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72マリナサの罰は悪夢

 例え帝国の王に全世界へ向けて晒されても、二人は口が裂けても恥を言えないだろう。言ってしまえば王位から弾き飛ばされるだろうし、現に今めちゃくちゃ危うい。


 それでも彼らは隠し通そうとしていたんだけど、隠せない。帝王に手紙を送ったりして、周りは何事かと調べるわけだし。そうしたら当たり前だけど全部わかる。

 帝国は隠すことなく全てを紙で説明してくるから、王家の一粒種の息子がやったことを文字にして送るし、なんなら全ての貴族に向けて書面でコウコウコウナンデスよ、と赤裸々に嬉々として教えまくった。


 それにより、全てを把握した貴族たちは激怒。宝物庫の国宝に関しても、普通にこちらから知らせたのでさらに燃料を投下させられた。メラッと燃えた火は業火の如く王家へ向かう。聖女ペコラの怒りを体現するかのように。彼らは甘く見ていたツケを払うのだ。


 彼らの一人も逃さない。ガチャをやる原因はそもそもこちらに謎の疑いを持ち、無理矢理接点を取ろうとした女のせいだ。王子の婚約者の令嬢、かなりの確率で転生者。今や虫の息だけど。風前の灯とも言う。王子に変なことを言ったことを是非、後悔していればいい。


 ああ言うタイプは後悔とかしないっぽいが、どうせなんでこんなことになったんだろうとかで、混乱してるんだろう。自分が発端なのに。

 それさえわからないのだ。誰か教えてあげたらいいのに。というか、ペコラが教えるのも一興かもしれない。変に入れ知恵したから、王太子はもう廃太子みたいなものですよと。


「このままじゃ……何も知らないまま王妃にならないってことになるよね」


「そういえばそうだな。あの転生者だけなんともないな。損はしたかもしれないが明確な損害は被ってない」


「だよね。どうしたらいい?」


「なにをしたか夢で教えてやればいいんじゃないか?」


「なにをしたか、夢で。それ採用」


 彼女が理解するまで夢をリピートしてしまえばいい。そうと決まればどんな夢がいいのか、二人であれやれこやと意見を出し合う。夢なら逃げられない。

 親に助けを求めても無駄。権力に助けを求めようと夢なので誰も助けてくれない孤立無縁。アルクレイに流石と、大盛り上がりする計画。それならば、早速下準備に取り掛かろう。


「夢での内容は」


「そうだな……あの女が言ったことで周りが不幸になったことを、わからせる必要がある」


 ウサギが腕を丸めて腕を組む仕草。もふもふしているのに可愛い。撫で撫でしながら毛量を味わう。


「あの時のことを再現させて、周りにお前が悪いと言われる悪夢とか?転生者として立ち回ったから、自分たちは立場を失ったと夢の中で知り合いに言わせておけば、自責の念を持つんじゃない?」


「それはいい」


 お墨付きを貰い、取り掛かった。夢に介入するのは難しいことではない。人間、どんな人でも寝ている時ほど無防備なことはない。

 動物もいかに寝ている時の隙を無くせるかで、アニマル進化を遂げていったのかを知れば自ずと無防備な時はその時だと、誰でもわかる。昔、ネイチャー系のものを観ていて良かった。あれはいい睡眠導入映像だから。


「毎日?」


「三日か四日だ。長くじわじわ」


「直ぐにギブアップされたくないから、それくらいがいいか〜うんよし」


 こっちを平民と思い込んでいて、馬鹿な真似ばかりしてくる女たちは今日から嫌な夢を見ることになる。転生者だからと勝手に想像したり、ガチャについて知っていることは言っても気にしないのに、無理矢理言及しようとしたから欲を周りが出してしまったように感じる。


 二人で魔法をあれやこれやと作り上げ、マリナサ貴族令嬢にかける。特になにかエフェクトもなく、かかった自覚を与えずに終わった。


 映像を彼女の方にフォーカスさせる。顔をよく見えるように拡大させると呑気にメイドに世話をされて、貴族らしい生活をしていた。明日からこんな風にはいかなくなるから、紅茶の美味しさを堪能しておくといい。なんていう悪役のセリフが脳裏に浮かぶ。


 どんどん悪役のスキルが増えていっている気がする。でもなぁ、悪いのは自分じゃないからなぁ。そもそも、こちらに乱りに触れなきゃ、何もしないというのに。

 たった今見ている女子生徒も平民生徒だから、放っとけばよかったのだ。帝国の平民なんて貴族が気にする存在じゃない。


「私のことを気にしてたみたいだけど、結局こうなったんだからもっと慌てふためかないと、可笑しいよね」


 婚約者が居なくなったのと、婚約もなくなったのに。婚約していた王族がいなくなり、未来の王妃の椅子がなくなったら普通は困るしパニックになると思う。なんとも思っていないところや、ケロリとしているところが転生者らしいかもね。


 普通の令嬢ならば泣き喚いている。それに、家族たちも何が起きたんだと家門総出で王家の門を叩きに行く。父親が確認に行き、諦めている顔をしている程度。


 そこら辺は小さい国だから、影響が小さかったのも関係しているのだろうけど。

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