↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
70/106

70黙れと言っているのに黙らない。言えというのに言わない。するなというのにする。お前はどこの王だ?なぁ、お前は私より上なのか?

 手紙や国際裁判にかけるとの脅しに、冷や汗ダラダラな王。


 王子の側近がガチャを盗もうとした犯人というだけでも大スキャンダルなのに、真の黒幕が……となれば王は失意に気を失う。何を呑気に寝てるんだこのおじさんは、と呟いた二人の声が一つの部屋にこだました。


「父上が倒れた!?」


 王子、つまり王の子供がけたたましい声音を部屋で響かせる。大きな国ならば息子にも告げられないことはあるが、ここは小さな国なので政治などないも同然。普通に王の容態についてそのまま伝えられた。


「失礼します。入りますね」


 王子は父が眠る中で着る物も取らずに慌てて、部屋へ押しかける。その折、父親に怒鳴られることになるとは夢にも思わなかっただろう。


「どうしたのですか?」


「どうしただと??」


 声音は喜怒を表す中でも怒気を纏っており、王子は人の感情に疎いので怒っていることなど察せれることはない。きょとんとした顔の息子に罵倒を浴びせられるまでは。


「貴様のせいだああああ!!!」


「へ?」


 突然怒鳴られた息子はさらに目を丸くする。


「な、どうしたのですか」


「目を丸くするなっ。事実から目を背けるな!泥棒がっ!」


「は?」


 泥棒とはなんなのですかと父親に問いかける悪びれぬ態度に、王はわなわなとさらに震える。指示役に指示をした人間は息子だった、と知った王の気持ちはぐちゃぐちゃになっているというのに。


「私が何も知らないと思って知らぬふりをして!知ってるんだぞ?お前がガチャの盗難を依頼したことくらい!ふざけるな!」


「っへ?」


 王子の顔は一気に冷や汗がびっしょり。なんで知っているんだと、ポカンとしたアホヅラを晒す。王はそれさえも忌々しそうに眺める。なにを今さら焦っているのかと視線を強く語るので、やらかした青年は首を振る。無意味だというのに。


「なんだ、言い訳か?」


「言い訳ではありません。意地の悪い言い方をしないでください父上」


「父上?今は国王として聞いているんだ。思い違いをするな」


「へ。私は息子ですし次期王妃もすでに」


「そうだ。そういうつもりでいた。バカな真似をしたと知るまではな」


 温厚で難しいことを考えずにいた国王が今は、性格を豹変させたように怒りを向ける。そんな経験はない息子は父親に、初めて不味いことをしたと、じわじわ感じ始めた。親からしたら手遅れだが。


「だから、なんのことかわからないです」


「調査済みだ。それだけならまだ隠蔽もできた。だが、帝国から抗議の手紙のみならず、国際裁判から通知が来て起訴がされたと書いてあったんだぞ!く……ふざけるなー!」


 寝起きの状態で叫ぶ王に、外で待機していた主治医が「落ち着いてください。血圧が上がるとまた倒れますので」と静止してくる。王子のこちらにも「興奮させるのはおやめに」と注意が飛んでくる。


「な、私のせいではない!たかが医者が口を出すな!何様のつもりっ、が!」


 頭に衝撃が起こり、咄嗟に手を当てると額が切れたらしく血が滲む。


「ち、ちちうえ?」


 父がそばにあった燭台で自分を殴ったと数秒経って気付く。周りの護衛たちも驚きに固まる。こういうところに平和な国だった影響が垣間見えた。


「お前は今、見下した医者よりも下だ」


 ぎくりと体がこわばり、喉が無意識に唾を飲み込む。父親の言葉を知りたくない、考えたくないと脳が鈍くなったような顔色を浮かべた。


「なに、を、言って」


「今も理解できなくなるとは」


 父はただのガチャに重い反応をし過ぎていると言いたくて、もう一度、足を踏み出すと燭台が揺れる。二度目の振り上げだ。頭上に長細い影が伸びた。


「ひぃっ!?」


 燭台は殴るものでも人に当てるものでは無い。王とてこんな経験はないだろう。この国は小さいので横暴が服を着ている貴族も王族もいない。小さな事件と言えば、夫婦仲が拗れた言い合いの末の何かだ。特に王族となれば、さらに血を見ることなど縁遠い。暴虐も然り。


「黙れと言っているのに黙らない。言えというのに言わない。するなというのにする。お前はどこの王だ?なぁ、お前は私より上なのか?」


 いくら小さな国で、トラブルなんてなったことも経験もない王でもキレてしまうことだった。ただでさえ聖女の反応が鈍いのに。歓迎をしたくても拒否されてしまい、どうすればいいのか頭を延々と悩ませていたのに。


 なんとか王国をよく思われたいと気前よく接しているものの、なかなか交友を得られない。おまけに遂に、帝国から抗議文が送られてしまうまでに。

 この国はもう終わりだ、ダメだと思うのは自然な思考回路だ。しかも、息子のせいで。息子の安易な行動のせいで。息子は何もわかっていない。たった一つの行動でも聖女の怒りを買ったというのに、呑気にも言い訳をして誤魔化そうとする。


 うずくまる己に息子は、怯えた目で見てくる。そうなる前にやるべきことがあるだろうと、怒鳴り散らしたい口元。王は目が赤くなるのを感じる。

 王子は目が赤いままこちらを睥睨する父親を見ているしかない。こう着状態を解くのは主治医の声。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。