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76助けを求めに行ったら友人ですと宣言されて鳥肌がヤバイ

 到底、ペコラの敵にはなりはしないほどに。というか、仮に転生した人間の気配を感じても、安易に探ったりしてはいけないと思うんだけど。不審者扱いされて、病院行きルートにされる落ちだ。


「なんでしょう」


 マリナサは最後まで何も理解してない。


「あなたって、もしかして」


 結局、自衛しなきゃならないのに、闇雲に突っ込むのはいけないのだ。


「転生した?」


 彼女の問いかけに無言を送る。馬鹿正直に答えるわけがない。言う気は最初からないからこそ、気を逸らしたのだ。


「ねえ、何か言って欲しいのだけど」


 転生なんていう眉唾なことをいきなり高位貴族に聞かれて、答えられる相手がいたらぜひここへ連れて来て欲しい。


「えーっと……あの、失礼します」


 そそくさと逃げるように去るフリをして、クラスの担任にマリナサから意味のわからないことを聞かれて怖い、と報告しておく。

 実際これが現地出身の帝国留学生だったのなら、あまりのことに頭が混乱しているに違いない。シミュレーションをしたら、怖がる一択。


 担任はあの令嬢が、みたいなまた問題を起こした問題児を思い出す顔をしている。着々と評価を落としているようで嬉しい限りだ。

 ペコラに話しかけて来たのは普通に気味が悪い。顔見知りでも友人でもない初対面で。名を名乗ることもせず不躾に問いかけてくるだけ。


 現代のマナーに当て嵌めても、不審者として通報されて警察行き確定。おまわりさんこちらです、なんて内心喜劇を思い浮かべてみた。


「困りましたね」


 担任が頬に手を当て、額に移動させる。


「また絡まれそうで。私、どうしたらいいですか」


 自分は留学生なので、この問題が留学生の手続きをする帝国の外交官の耳に入る。平民が?となるが本当の正体は聖女。

 マリナサが聖女だったら、ペコラの正体が聖女だということをマリナサに知られていたので、マリナサが聖女じゃなくてよかった。知られないままだけど、帝国はきっちりしているのでこういったトラブルでも記録する。


 帝国に国が起こしたものが延々と残り続けることを、どう思うのか。目の前の大人がそこまで考えているとは思わないので、ペコラにはわからないことだ。


 こっちは普通に報告書として提出する。しなくても聖女を見ている聖騎士が上に上げていくから、どちらにせよ厄介な案件として名が刻まれるだけ。

 この国はそんなことまで予期していまい。聖女に変なことを言った自覚なしに、ブラックリスト入りしてしまうかもしれないなど。


 転生者はきっと聖女よりも稀な存在なんだろうから、帝国も転生のことは把握してないと思う。いきなり転生者か否かを、平民の留学生の女の子に聞いてくる変な王子妃が居たと書かれてしまう。

 この国としても後々、外交でなにかあったときに、こんなことがありましたね?という話題を出されるかもしれない。


 こちらの国が人材を、元王子の婚約者の監視に割いている可能性はめちゃくちゃ低いから、把握できてないと思うのでハテナマークで頭が埋め尽くされる。


 帝国もそれを見越して、相手が知らないことをズカズカ言う予測もできる。聖女に変なことを言う以前に、聖女の肩書を持つペコラのガチャを王子が盗むような激怒事件のこともあるから。

 どっちみち、この国は帝国の怒りの尾を踏み抜き、二度と留学生の選ぶ学園にならないだろう。変な人が多い国だと思われているようだし。


 ガチャの件で国王が頭を下げたのに、今回はどうするんだろう。また下げるにしてもタダでは済まない。三度以上下げても、信頼は湧いてこないのだ。加害者が地味に多い。


「あ、あ、いた!あなた、ちょっと待って、待ってよ!」


 マリナサが曲がり角から追いかけてきた。追いかけてくるとは思わなかったので、職員室を出たばかりだけどクルッと出戻るしかない。


「先生、先生助けてください。また話しかけて来ました」


「え」


 相談した相手が目を丸くしてペコラの真後ろを見る。瞬間、マリナサが追いかけてきた勢いでそのまま職員室へ。

 ここに居る職員たちが叫んだ言葉も聞いていたから、本当にマリナサが来たことでザワザワする。ザワザワしてないで誰か止めてくれ。見てないで早く助けてくれないのかと、また失望が増えていく。


「先生っ」


「あ、えっと、マリナサさん」


 ペコラの方に手を置こうとした元高貴な身分だった女子生徒を、制止させるために声をかけた教師。マリナサはキョトンとした顔で声をかけられた方に目をやる。


「なんでしょうか」


「その、嫌がってますので声をかけるのをやめてあげてください」


 相手は身分だけが高く、扱い辛い存在。言葉も尻込みするだろう。だけど、頑張って欲しい。ペコラのために。もう少しで留学期間も終わるので、そこまで引き延ばせばまだ生き残れる。元王子妃候補を一番底に落としたいわけではない。


「私たち友達なのです」


「違います。先ほどが初対面です」


 うわうわうわ。鳥肌を通り越してアレルギーが出そうなことを言い出した。肩を摩りたいが、そんなことをしている間に好きに言われては敵わない。


「この子は照れ屋なのですよ先生」


 嘘が口から出る前に防御をしないと。と思ったら相手の方が早い。うん、気持ち悪い。

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