07望んでもない手紙を読むと内容は加点式で平均0点である。一人を除いて
ペコラが帰る前にと贈り物と名を打ったものがドシドシ送られてくるけれど、聖騎士たちが事前に弾いてくれている。
余計な真似はしないでと一度くらいは言おうかと思っていたけれど、言わなければ微かな希望に縋るかもしれないなと敢えて言わない。
聖騎士たちには余計な業務をさせているからと労りも込めてとっても美味しい、アイテムボックスにたくさんあるサラダを渡した。
なぜ、野菜?という声が聞こえてきたけれど次の日にはあまりの美味しさにあっという間に食べ終えたと名残惜しそうに言われて当然だとしか言えまい。
「美味しかったです」
「うん」
ペコラの農家レベルはカンスト。ゆえに、生野菜というだけで極上の味がする。あれを食べれば他の野菜が味気なくなるかもしれないな。
しかし、向こうの好感度はめちゃくちゃ上がるから、生野菜で上下するのならば良好だ。そんなこんなで、この国の心情をよくしよう作戦は大成功とは程遠い結果になっている。
手紙なんかもあるけれど、読むわけもないからと聖騎士たちが突き返している。内容はわかっている。こうしてデータとして把握しているしコピーしておいた。内容をいつでも見られる。
「読むか?」
「似たような内容だろうけどね」
手紙を観覧しよう〜のコーナーをする。
「どぅるるるん。まずは王からの手紙」
ペコラは手紙の内容をフォン、と目の前に出す。
「え〜、なになに?」
読み込んでみると、挨拶から始まり聖女として瘴気を消してくれてありがとうと書かれていた。それから、プレゼントを用意したのでぜひ受け取って欲しいと書かれている。好きなものは何か、嫌いなものはなにかと書かれている。
「えー、っと控えめに言って鬱陶しい」
まるでラブレターみたいだと笑う。この国の民でもないし、もう死んだことにした国の長に媚びられている自分。把握しただけでも笑う。
「死亡届を撤回する動きがあるな」
アルクレイが腕を組んで、鼻をひくひくさせる。ウサギの見た目なので可愛い。
「届け出を撤回しても、撤回しなくても……」
恨みが深いので、そんな程度のことになんの意味があるのだろうかと思うわけだ。ぐっと眉間に皺を寄せる。
「ペコラ、次はどうだ」
意識の深みにハマる前に掬い上げてくれる。
「次は〜王妃〜」
お次は王の妻。正直興味ない。女同士だからといって懐柔されるわけがないのになにを書いたのかと気になる。スクリーンに出す。なになに?
「ふむふむ、うーん、うーん?遠回しだし、わかりにくいな」
要約すると辛いことがあったのですね。あなたの気持ちを体感することはできませんが、一度私に言葉を告げてみるのはいかがでしょう。という内容。寄り添い系のカウンセラーみたい。
「控えめに言って、話した途端王に横流しされるじゃん」
というか、プレゼントを渡すために情報を得ようとしている。丸わかり。ペコラをただの小娘だと思っているのだろう。
そうはならない。なぜなら、この世界の遅れきった価値観とは違う、知識や方法を知っているから。
「いうわけないでしょ。ばっかみたい」
はぁ、と笑ってしまって息が苦しい。アルクレイと共になんだそれは、なんだそれはと言い合う。母親ぶってる気配もある。
母親から森に捨てられたのは国が定めた聖女の規定が双子だから。そこに責任を問えばどんな答えが返ってくるのか聞いてみたい気もする。
「双子って限定してたのもわかるし。私も双子だったから当たり前とは言え。だからといってさ。どっちかって、迷わせるのもどうかと思う。今回みたいに成り変わられることがあったし。聖女の可能性が高いからと片方を軽んじるのも家庭が歪む原因だし」
早々に決めるのも、決めないのも。恩恵があるから、知りたいと周りが親にプレッシャーをかけるのも大問題。だからこそ、聖女と片割れを信じきった親が悪いわけじゃない。
そこは!だけど。というか、そこだけ、とも言えるな。
「別になりたい方がなればいい。やれるかは別問題で、聖女として認めてもらえないのは偽ってる方は百も承知だろうから」
「だからとはいえ、お前を捨てるのは別だな?」
「そうそう。鵜呑みにして、怪我一つしてないのに。怪我を治した、痕がないのは、聖魔法を使ったからとか言い逃れられたのはすごいよ。褒めてないけど」
褒めてない。貶している、全力で。それに、アルクレイも頷く。同意するしかないと呟く。いつでも賛成してくれる。流石はプレイヤーの案内人だ。
気を取り直して、次は王の次に偉い人たち。大臣たち。王子や王女までストレートフラッシュ。手紙でトランプできそう。
「次はどれ読む?」
ジョーカー的なカードはどれだろうなと考えたけど、これは双子の片割れか元両親からの手紙が来たら、考えてみよう。
「王子たち。最後はあの女大臣がいい。一番マシな手紙で終わらせたい」
彼と同意見。二人は王子や王女たちの手紙を閲覧する。ペコラらは読み込む。二人して首を傾げた。
「こっちはさらにわからないねー」
「人の心がわからないというより、自分のことしかわからないヤツら。結局王侯貴族の子息令嬢。冷遇されたお前のことは紙の中でしか、見てない」
アルクレイですら、呆れた顔をしている。これはない、と言いたくなるなぁ。内容はお茶会をしようというもの。王妃と目的は同じ。王子たちのものはこれぞハニートラップかな?というもの。
どこかで見たのか、王から双子だから見た目は同じだと聞いたからか、見た目をベタ褒めされている。庭園を散歩しましょうと書かれているのでクスッと笑う。
お腹が捩れそうだと、足を上げかけて我慢した。人を誘う前に瘴気のことを勉強でもして、今後起こる大雨でこんなことを言う暇がないことになるだろうに。
飽き飽きして、これはありえないと首を振る。
「次は大臣たち」
読んだけれど、王たちの複合型。どれもこれも、ペコラの心を動かすことなんて、なかった。
「うーん、受け取らなくてよかった」
「そうだな。こんなの寄越されて返信を強要される意味がわからないな」
アルクレイが手紙を並べたまま、やれやれと言う。手紙を読むコーナーを終了する。




