05彼らの疑問を解消する義理はない。既に聖女様は他国人。双子を森に捨てた親が死亡届を出していたことにより受理されている
あちらで食べて、毒でも入っていたら敵わないからね。また、睡眠薬を入れられて眠らされて幽閉、監禁という可能性もある。
監視カメラで見ていても、未だペコラが派遣されてくるということは秘されているらしく、名前も教えてないらしい。
ペコラが知られたくないのでその方向でと言ったから汲んでくれた結果なのだろう。知らなくていい。知っていても知られて媚や謝罪をされても一ミリも、一グラムも許す隙はないので。
じきに祖国へ到着する。カメラで祖国の町を、こちらが見えることも加えて見ていると、プリンアラモード馬車に怯えているみたい。
あちらの王が聖女が来ることを国民に告知していたからと、来るところを見ていたがめちゃくちゃ大きな巨大お菓子の、模したものが音もなくやってきた。
市民の人たちは大パニックになって逃げ惑っている。転けたり踏まれたりして、一種の狂乱状態。
瘴気の前に彼らを治せと言われたら怒る自信があるけど。別に来ることを告知しろとは言ってない。
それに、集まらないように国民をバラけることだって、事前にできたはずだし。
観に来いとは、一言も告げていないことで起きたこと。勝手にしろと無視して見続ける。
人々はおおわらわで、ガーッと離れていくけれど、この国の王や兵士たちは城からこの巨大プリンアラモードを見て、恐怖に震えていた。
大魔王降臨みたいな心境なのだろうか。どうでもいい。本当に恐ろしいことが襲うのはこれからなのだ。精々、これが序の口なのだとのちに後悔していくといい。口元をクッと皮肉に上げた。
出迎えたのはやはり、王だった。来なくていいのにと無関心に感じる。ステップも使わず馬車から降りていく。馬車は町に入ると少しずつサイズを小さくしたので道路を進めるようにした。
町に入るときにそのまま進んだら、なし崩しに町は瓦礫と化す。と思ったからこそ皆は逃げ惑った。しかし、壊れずに小さくなったのを見た町の面々の顔は傑作だ。
王も目を点にしていたから、面白くてたまらない。その男が今は笑顔をなんとか保ってこちらを見ている。政治をする頭を回転させていた。
が、ペコラの顔が誰かに似ていることを認識したとき、ゴキュリと喉がやけに大きく響く。ダラダラと汗をかきかけていて、気を失いそうなくらい顔色も悪くなる。
例の双子、家族を調査したのならば双子が二人いるという、当たり前の調査報告を読んだはず。そして、自分は双子なので当然ながら普通に似ている。
髪型も雰囲気も違うが、紛れもない血筋を感じてしまうわけだ。発覚した聖女の正体に、聖女と嘯く少女を知る人たちも目を丸くして口をあんぐりと開けていた。
「……もしや」
彼が唱えたのは双子の名前。しかし、ペコラ本人は話すことなどないと彼らの横を迂回して王城へ行く。最初から会話をしないことは、手紙に条件として言い含められていたからだ。
それに場所も、祖国の役人の彼らの疑問を解消する義理はない。既にペコラは他国人。双子を森に捨てた親が死亡届を出していたことにより、受理されている。
行方不明期間が一定になると申請できるのだから、親はさっさと偽善的に記録から抹消した。仮に生きていても、この国の人間と認められることはなく、戻ってこれないようにしたかったのだろうな。
やはり、彼らは邪悪な偽善者と言える。善意で死亡届を出す必要はどこにもないのだから。全てが悪い方に置かれている。
とまで考えてはみたけれど、つまりはこの国の王はペコラが聖女と知ったところで、二度と自国の人間だとしても国にいてくれと言えない。
時間や証明を無効にしても、あの国に登録されているので、この国の人間にはならない。
たとえ、認定されても居座る気など初めからないから、無意味。無駄な努力をすることになるので無視することが先決だ。
ゆっくりと見せつけるように用意された部屋まで歩く。こちらを囲むように歩く聖騎士たちのおかげで、誰も寄って来れない。話しかけもできなくて、歯がゆい顔を浮かべる。
そうそう、その顔が見たかったのだ。笑みを浮かべて可哀想な悲壮感たっぷりな顔をやる。こんな場所に来たくなかったわ、という表情。
もちろん、来たくて来たくて内心は小躍りしている。こうやって、誰を捨てたのか見せてあげている。心優しい采配。
部屋に着くと廊下に並ぶ侍女たち。いらないと言ったのに余計な真似ばかりするなと、無の境地。
ペコラは言うなれば家族からも殺されたけれど、国が死亡届を受理したことにより、国からも殺されたというのに。王や民たちはそれをこれからじわじわと知っていくのかな?
「王が来ているぞ」
「王?勿論……面会謝絶」
アルクレイが知らせてくる。誰が来たとか、誰がなにかを話しているとわかるんだそうだ。
カメラを向こう側に設置して見てみると王は聖騎士たちに止められていた。
「どうか!どうか!聖女様と話をさせてもらえまいか!?」
必死すぎる。懇願に聖騎士たちはピシャリとお断りしていた。ペコラはその間に部屋を作り替える。模様替えどころかリフォームの域だ。
「頼む!ほんの少しだけでいい!聞きたいことがあってっ」
「直答は許されておりません」
「お引き取りを」
「聖女様は依頼を受けてきました」
「依頼以外のことは全て取り払うようにと、条件に組み込まれております」
「ぐっ!!そ、それはっ。わかっておる!だがっ」
「「お引き取りを」」
「……失礼を、した。聖女様に騒がせたことを詫びておいてほしい」
王はそれがとっかかりになるかも知れないと、口にするがペコラの護衛たちは首を振る。
「聖女様の御身を守ることだけが我々の仕事。聖女様への言伝は許されておりませんので」
「な、そんな……私は騒ぎを起こした迷惑をかけた王と、思われ続けるということか?」
「お引き取りを」
「しゃ、謝罪だけでも」
王が騎士たちに目だけで、帰れと言われるのをカメラ越しに見る。あっさりというわけでもない。
何度もこちらへの扉を見て拳を強く握る姿にフフッと、吐息が漏れる。
「王も嫌いか」
アルクレイが問いかけてくるけれど、愚問である。ペコラはこの世界丸ごと大嫌いなのだから。
瘴気を消しに行こうと部屋のバルコニーへ出る。今から瘴気を消すということをアピールしないとね。
「派手なデモンストレーションで」
何の意味もないけれど、強大な魔法陣をあちらこちらに浮かべる。王も今ごろ、廊下の窓から見ていることだろう。
部屋にいる時よりも目にしているから嘘とも言えなくなるので都合がいい。
魔法陣はキラキラと光り、瘴気のある方向へ向かうと空へ浮かび光と柱となって、目に痛いほどの熱量を放出。勿論、あれは瘴気に見えて瘴気ではないので、光で皆の目が見えなくなった間に瘴気っぽいものを消し去る。
ただ、かけていた魔法を解除しただけだけどね。




