81ドキュメンタリーを放映してみた
側近たちにも何らかのペナルティを与えたい。彼らとてペコラに話しかけてきたのだから共犯。命令されて仕方なく、ではなくて王子たちの思考に納得してから手伝おうと思って話しかけたのだ。
「今はパフェを味わおう」
「ああ。それにしても美味いなこれ」
「うん。成功」
食べてから数日後、留学期間が終わり帝国に戻ったペコラは聖女たちにめちゃくちゃ慰められていた。何があったか報告した際に、ウルウルと目を潤ませて急に手をキュッと握られた。
びくりと内心なったが相手は気づくこともせずに、そのままウルウルをさらに加速させていく。泣くところなんてないけどと……と述べてみたら周りも泣き出す。
「あまりに酷いです」
「そうかな?」
「そうですっ!ペコラ聖女はもっと怒っていいのですよ!」
「そうですの。お怒りなさいませっ」
クルンクルンのロールをさせた特徴的な聖女が横からプリプリする。
「彼らも処罰は受けたからもう気にしてない」
「私たちはあなたが聖女でない肩書きで向かったのに、巻き込まれていることに驚きを隠せないのよ」
しっかり気にしてないと言えば、他の聖女が泣く理由を話す。ああ、そっちか。
「仕方ないかなと。私は見た目が弱そうに見えてしまうみたいだし」
まだ子供の見た目、下に見られてしまうのはどうしても避けられない。聖女なので聖騎士たちが守れば、そんな人たちは来ないのでトラブルなど遭遇しないだろうし、聖騎士たちにも今後世話になる。
どうしましょうと聖女たちはざわつくけれど、ペコラからすれば相手は強くないのでどうとでもできる。彼女たちが気にしていることは万が一にも起こらない。
「大丈夫。パフェ新しいのをたくさん開発したから皆食べてって」
話は終わりだと皆にパフェを見せると、女の子らしき声を上げてワッとテーブルを囲む。非常に女の子らしい空間だ。
「まあ、ライチパフェ?新作なのですね」
「キャラメルパフェというのも甘くて溶けてしまいそうっ」
「聞きまして?最近、チョコレートというものを作っている聖女がいるとか」
食べながら話すこともやめない。会話は途切れないので素直に凄い。
「マリナサ様という方に絡まれたのでしょう?王妃候補だなんて信じられませんことでしょう」
「もう元ですよ。今は一人の令嬢なのです」
聖女たちが令嬢の報告書内でのことを持ち出す。
「あれでは今後、権威のさらに上は望めませんよね」
「そうですね。ガチャについて興味はあったのでしょうけど」
「変な方です」
「急に初対面で友人と名乗るなんて」
聖騎士が居たら、お目にかかれないだろうハプニングだ。近くにいる聖騎士たちも自分たちが居れば、と悔しげだ。
彼らが近くにいても彼女は普通にやらかしたと思う。聖騎士がべったりなら聖女など転生者である、と導き出すだろう。
何の証拠があるわけもなく、聖女として活躍している相手は転生者ではないのかと根拠なく決めつけてるだろう。
わかるのだ。あの子は決めつけたらそこからさらに考えることをしている気配が全く一切ない。何一つ、転生してきた気配も言葉も使っていないのに、思い込みで引っ掻き回した。
「離れられてよかったですねペコラ様」
「変人がたくさんいるお国ではありましたねぇ」
「うん。しかも、ガチャ盗もうとしたし。王の息子が。びっくりした。誰かやるかも知れないとは思ってたけど、まさかの人物だったから」
事後報告ではなく、トラブルがあった時に聖女たちに事件の内容の回覧板が回されたから皆知っている。何から何まで全て知り尽くしている。
さらに、映像を編集したものを動画として上映。初ドキュメンタリー番組みたいにしてみた。評判がとにかく凄かった。
始まり方も有名番組を参考にしてみたけど人気なものを使っただけに、皆の目を釘付けにしている。
