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66/106

66人のものを横取りできないようになっているので安心

 ガチャってなんだと側近たちと話しているが、顔色悪く震える女が一人。マリナサだ。ガチャを知っているから、ガチャが実装されて転生者の気配を色濃く感じているからあんなにビクビクしているわけだ。これって仕返しになってるのかも。いい気味だ。


 彼女が何かに気付いたとしても、こちらに指一つ触れることも知りたくてもわからないままなのだ。情報規制は完璧。この国の王が知っているのは聖女が誰かということだけ。それもとっくに契約魔法によって封じられており、誰かに知られることもない。

 違和感があって探ってもピシャリと帝国からお前たちには関係ないという回答が来るだろう。帝国民というところは辛うじて得ている情報を元にこちらへ探ってもペコラは答えない。故に詰む。


 いそいそとガチャを回そうとする、王子たちその他の面々。ガチャをくるりと回してコロリと出てくる丸いものに、かぱっと開けて中に入っているミニチュアパフェを凝視する。


「な、なんだこれは」


 ガチャの本体に写真は貼られているからなにがあるのかは案内してあるし、中身は知っていたが、あまりにリアルなパフェのキーホルダーに絶句しているらしい。


「本物にしか見えない……本物ではないのか?」


「すごいですね」


「食べられそうだな……匂いはしないか」


 本物そっくりなので思わずニオイを嗅ぐ動作にアルクレイと笑い合う。この光景はあそこだけではなく、精巧な作りのパフェを生徒たちが思わず嗅いでしまうという場面を最近よく見る。

 ペコラもニオイをつけるバージョンを検討していた。それくらいには皆嗅ぐのだ。思わず内心笑みを浮かべるくらいには。


「殿下。これは本物ではないようです」


「それ」


「マリナサ、なんだ?」


「これを知っているのか?」


 何か言いたげな女の視線に漸く男たちが着目する。いや、ここで知ってるとか言っても後出しになって知ったかぶりにしか聞こえないよと言いたくなる。いやー、言わないよね?


「うん。似たものを見たことあるわ」


「似たものを?」


「もしかして、ガチャを作った相手はそれを知っていたとか?」


「血縁者かもなあ」


 マリナサの手柄にされなくてよかったけど、その説明で事足りるのは地味に怖い。普通はもっと突っ込んで聞くものだろうに。


「この世界で、この世で一人なのに。製作者は」


「あんまり言うと後々、話が噛み合わなくなるのにな」


 アルクレイがやれやれと言う。


「本当にそれ。噛み合わないと嘘を付くしかなくなるよね?変なの。このまま、知らぬはぜぬで行けばいいのに」


 知らないと言えば余計な嘘をつかなくて済むのに。なんのために知っているなんて言うのか。仮に転生者だとして、彼女はガチャを見たことがあるのは確実。じゃあ、嘘ではないってことになるのか?

 それはいいとして、ガチャはガチャでも拡大解釈での知っているという言い方で、彼女は知っていると言い切ったのかもね。それならば関係ないか。知っていると言っても幅が大きいけど。作り方を知ってそうでもないから。


 作り方は教えられないのに、もしこの商品について関与を広められたらというかなりの自意識過剰解釈を回避するために、ちゃんと帝国で商品登録をしてある。

 日付もかなり前だ。キーホルダーに関しての登録は割と早い。考えたものを仮案としてポンポン登録したのだから、日付は古くなる。


 よって、彼女が何か言っても帝国と聖女が後ろ盾にいる限りこの国の王妃候補だろうと成果を掠め取られたり、横取りされることはない。

 そんなことをしたら一撃でこの国は終わる。帝国を怒らせてペシャンコ確定演出であろう。SSR演出のように。ガチャだけでそれは我慢してねとひっそり伝える。

 心の中だけで。彼らがガチャについて話している間にも生徒たちは次々回す。本体はたくさんあるので一つだけではない。王子たちが場所を一つ埋めたところで、生徒たちの行動が阻害されることはない。


「あの人、ガチャって概念だけしか知らないのに、知ってますとか言ってあとから恥かくかもしれないのにね」


「知らないよりは知ってるからそう言いたくもなるんだろうな」


 ガチャの何を知っているのか知らないけど、具体的なことを聞かれても果たして答えられるのか。仕組みとか。中身の構造とか、作り方などなどね。


 後出しは許さない。特許を見たらわかるから仕組みについてはまだ出さない予定。少なくとも観覧に制限をかける。この国なんてもっと見れないくらい国力弱いから、無理だろう。


 というわけなので、横取りされる心配はないだろう。ここへたどり着いて文句を言われることも、何か探ろうとすることもあるまい。多分と付け加えた。もしもの奇跡で、ガチャと編入した生徒の己に謎推理で辿り着く可能性も微レ存あるからね。


 どう頑張ろうと差がある限り、自身に問答をしても誰も知らないし、知れることはない。ペコラが知らせることもない。聖女たちも帝国も教えることはない。ただでさえ弱小国。メリットも得もない。


「これは、本当に作りものなのか」


「あまりにも本物のようですね」


 生徒会の面々の話しが映像の中で続く。知っている話からはあまり頭に入ってきている感じがしない。上の空だ。


「これは、キーホルダーというのですね」


「カバンにつけたりするらしい」


「こ、これを?そこらの職人よりもすごい作品を?無理ですよね」


「恐れ多くてつけられそうにない」


 確かに初めて見たら本物みたいで気軽につけられないかもしれない。そこは視野から外れた視点だ。これはこれで参考になるな。

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