるのに元気だ。
「お待たせしました」
「すみません。よければ私も共に行きたいのですが」
「え?あ、うん。別にいいけど」
二人目がきて首を縦に振る。
「すみません、この男は私の息子なのです」
「っえ、そうなんだ。親子で聖騎士」
どうやら若い子は息子だったらしい。父親が心配で同伴したいということらしいので、それならばと特に反発心は消えた。
「息子が聖騎士になるのはわかるけど、女の子とか女性はどうなの?職業とか」
ちょっと気になって問いかけてみた。二人はうーんと頭を揺らしてから、知っている人たちについて教えてくれる。
「私の知っている夫婦の娘は聖女たちのデザイナーになりましたよ」
「聖女へのリスペクト高いね」
「そうですなぁ。聖女様たちへの距離が近い、というのもあるのでしょう。私の場合は男の方ですが、聖女様の髪を整える髪結師になっていました」
父親の方が答えた。
「髪結師……あんまり知らない」
「ペコラ様はご利用なさらないので会ったことがないでしょう。今度頼んでみてはいかがですが?」
「んー、思い出したら」
「お前はまだ会ったことはなかったんだな。おれは毎回ブラッシングしてくるぞ」
アルクレイが知らなかったことを教えてくる。
「そうなの?」
あちこち渡り歩いているのは知っていたけど。
「ああ、ブラシ捌きはプロもいい。終わる頃にはツヤツヤだ」
「最近は聖女様のご家族の動物も手がけている、と聞いたことがあります。もしかしたら、アルクレイ様がきっかけなのかもしれませんね」
絶対ウサギで目覚めたな。アルクレイは話せるから、いわゆるお客からの直接的な感想が返ってくる。凄くレアな生の声になるのでは。
きっと、その髪結師はアルクレイの絶賛を自信にして、ペットのブラッシングを決めたのだ。そんなに喜んでもらえるのなら、やり甲斐は爆発しているだろう
「ブラッシングだけじゃなくて、終わった後に飾りつける提案をしたら喜んで始めたぞ。スカーフを作ってたな、確か」
現代でも犬にスカーフを付けたりするオプションがあるから、それを参考にしたのだな。
「すごく評判がいいと言ってた」
うさぎは胸をふっくらさせて自慢する。
「いい香りもすると聖女たちは自分たちが磨かれるよりも、とても喜んでおられるそうですよ」
気持ちはわかる。自分よりも大切にしている家族がさらに、可愛くなって帰ってきたら嬉しいに決まっている。
ペコラは四人で会話を繋げながら転移を行う。直ぐに変化した光景に二人の親子は驚いたが、話はすでに聞いていた顔つきで周りを見る。
「ここは小屋ですね」
転移用の小屋だ。そこから聖女の住む住所。王城への道を行く。兵士に声をかけると直ぐに扉が開かれた。
一人なら直接応接間に行くが、今回は聖騎士二人なので下手に現場を混乱させて後から面倒になる前に、先に来たことを伝えておく。
「こんにちはペコラ様」
「おや、来ておられましたか」
ペコラに挨拶するのは老聖女と老聖騎士だ。彼らは夫婦で王城の仕事についている。よく見る人たちなので、己も顔を知っている。
「うん。聖女たちを探しているんだけど、もう帰ってきてる?」
「まだですわ。もうすぐ時間なのでお待たせはしないと思います」
聖女たちに教えたりする先生を担ってもいるので、ペコラにも教育を施そうと話しかけたはいいが教養のあるこちらへ教えることはないと気付き、すぐに話の聞き役だけに回った賢い女性だ。
「今回、レモネードっていうジュースを作って売ることをしようかと思って。ボランティアでもいいけど、お金を稼ぐっていう経験もいい娯楽になるかなって」
レモネードを全員分取り出してサンプルを見せて、飲んでもいいと伝えると皆はお上品に飲み出す。




