50羊羹を差し出すと得体の知れないもの扱いされたが美味しいと喜ばれる。見た目は真っ黒だから
頷くと三人は、いろんなことを話題にして話をする。少しだけ話しやすく思えた。食後にペコラはデザートを提供することにした。
「貰い物なんだけど、よければ」
キッチンを借りて、それを切り分けてからテーブルの上に出す。夫婦は驚いた顔をしてそれを見た後、引きつった顔をしていた。見た目が真っ黒だからわかるんだけど、初めて見たらこんな顔もされる。
「え、あ、その」
「ペコラちゃん?」
何が言いたいかわかるが。ペコラは率先して口に入れた。目の前で毒見して見せる。
「い、いただこうか」
「う、うん」
二人は滝から落ちる前の、覚悟を決めた顔つきをしてそれをぱくりと食べた。もぐもぐと動かす口元は遅く、噛むたびに目を閉じていた。
「え?」
しかし、口に広がる甘みに二人は目を開けて、目の前にある食べ物を見てからお互いの顔を見合わせて、驚きを共有し合っていく。
「あ、甘い?」
「って、美味しい?美味し、過ぎる!?」
びっくり仰天な様子で、今度は味わって噛み締める。
「これ、なにかな?」
「本当。なぁに?」
「これはヨウカン」
和菓子の王道、羊羹。
「都会はこんなに美味しいものがあるんだね」
「違う。私が作った」
「つく、作った!?す、すごいな!」
二人はすぐに信じて褒めてきた。疑いの色はなく、こちらの発言を完全に信用している。
「ペコラちゃんしか知らないの?」
「うん。これで生活してる」
「生活?もしかして、お店でも?」
「そう。お店で売って買ってもらって生活費にしてる」
システム任せだけど。
「大人顔負けなんだな。この村じゃ商売にならないし、もっと大きな場所を目指していたりするの?」
「ううん。ここでもいい」
「えっ。いやー、人が少なすぎて商売にできない。赤字になる」
「大丈夫。赤字にならないやり方をしてるから」
断言すると、彼らは何も言わなくなった。余程、言っても無駄と思われるくらいきっぱりした発言に余計なことを挟む気を無くさせたみたい。自信しかないからね。
「どこでしてもいいの?」
「村の真ん中でも問題ないよ。村長のところへ案内しよう」
食後に落ち着いたらすぐに村長のところへ連れて行かれて、すぐさまヨウカンを出すと味見した途端許可を得られた。
「うま〜い!?きょ、許可!」
売れずとも構わなかったのでのんびりやっていければいい。それに、システムが勝手に自動で売るのでペコラは日がな一日中のんびりしても売れ続けられるのだ。
「ペコラちゃんの最初の客にならせてもらおうかな」
なんて言って買おうとする彼へペコラが、直接値段を提示して売った。彼らは泊まらせてくれるので親切価格だ。システムに任せると設定金額で売るので高め。高い理由はまだ、ヨウカンがここでしか売られていないから。
仮初の運用なので、値段もはっきり決まってない。ここは都会ではないのでそこまで値段を上げているわけではないけれど、それでも贅沢な値段。子どもの小遣いでは到底買えない価格になっている。
「ふふ。楽しみだなあ」
美味しかったのを知っている男は嬉しそうに家に向かう。ペコラはシステムに任せておき、別のところへ向かってアルクレイと話せる人目のない場所に移動することにした。
「いい人たちだった」
「運がいい。幸先もよさそうだ」
やっと話せるようになったアルクレイ。ペペッと後ろ足を払う。
「一泊するのか」
問われたので一泊すると認める。なかなか良い人たちなのだから、悪くないと思えたし。スープもおいしかった。優しさもある人たちで、悪意もない。泊まっても良さそうだと二人で話し合う。
「問題は女の子の方」
悩むとうさぎのしっぽと耳が、ふるりと震える。
「先に調べておくといい。事前調査はリスク回避のためになるぞ」
「そうする」
アルクレイのアドバイスに従い画面を映し出す。家の人が何度も名前を言っていたので、それを検索すれば出てくる。
「みっけ」
ここはどうやら街の少し外側に面しているところ。ボーっとして座っている。
「なにしてるの」
「黄昏てないか?」
ペコラより少し上ということは難しいお年頃。
「悩みとか?」
「おとなしそうだな」
「いや待って、プロフィールは見ておかないと」
普通ならしないけど、今日寝泊まりする家にいるとならば自身に大いに関わるため、緊急時のためという名義。何々と読み込むうちに目頭を押さえる。
「うーん、うーん?これは、都会に憧れているがゆえに……拗らせてる?」
「この歳のやつは大体、都会に憧れていても変じゃない」
「妻の証言はすごくソフトだった」
プロフィールには並々ならぬ都会への想いがあり、この村より少しだけ人口が多かったことも相待ってここへ来たことに、不満があるらしかった。
「不満……知ったら知ったでこれじゃ、飲み込まれる」
憧れだけで特に何かしたいってわけでもなさそう。目標も上へ上がる、成り上がりを望んでいるわけでもない。
「会ってみないと私に対する感情は読めない」
「仲良くできるか謎だな」
「仲良くなる気なんて始めからない。ここにはパフェ展とパフェ店をする、立地の確認のためだし」
首を振ってきっぱりきっちり言う。アルクレイも「そうだったな」と思い出す。二人してぶらぶらまたし始めて、改めて村の中を回る。ゆったり歩いて煙突屋根を眺めた。
「前に住んでいたところは煙突なんてないのに、懐かしさを感じるなんて不思議」
以前とは、この世界のことではない。けれど、現代的なものしかないのに哀愁を覚える風景だ。かといってもこの世界で過ごしていた時の記憶が刺激されるわけじゃない。
のんびり眺めていたことなんてなく、街中で双子のじゃない方として冷めた対応をされるから俯いてばかりいたからだ。閉鎖的なわけでもないのに、聖女の可能性があるだけで一気に注目度が違う。
「そうだな。ずっと見ていたくなる」
二人で歩き続けて泊まる家に戻る。ただいまと言いにくかったけど、代わりに戻ったことを示すために顔を向けた。
「おかえりなさい」
「あ……」
何も言わなかった。いや、言えなかった、と言った方が正確か。
「え?」
声が聞こえて声の方向に顔を向けることはなかった。例の女の子テッタだ。




