80友達なんて嘘をついて利用しようとしたことが悪い
面会場面はここで最後らしい。ふーむ、見応えがあってよかったな。
「次は……」
次は誰にしようかなと選ぶ。
「王子はどうだ」
アルクレイにおすすめされたので見てみよう。
「王子、うん」
スクリーンに王子の姿が映る。今ではなく少し前から。どうなっているのだろう。見てみると部屋にいて窓際に立っていた。何をしているのかずっと見ていると、項垂れている。
「マリナサ様が問題を起こしたようです」
王子に子飼いの男が伝えた。男は内容に驚くと相手へ寄る。
「何が!?何があった!?」
「帝国の留学生に何度も接触をし、意味のわからない発言をして場を混乱させたと」
男の報告にへたりとなる足のまま、ソファに座り込む。芯を抜かれたようにへなへなとなる。
「留学生は確か、平民だ。帝国が平民のために?」
「王はこの国の平民と違い、留学生として選ばれた平民の立場はそもそも初めから違う……と仰せです」
王子は父親譲りの顔をふらりと壁に向けた。
「……あ」
合点が入った顔つきをした男の子。言われて気付く未熟さに、まだまだだなとペコラは辛口に評価しておく。もう遅いし、手遅れだが。
「それに……我が国の貴族が帝国人に手を出した事実は変わらないと」
「は、はは、そうだな。私たち生徒会も話しかけて絡んだ件も知られているとすれば……向こうは軽んじられたと判断しても可笑しくない。なのに、はぁ。なんてことを」
ガチャに関してはどこの誰かというのとは知らないが、大国からしたら同じ国が自国の人間に何度も接触してきて、危害を加えようとしたと言う判定になる。
どっちみち今まで目溢ししていたアレコレが許されるわけもなく、留学生と共に引き上げられる未来は変わらない。
王子の認識は一割が精々なのだ。頭の回転率は普通だなぁ。ペコラはいつもより辛く思いながら見ることをやめない。
「どうして……マリナサ……君まで」
「マリナサ様が先にあの留学生を気にし始めたのですよね」
男は王子の情報をかなり正確に把握しており、マリナサがまずペコラに声をかけたい、気にしていると周りに知られなければこうはならなかった。
聞かれた王の子は、髪の毛をグシャリと手で潰す。悔しい、後悔、そばにいられない。ペコラへの謝罪の気持ちは、どこにも見当たらない。
「王子は次かな」
王子が元婚約者の処分を待つように、王へ直訴しに行く。王は疲れた顔でマリナサへの減刑を望む言葉に、いい加減にせよと叱る。
「あちらは留学生なのですよね。向こうが帰るのならもうこちらへ来ない。こちらのことを把握する機会もなくなるので、処分を表側だけにしておいて、裏では謹慎というのではダメなのですか?」
「はぁ」
王は重いため息をこれでもかと吐く。
「お前に貴族の罰を決める権利も権限もない」
「でも、しかし、彼女は長年私の婚約者だったのです!」
「黙れ」
王はペコラが聖女なので覆らないとわかっており、聖女に無闇に絡んだことを知る帝国がとてつもなく怒っていることも手紙だけで、ヒシヒシと感じ取っている。
なんとか息子だけでも難を逃れさせたいと貴族たちから隠していたのに。親の心を一切慮ることもせずに、身の丈に合わないことばかり言う。
「そのまま部屋へ戻るのだ」
「嫌です」
「もう勘弁してくれ……国宝を手放した件で私の立場も揺らいでいる。減刑なんてしてしまえば王座から立ち退くことになる」
「私は立派に勤められます」
王子が肩書きを無くしたことを忘れて胸を張る。
「はぁ?」
「ですから、息子の私が居ますので立ち退かれようと王でなくなろうと私が父上の生活を水準を下げることなく過ごさせます。ご安心を」
「っな、なんだと」
いつの間にか退位をする前提で話されていることに、王は顎を戻せなくなっていた。ペコラはフッと息を吐いて笑う。笑うと言うより微笑だが、滑稽で堪らなくて仕方ない。
「親の心を知らなさすぎる。踏みつけてるな」
教育の失敗だろうと、アルクレイが指摘して首を振る。
「王様、唖然としてる」
息子の為にあれだけの事をしたのに、肝心の息子は父への恩を仇で十倍以上に打ち返してしまっている。やがて顔を赤くした王は兵士を呼び王子を捕えさせると息子の自室ではなく、使われていない離れの建物に連れて行くよう指示。
遂に見放したのだ。大人しくしていることもせず、婚約者だった女に熱を上げて王たる父を激怒させて彼は何がしたいのか、イマイチ統一感がない。
ペコラたちはライチパフェを食べながら、事の次第を見届けた。パフェのフレッシュさに空気が爽やかになる。
「王子は完全幽閉コース。令嬢も嫁に行くのが無理になるから貴族以外のところにやるしかないか」
転生者には、今以下の生活水準からの落下はキツイと思う。が、同情も哀れみもない。友達なんて嘘をついて利用しようとしたことが悪い。
「これで終わりか?」
「あとはマリナサの父親にも大切な時に子供還りするようにトラップさせておく。娘を罰して終わり、なんて責任の取り方では終わらせない。王子もいざという時に、変なことするようにやっておく」
令嬢の父親は娘を甘やかしすぎた。王子も盲目過ぎて結局頭はいいのに、考えなし。




