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74/106

74頷くまで頼み続ける元王子妃候補は周りから避けられる

 メンバーのやる気のなさも早く出ていけばいい。いなくなれば、勝手に再編成されるだろうからね。


 責める夢を見せられて、マリナサは目の下に隈が出来始めた。


「彼は会いに来れないの?会いに行けないの?」


 周りにいる男たちに話しかけるが、彼らもじわじわ何かいつもと違うと思い始めているのか、顔色が悪い。現実の彼らは口数が日が経つごとに少なくなる。


「知らない」


「暇じゃない」


「君の方がわかるんじゃない?」


 夢の中で喚く様は見ていてスッキリする。


「話を聞いてよっ」


 夢なのだから話しかけても、相手はやめてくれない。悪夢だろう、怖いだろう。


「なんなの、なんなのっ」


 女は走り出した。ここに居るのに耐えられなくなったのだ。足音はタッタッと鳴るが前に進むわけもなく、相手との距離は離れない。

 さらに現実味がなく、どんどん顔が強張る令嬢。夢を夢と思わないから、何かの魔法をかけられているのかもしれないとでも思っていそう。


「ひぃ!出して!誰か!」


 箱の中にいるとでも思っているのか。マルマルしないと出られない部屋がジャンルで流行っていたのは知っている。彼女もそれ系統だと思ったのかもしれないな。面白いのではないか。そういうつもりでもなかったけど、マリナサが思い込んでいるのなら利用したい。


 男たちだけが割を食うのは不公平だし?


「なぜ僕が君に会えないのか考えもしないのか」


「……考えたけどわからない」


 やっと夢の中の人間と会話し始めた。


「君のためにしたことで罰せられたんだ」


「は?私のためにってなに?勝手にしたのに?私を責めたの?やめてよ、責任転嫁っていうの知らないの!?」


 最後はもう怒鳴り声で問い返したが、男の方は煙みたいに消えて現実で寝ていたマリナサが、朝になって脳が覚醒したために目を開けた。


「……え、夢?今のって」


 パジャマが目に入って夢だったことを知ったらしく、ホッとしていた。ホッとしてる場合じゃないんだよ。絶賛危機的状況であろうことは、ペコラが誰よりも知っている。

 マリナサの居るこの国へ送りつける予定の手紙にも、彼女の数々の発言について報告書として送りつけるつもりだ。何も罰を受けないなんて許せない。夢だけじゃ生ぬるい。


 言ったことをしっかり知っているし。本人も周りも言ったことに対して、動かした気はないのだろう。でも、実際の問題として国のトッである王の息子が、既に利己的に動いてしまっている。国王は息子が婚約者のためにガチャを盗もうとしたことで、マリナサを逆恨みしても可笑しく無い。


 ペコラとしても、己のマリナサを罰して欲しい気持ちと王の気持ちは同じはずだと思う。感情制御もままならないような、できた王ではなさそうだし。絶対に恨むだろう。

 この説が有力なのは察知した魔法映像にもある。王が息子のやらかしに日々焦っていて、息子がやらかしの理由を婚約者にしていることにイラついている。


 婚約者に溺れ過ぎだと、ブツクサ言っているのが証拠。これで恨んで無いはあり得ないでしょ。


「なんだったの」


 マリナサが汗を拭って水を飲む様子を見続けた。安堵しているかと思ったら、やはり不安は拭えていない。夢作戦は成功していると言っていいかな。


「あれは夢、あれは夢なんだから」


 何度も言い聞かせる声に笑う。次の日も次の日も同じような夢を見せた。そうしたら遂に耐えきれず、父親に頼んだ。


「お父様」


「どうした」


 食事の途中だが、食欲も湧かない程眠れなくなった顔は疲れ切っている。まともに動けていない。


「彼の方、王子のことを調べて欲しいの」


「王家から何もするなと言われている」


 危機察知能力に過敏に反応している父は、首を縦に振らない。娘は可愛いと思っているが、それとこれとは違うのだろう。家がなくなる可能性のある空気を早くも察したのだ。できる人っぽい。


「お願いします」


「無理だ」


 埒が空かない問答。父が頷いてくれないとなれば、生徒会メンバーたちを頼るしかない。ずっと思案していた女は部屋に戻り、デカい独り言を喋る。父親のなにもするなという言葉は、当たり前に通じない。頭がろくに動いていないのだから、それもそうなのだ。


「ねえ、頼みがあるのだけど」


 同じように頼もうとする。今となっては人が少なくなった生徒会の部屋。少し減っていることくらい、察せればいいのに。王族になる女だったのに、鈍いにも程がある。小さな国ならば十分なのかもしれない。いや、やっぱりダメだろう。


「無理です。殿下のことを調べるなんて」


 ペコラからすればもちろん、色々足りなさすぎるが。だからこそイラッとしてムッとする。色々足りないのに王妃になるのはイラッとするだけだ。考えが足りない人が上に立って、その足りない王妃と聖女としての自分がいつか関わる日が来るなんて、ゾッとする。


「少し調べてくれたらいいから」


 今も凄く無茶なことを言っているのに、頷くまで離れる気配がない。ただの学生に本当に何を頼むのかと、ペコラたちでさえもマリナサの危機感の無さにお手上げ。


「無理ですってば。父に絶対に調べるなとキツく言われております」


 夢を見るだけに、留めておけばいいのに。

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