生徒会の会話は反応がなかなかだ。勝手なことばかりしている、仕事をしてないわと映像に対してコメントを投下する。
「ペコラ様に目をつけるなんて」
「目がいいのか、運が変に絡まっているのかしらね」
「それでも王族が他国人に絡むなんて考えなしよ」
聖女たちもだが、聖騎士たちも見入っていて目が映像ごとに輝く。映像の投入は大成功だ。
「ペコラ様、留学お疲れ様でしたわね」
「平和とはいかないけど、一応期間内には通えたからまぁ、通えたって言えるのかな?」
聖女らが話しかけてきて、息をふうと吐く。彼女たちは笑みを浮かべてペコラでなければ早々に帰国しているほどのことだと苦笑いされる。
「無事に帰って来てくださってよかったわ」
「ペコラ様だからよね」
「普通の聖女は聖騎士がいるから彼らは近寄れないわ」
「やっぱり彼らは必要なのではないのかしらねえ」
聖騎士なし、聖女の肩書きオフでまあまあ普通に通えたのを総合的に鑑みて聖女の肩書きは物事を複雑にするので、と首を振る。
聖女たちは映像を見終わると、拍手をしてよかったよかった、と盛り上がった。娯楽として上手く機能しているので今後もやれそうだ。
パフェのガイドブックも作ったはいいが、無駄になってしまった。手元にある冊子を見ていると聖女たちが気付き、冊子について質問をする。
「いい感じだったんだけどね」
アルクレイが代わりに、作ったけれどあの国にはもう行かないと告げる。それに対して聖女たちが、勿体無いと言い出してこの国であの国のパフェのある店を紹介するように、アドバイスしてきた。
「あの国には恩恵を与えたくない」
「私たちも同じ気持ちですけれどねぇ」
「パフェ店を流行らせることでさらに、関係者に肩身の狭い思いをさせることもできる」
アルクレイの発言にペコラは「それはありかも」と目をパシパシさせた。
聖女発のパフェが流行り、あそこの国へ行ったのに微妙だったことが知れたりしたらどうなるか。きっと王子たちはさらに白い目で見られるだろう。
王家もやらかしてしまった手前、もう権威は維持できまい。今はグラグラしている状態だ。
「まだ罰が足りない。マリナサはお前に対してやったことを実感してないしな」
あとからペコラは実は聖女でした、と発表すればさらに王家は周りからどすりと刺されることになる。
どう考えても王子を幽閉に近いことにしても、軽い罰しか与えていない。それもアルクレイは嫌だと告げてきた。
命令したのはマリナサだったけど、行動に移したのは男子生徒たち。取り分けその中でも王子の行動はやりすぎ。
「国自体にはそんなにダメージがないだろ?」
いつもなら国ごと責任を与えていたから、物足りなくなる気持ちなのだろうな。国自体の罰は何にしよう。
「パフェのことで聖女が来たことを大々的に発表……一部だけになるけどいいかも」
これが知られた場合マリナサとその父親は、どう思うのか手に取るように理解できた。
「あの親子は絶対に後悔するぞ」
ペコラも少しずつ、それが魅力的な案に思えて来た。アルクレイは流石である。
「今も転生者と疑ってそうだし、疑われ続けるのなら聖女だったって知られても、そんなに大差ないかも」
聖女たちも応援していると言葉をかけてくれる。彼女たちは優しい。やめろと言われることはないので、自主性がサクサク成長していく。
帝国の聖女制度がきっちりしており、しっかり自己を持てるようにフォローしてくれる。だからこそ、安心して戻ってこれるのだ。
空気はある程度の湿度を保ちつつも、季節の温かさに満たされていた。外から鐘が聞こえて帝国首都の昼を知らせてくれる。
「何はともあれ学校に行けてよかったな」
アルクレイが優しげな目でふわふわとペコラの頭を撫でる。
「うん。意外と悪くなかった」
違う映像を見たいわ、と聖女たちに囲まれておねだりされる中で、外で咲く国有花の花びらが舞うのを窓越しに眺めた。




