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73人の不幸の噂は最高速度で回る

 大国なら混乱していて落ち着く日がないが、小さい国なら混乱は少ないということが功をなしたのだ。

 羨ましいような、モヤッとするような。転生者としては満足しているみたいなので、意外としぶとい。悪い夢を見せても理解しないマリナサに、自分はまだ納得できない。


 もっと違う何か罰を考えておこう。窓の外を見ると、パフェのなっている木がサワサワ揺れている。異世界産の鳥が木に止まっているのをぼんやり眺めながら聞いていると、マリナサの声に焦りはない。


 他に何か婚約者に言うべきことくらいあると思うんだけど。本当に他人事なんだろう。今日から夢で、嫌と言うくらいあなたは当事者なんだと見せつけられるから、他人事ではいられなくなる。


 夜になるとベッドに入るマリナサ。観察していても王子との婚約についてほぼ呟かない。過去のアーカイブも見たが、どうしてだろう。軽く呟いくが後は何も言わず。


 婚約者なんだから、もっと何かあったのか必死になっても良いと思うんだが。薄情な女だとしか思えない。マリナサのために動いていたのに。今あるものを、全て無くすことにしてまで。報われないな。

 あれだけ、危険を犯してガチャを手に入れようとしたのに、滅多に名前を言われないなんて。しかも、それがトドメになったのに。


 夢を入れる準備を始めた。ふわっと紫色の煙が彼女の体を包む。スルッと夢の種が脳に夢を見せ始める。ペコラの作った通りに。夢はマリナサに男たちから責められる光景を生み出す。男たちが一人一人、目の前に現れる。


 婚約者になぜ思い出してくれないのかと言われて、キョトンとする女。責められる理由がわからないから。どこまで人間の適性がないのか、マリナサは。


 しかし、ガチャのことを言及してきて余計に混乱した。ガチャについての言葉が突然出てきたようなものだからね。彼女はガチャについて生徒会室の人たちに話していたが、知っているとだけ言っただけで欲しいとは一言だって言ってない。


 欲しいとは思わなかったから言わなかったし、何か思うところもなかった。作者については、とても知りたかったけれど。しかし、王も口を割らないとなれば諦めていた。

 まさか、その後に婚約者のためにやらかしてくるとは、予想外だったはず。王子は全て手に入れてきた周りからの甘やかしの結果、勝手に手に入れようとする暴挙に出た。


 そのことを知らされていない。自国の王子が窃盗を指示して、帝国人のものを奪うなど正気の沙汰ではない。知らない事実として、聖女の私物を。


 現在監禁に近い軟禁に処されている王子。夢に出ていることでここにいると思い込み、本人に言われていると夢なので思って夢の中でマリナサは話しかける。


「君のせいだ」


「え、なんのことかわからないのよ。なんのこと?」


 ガチャを盗もうとした行為を知らないので、自分の発言がきっかけなんてつゆほども知らない。それでも、いつか事実を知ったらあの夢はそういうことだったのかと自覚してしまう。今後悔をさせたいからこそ、夢を見させたんだし。


「君のせいで王家の継承権を外された」


 具体的には後継者としては保留だ。


「え?保留って!?どういうこと?私はまた婚約すると思ったのに」


 夢の中だからか話し方が令嬢っぽくなかった。ペコラの話し方と近い。


「もう王太子にならない」


「じゃあ私は?王太子妃になれないの?何をしたの?」


 ついに何かしたから閉じ込められたと薄っすら察した。そうしたら、今まで名前も何も言わなかったのにハッキリ意見を言い始めた。

 それならそうと、早く喋ってくれればよかったのに。変に遠回りさせられたと女の厄介さにため息を吐いた。現代知識ありの相手は、教養があるから面倒だ。


 あるけど、人を見てない。周りも見れていない。若くしてこちらに来たのか、鈍感な性格で生きてきたのかこの世界をゲームみたいな見方をしているせいで、変に雑なのか。端折りすぎだ、


「なんでそんなに責められなきゃならないのよ」


 悲しげにつぶやく姿に同情しない。


「な、なんなのよ。私のせいみたいな言い方してきて」


 彼女は婚約者が何をして監禁されているのか、知らされていない。それはそれで婚約していた家に不誠実だけど、王家の汚点を隠したいから隠さざるを得ない。

 卑怯だ。

 普通だったのに、理由らしい理由を言わずに婚約を白紙にするなんて、振り回して強く混乱させるだけ。混乱したのはマリナサたちの家族だけではない。


 この国の貴族たちが消えた王子について、噂している。王子妃になる予定の相手と縁を無くした話も、すごい速さで拡散していった。人の不幸は回るのが新幹線より早い。

 夢を続けて、短時間で毎日見せた。そうすると、彼女は目に見えて疲れを見せる。学校に通うが足取りは鈍い。ふらふらとしていて、なにもかもが身に入らないほど疲弊していっていた。


「責めるなんて酷い」


 一番下の立場の、平民の男子生徒が王子が居なくなって、空中分解しつつあるメンバーらを放置しながら淡々と仕事をしているのが目につく。社畜感が一人だけ漂う。早く解放されて欲しいな。

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