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71/106

71燭台で王が息子を殴っても制裁は変わらない。抗議文を送ったのに事実を隠蔽するという不誠実

 落ち着いてください陛下、と言われて漸く燭台を横に置く王。


 それに安堵する白衣の医師は、息子の王子に外へ出るように伝える。その言葉を恵みとばかりに聞き入れて、廊下へ向かって走る情けない王子。


「あやつを部屋から出すな」


「ハッ」


 実はそばにいた宮仕えの男が頭を下げて、後ろに下がる。部屋に監禁するための準備だ。部屋にいるように言っても、婚約者に呼び出されたら呆気なく破りそうな長男を思い浮かべる。まるで、肉を与えられた犬のようだ。


「婚約者の令嬢はどうなさいますか」


 別の側近に問われた王は目を押さえるように手で覆う。考えることややることが、倒れようと身に降りかかってくる。仕事も処理も増えていくだけ。


「なぜこんなことになったのか調査が先だ。帝国はとっくに知っていそうだが。もう手遅れかもしれないが、やらないと進まない」


「わかりました。学園に調査員を派遣します」


 王家は重い腰をあげた。遅すぎたが、何もかも。全てを俯瞰した位置から映像越しに眺めていたペコラはバカにした息を吐いた。色んなことを言いたいが、言ったところで理解する頭がないのだから、無駄なことなのかもしれない。


「代償は払ってもらう」


 怒りと愉悦の滲む目を宿してウサギと共に画面を見つめた。


 *


 生徒会のメンバーは暗く澱んでいた。画面越しの彼らの顔は、本来椅子に座っているはずの真ん中にある空っぽの空間を見つめる。お互い何か聞いていないかと聞き合っても情報一つ得られない。

 風邪を引き、休んだと使いから聞いている。だが、かれこれ一週間経過しても学園に来ない。王子がこれだけ休むなど過去にないこと。


 一粒種なので慎重を期して、学園に行かないようにされているのだろうという考えを否定されてさらに一週間が経ち、二週間目に入ろうとしていた。


 婚約者であるはずの令嬢もなにも聞けなかったと聞いて、何かおかしいと思ってもコネもなく。親に聞いても首を振られて、情報が入ってこないと目元を暗くさせるばかりで。


 お互いなんとか殿下の安否を知るために動いているものの、一番機密性が高い王宮の情報なんぞが一子息に流れるわけもない。憶測ばかりが交わされて消える。

 ペコラはそれをジーッと見ながら彼らはなぜそこで、王を怒らせて謹慎中の可能性を出さないのかと首を傾げていく。まずは、なにか大変なことがあったとか、ありえることなんてその程度だろう。


「悪い予感なんて考えたくないのか」


 そうかと思う。思い至った。彼らは失敗しているとは思いたくは無いのだ。盗難事件は公にされていない。ペコラは大々的に、王子がやったことを公表するつもりであるけれど。


 王はされないと楽観視していた。なぜなら王子を謹慎させたから。そんなことで事実や罪がなくなるものはないのに。謹慎させたから何だというのだろう?


 まさか、許されたと勘違いしたのだろうか。王はペコラと帝国に詫び状を認めて、お金持ちだからと思われる物も王家の秘宝がある部屋から持ち出した。今代の持ち物ではあるが、勝手に独断で動かしてはいけないのに。


 宝のことをあとから知った貴族たちは激怒するとも思ったが、きっと周りは許してくれると思っている節がある。それはないんじゃないかなぁと、自分でも思う。王家の宝は王家だけの宝では無い。国宝に準ずるもの。国の宝。


 国が持っておくべきものなのだ。承認を得ずに持ち出したことは、わかっている。のちのち絶対に、退位させられる原因になると思う。あと、王子も継承権がそれに伴い消失しそう。危うい行動だ。


 それならそれでご勝手にだ。ペコラが出せと言ったわけじゃない。帝国の王が寄越せと言ったことでもなし。王子の婚約者であるマリナサはというと、王子の状態を知らされずに婚約解消を告げられたらしい。事前通知なし。


 王妃候補筆頭だった彼女たちの屋敷も見てみたらおおわらわで、右往左往としていて王城に父親が行ったり、妻も加えて三人親子揃って行ったりと忙しそうにしていた。


「彼の国は我が国の者が所有する物を王族の身分で盗もうとした。さらに、抗議文を送ったというのにその事実を隠蔽するという不誠実を行なった」


 ようやく落ち着いたと思いきや帝国からの公的発言により、この国は歴史的に多大なる外交ダメージを負うことになる。泣きっ面に蜂状態だ。でも、自業自得だしなぁ。


「なああああああ!!?」


 帝国よりも小さな国の小さな王はそりゃもう奇想天外みたいな顔をして王座からぴょーんと跳んだ。実際見ていたら本当に跳んでいた。人って驚くとここまでお尻で跳べるらしい。新しいことを学べて、ここだけは留学したからこそ見れた光景である。


 王妃も王妃で「ひぁああああ!」と叫ぶ。しかし、王妃の実家や親戚、貴族諸々の非難轟々な手紙や本人たちが押し寄せてくることで、叫んでいる暇もなく閉口することになる。どやどやと王城が、前代未聞の人口密度で埋まっていく。


 どういうことだ!説明しろ!


 要約するとこんな内容。しかし、説明も何も、息子がガチャを盗もうとして帝国にバレて制裁されたのも隠していたら発表されました、なんて馬鹿正直に言えない。

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