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08偽聖女が一言も聖女と言ったことはないと言っているが世の中には未必の故意という言葉があるんだよ

 プレゼントも騎士たちが弾いたけれど中身は確認できる。宝石とか服とかありきたり。デザインもアルクレイたちからすると、ダサいし。

 貰っても売り払うくらいしか使いようがない。


 あちらにいる聖女たちにでも渡せばいいのかもしれないけれど、受け取ったことを周りにも彼らにも世間にも認知されたくない。

 何かを受け取るということは、示談のように思えてしまう。そんなの絶対にお断り案件。


 王子やら王女たちも近くに寄ったからと、馴れ馴れしく散歩しませんかとか、菓子を食べませんかと言う始末。聖騎士たちに「聖女様は大規模な依頼でお疲れだ。騒ぐな」と端的に問われて追い返される。


 そこで自分たちは王族だぞと言えたのなら面白いけれど、聖女は基本的にどの国の王家よりも権限が強い。

 それを学んできた彼らに何か言えるほどの、頭の緩い人はいなかったのが至極残念。誰か騒げばいいのに。


 結局初日に騒いだのは王だけ。ってことは、バカが一人浮き彫りになっただけというような?

 あまりに、王族として直接的な人柄であったと今になって思う。


 女大臣の手紙をコーナーで紹介しなかったのは、非常に丁寧な文章でどこにも謝罪もなく、瘴気を消したお礼とシオリのみ。本に挟むもの。

 そちらも他と同じく弾かれたのでもらうことはないけれど、常識的な人がこの国で生きていくには辛く厳しいことになるなと、御愁傷様ですと呟く。


「同情すると思った?」


「半々だな」


「なるわけないよ。この世界の人たちは私にとって人じゃないから」


 にこりとも笑わず、ペコラは足を揺らす。アルクレイは承知しているから、と頷く。

 ペコラが聖女ではなかったら森で骨になって誰にも知られることなく、双子の片割れが真偽不明のまま忘れ去られて。もし発覚しても、その頃にはこの世からいなくなっていた。


 自分が助かったから、皆はこうして言葉をかけられたけれど、助からなかったらお墓に言葉を告げていただけだと、どうして誰も気づかないのか。

 見ないふりをしているのかな?

 王家も、今なら調べた人たちもどんな生活を送っていたか知っているのにね。


 普通に、聖女の可能性のある双子を虐げる双子の自分を、これからも隣に置き続ける判断をしたとはどうしても思えない。


 なんらかの方法で遠ざけただろうし。他国に追いやるとか、追放するとか、離れ離れにしただろう。あの元両親がペコラの方を庇うビジョンだって浮かばない。賛同して嬉々として手伝ったとわかる。


 国がなにかするか、親が手を下すか、周りが村八分にするか、時間の問題で。ずっとドアマットにされていたことは想像に難くない。

 聖女があの双子の片割れだと両親が住む近所にもすぐに出回っていたら、ペコラの双子の片割れの自称友だちたちが、それを知ったのなら?


 手紙が来ないのは聖騎士たちや、王宮が保管しているからかもしれない。次の大雨は、土下座だろうか?

 ワクワクしてきた。笑みを浮かべているけれど、うまく笑えないので無表情に見える顔つきを見せる。


「雨のときは、少し出歩いてみようかな〜」


「いいな。ごめんなさいの合唱が聞こえるぞ、きっと」


 アルクレイもペコラが虐げられてきたのを見ていたので、結構怒っているらしかった。世界を壊すのを止めたのは、ペコラの身が滅んでしまうからと説明されたのだ。


 それでも良かったと思ったけれど、今は彼らの破滅を見られて、あの時衝動的にやらなくてよかったとは、一応感謝していたりする。

 うさぎの見た目だけど、ゲームの時はびっくりするくらい丁寧な案内人なのだ。優秀な仕事ができるウサギらしい。


 *


 帰るときが来て、馬車に乗り込むために廊下を移動する。ペコラの前に躍り出るわけにも行かず、向かい入れるような立ち位置にいる王家の面々、この国の貴族たちがズラリと玄関に並ぶ。


 行き先を邪魔したのならば問題になるが、端にいるのでギリギリセーフなところか。こうなることは織り込み済み。それを見ないまま映像に残しておく。あとでお菓子を食べながら楽しむ算段。


「あのっ!」


 ツラツラ考えていると同じ髪色がふわりと、靡く。


「聖女様の行く手を遮るなど、許されません」


 聖騎士たちが腰にある武器に手をやり目をキツくさせる。


 彼らも事情は心得ているので、前にいる彼女もその後ろにいる死にそうな顔をしている男女が何をしたのかちゃんと人物相関図を完成させているのだ。

 なので、血の繋がりの道理は通らない。なにをされたのか、なにをしたのかはこの国よりもより深く知っているわけだ。


「ひ!?……ね、ねえ!わ、わ、私は、嘘をついてないって、言ってよ!」


 剣に手をやっているのを見て怯んだものの、もうあとがないと周りを見て十分理解させられている相手はそれでも尚、くってかかる。無謀である。情にまだ縋れると思い込んで家族だと思っているに違いない。


「聖女なんて、ひ、一言も言ったこと、ないもん、ね、ね?そうでしょっ?あ、あなたが一言言ってくれればっ」


 縋るように見てくる、元家族たちを一瞥もせずに。


「イヤ」

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