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68/106

68王子が父親の王をイライラさせていて飯が美味い

 王だって契約魔法さえなければその軽い口を開いてペラペラペラペラ言っていただろう、それができない身の上で何度もしつこく聞かれたら能天気王でも嫌気が指すに決まっている。


「無理だと言っているだろう」


 自室なのだろう。そこにズカズカやってきて、何度言っても無理と言っても聞くのをやめないから王の言葉は棘だらけ。ムカムカもするだろう。身内だからこそ権力で振り払いにくいだろうし。

 ペコラは逆になんとなく可哀想だなぁとすごく他人事にすごく無責任に感じたが、他人なのでそれだけ。なんにもしない。元々こちらの行動や立場を軽んじているふうだし。


 軽んじているとは少し違うかもしれないが、慮ってもらえず、おまけに仮初の平民の立場に収まっているのに、変な女にロックオンされて周りの男たちが盲目なせいで散々。


 いくらなんでも優しくしてもいいバロメーターを振り切っているわけで。怒りはあれど慈悲の心はない。王も息子の手綱をろくに掴めてないみたいでイライラする。

 放置していたから今父親の王はこうして、息子に苛立ちを隠せないのだ。いわば自業自得、エトセトラエトセトラ。王子のうるさい声音に国王は指をトントンと椅子に苛立たしげに叩きつけている。


 ペコラはそれを映像越しに確認して、息子が父親をちょっとずつ怒らせているのに気づかないのはなんなのかと、バカを見る目になる。

 そもそも初手から王がこちらを怒らせる要素を持ち寄っているし、王太子たちも性格終わってるし。終わってる理由として、生徒会の仕事を雑用係の平民に押し付けていることを強く支持する。


 なんていうか、パワハラって感じがして夢見が悪くなる。ブラックな上司そのままで。あんな対応をしている子がいつ辞めてもおかしくない。すぐにやめてやるとなるのではないかな。

 ペコラなら王宮とか破壊しに行くレベルだ。みっちみちに柱をへし折りに行き、王座を粉砕して全員の髪を剃る。それくらいやられている。やってもいいのではと最近思い始めているので、やる時は近い気がしてならない。


 今何でそうしてないのか自分でも不思議なんだよね。なんでだろうか?まあ、もう少し観察しておこうというエンタメ目的もあるし。聖女たちに見せたいな〜という思惑もある。リアリティショー的な。

 とにかく、面白いからもう少し楽しみたいってことだ。なにかあったら即報復するつもりなんだけど毎回同じ報復方法だと芸がない。同じやり方はマンネリを招く。ちょっと手を変えて別の方法を思案した方がいいかもしれない。ペコラはそれを相棒に話してみる。


「どうかな?別の方法」


「とはいっても、いつもみたいに思い知らせるのが手っ取り早い。他の方法はなにかアテはあるのか?」


「まだわかんない」


「今までは国に対してまとめて責任をとってもらってた。今回はどうすると他の時の違うことになるか、だが」


 アルクレイはウサギの足をモフッとさせて腕を組む。王子が父親に叱られているのを端に、二人して悩む。


「国を痛めつけるのは変わらないとして……なにか違うところを変えたい」


 何か別のことをして、最後の光景を変えたいんだけど、どうも思いつかない。髪や爪を伸ばした罰を思い出したけど、今回もそれ系統がいいのかな。思い出してみると不便系はいいかもね。不便だと人は苦痛を感じるし。


 騒ぐのは国の王子や周辺の貴族とマリナサ。あの人たちを黙らせれば静かになる。薄々わかってたけど、それならそうとあちらを黙らせるカウントダウンまでに、今回の映像に面白さと刺激を与えて面白おかしくすれば、もっと楽しく映像を見たくなるってことだ。


 どんどん学園生活が楽しみになってきた。嫌がらせらしいことをされていたから、フラストレーションがたっぷり溜まってる。我慢したくないけど崩壊させるまでではない、非常に微妙な人たちなのだ。

 ポテトフライを摘みながら、ピンと頭上に電球が灯る。いいことを考えた時ってピキキッとなるんだよね。こういうのはいつ体験しても不思議だ。アルクレイはポテトにコンソメを振り掛けながらポテトをまろい口に放り込む。


「ん。コンソメはうまいな。流石はコンソメか」


「私はバター醤油味好き」


「ハズレがないもんな。ポテトはなにとも相性がいい」


 ポテトをパフェのお店のサイドメニューにしようか、別の店舗で専門店にしようか悩む。別々……いや、店を改築して隣か上に部屋を増やして系列と分かりやすくすれば上乗せ効果が見込める。


「どう思う?ポテト……増やすとか」


「甘いものと塩辛いものが食べられる店なんて繁盛しない理由はない」


 二人で和気藹々と盛り上がる。ポテトを加えた新たな案を形にしていく。気付くと二時間経過していた。録画してあるので、監視対象たちの映像はいつでも見られるから見逃してしまうことはない。


「王は王子の要求に応えられないわけだけど、そうなると王子たちがなにか焦ってやるかもね」


 独り言に近い言葉を呟く。何をやらかすのか今の所はわからないけど、かなりのことをやらかしそう。今でも聖女であるこちらの顰蹙を六割買ってるのにね。


 実はこの世界で重要視される権力者の機嫌を損ねている、と知った時の彼らの顔を見るのが楽しみで楽しみで。だからこそ、なにも手を出してないし、誰かの何かを損ねていることを匂わせることもしていない。

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