04プリンアラモード馬車でゆくはマッチポンプ瘴気を消しに行くショー
手なんか抜かない。スキルや魔法をちょっと解除すれば済む話なのだから。
だからこそ、行き甲斐があるというもの。クスクスっと笑う。
「行くよ。私が行ってこそ、という見どころのある事態になるのだから」
美しく笑うペコラに王は見惚れたけれど、ペコラからするとどうでもいいので立ち上がる。ここからが本番だ。
「少し準備をしていくから、手紙で派遣すると書いておいて。大丈夫。瘴気はちゃあんと、消すから」
アルクレイも肩に乗って、ウンウンと頷く。なにをするのかわかっているからこそ、阿吽の呼吸。
それにしても、役立たずの女が様付けされるなんて出世したものだ。
「さて、どんな楽しいショーをしようかな?」
まあ、考えなくても既にシナリオはできているから殆ど終わっているけどね。
というわけで、祖国に帰ることになった。どういう姿にしようかと考えたとき、透けるようなオートクチュール。真っ白なヴェールを模した頭の被り物。
宝石には幻と言われているスターチスレインボーを施している。
見る角度によって光り方や色がそれぞれ違う。上半身から下までラインがわかるようなシルク。シルクはこの世界にないのでペコラの唯一無二の生地。
この生地はいくつでも出せるので好きなだけ超高級シルクで仕立てられる。見るもの全てを魅了する煌びやかさだ。
ペコラはアルクレイにこの服はどうかなということを聞き、どの服を着ようかなどと気になってくるりと回る。
さらり、ふんわりとシフォンの膨らみが手首から見える。これぞ聖女。
「綺麗かな?」
「ああ。似合ってる」
「こっち、は?」
くるり、とステップを踏む。
「赤いな。こっちはいつもと似ている。聖女と分かりやすく相手に見せつけられるのは白だ」
「やっぱりそっかぁ。じゃあ白色で」
歌うように、ふんふんふんふんと鼻息を鳴らす。機嫌が良いことにアルクレイも嬉しそうにしていた。彼はペコラが今まで苦労していたからと、甘やかしてくる。
「どんな登場の仕方にする?派手なもの?静粛な感じ?悪女かな?」
「相手にどう見られたいかによる」
「可哀想に見せたい。可哀想、悲劇の聖女。偽物に長年虐められて、森に捨てられて親にも世間にも信じてもらえなかった……哀れな子」
「今のお前の見方だな。可哀想だから今も鏡に向かって、もう誰もあなたを虐めたりなんかしないと、言ってあげているんだよな」
「当たり前でしょ。この子は長年なにもしてないのに森に捨てられたんだよ」
だからこそ、祖国に凱旋するときは哀れな子どもになるのだ。あなたたちに裏切られたんですよ?と。
なんていうわかりやすい提示だろうか。自分で考えておいてなんだけど最高過ぎて惚れ惚れする。
そうして皆の目の前で奇跡とやらを次々起こしてあげれば……双子の片割れとアホ両親はどんな反応をするか、どんな顔をするのか。すごくすごく楽しみで仕方ない。
彼らは奇跡を見たあとはどんな言い訳をするのだろうか、違うとでもいうのかな?
それは道理が通らない。なんせ、聖女本人が睡眠薬を飲まされて捨てられたと証言して世界に広めるのだから、非難は免れない。面白いことまで言いそうな予感はある。
今も変わらず、監視カメラ映像であちらのことを娯楽のために見ているけれど、聖女と証明できなかったことにより引き籠っちゃってるみたい。
両親は頑張ればできるようになるとドア越しに行っているけれど、どんなに力んでも出てこないものは出てこない。
それを本人が、一番理解しているから布団の中で丸まってる。
王からの監視もあるようなので、奇跡どころか親に甘やかされ、親も甘やかした結末だと思われるだろうし。もう直ぐペコラがそっちに行く。
大々的に世間も、周りも親も間違えたと認めざるを得ない。アルクレイもそのような展開になることを予期しているのか「派手にやろう」と背中を押してくる。
長年カジュアルゲームをしていたから、こちらのことを理解してくれているのがありがたいかな。手っ取り早いし話が早いとやり易いし。
そんなこんなで、服装を決めると今いる国からの派遣なので、聖騎士と呼ばれる聖女を護衛及び身分証明のためのお供が付けられる。
「よ、よろしくお願いします」
「よろしく」
自分がこの世で最強クラスとはいえ、追放、廃棄された覚えもあるしと厚意を受け取ることにした。ペコラ的には身分証明代わりだ。
派手に、優雅に可哀想に魅せる。必ずやってやろう。どこに身を置けばいいのかと、取り敢えず滞在先を聞いてみると王城だと言う。
「王城……部屋を改築すればいっかな」
聖女は王より上の立場になることも多々あるので、下手に押し通されたりはしないと言うし、させるつもりもない。
部屋に滞在する時も人と会うことはしなくていい、ときっちり条件を詰めていく。
会食もしない、挨拶も必要ない。ただし──。
たった一つだけ、いいよと書き連ねてそれをアルクレイに見せてみるとお前の気が済むようにしろ、と言う。
もうちょっと驚いたりしてくれないか。お互い軽口を叩き合いながら、他国へ移る。移動方法はド派手にデカい乗り物にした。
プリンアラモードの形を模した馬車だ。なぜプリンなのかというと、形がなんとなくそれっぽい。
「な、なんだこれはっ?」
馬車にする場合、三角形で見た目が豪華。ということに絞ったら座りがよい。聖騎士たちも、他の聖女らも国の王もパッカン!と口を大きく開けた。
「おお、きい」
お菓子のパフェ系統を木にして育てて、気分で食べているから思いついた。本物ではない。ベタベタになる。
「え、なんなの、これ?」
けれど、モチっとしているから触るのはおすすめ。試しに聖女らに触っても構わないと前置きさせて、唖然とする一人の指先を誘導して触らせた。
「なななな、もっちりしてます!く、クセになりそうですよ」
新人らしき若い子で、軽快に伝える。美味しそうな見た目も相まって女子、女性たちに大好評。男の人たちも触りたそうにしていたので触ってもいいよと足す。
「ふわっともっちりしてる!」
「柔らかい」
「ぷにっとしている!すごいわ!」
皆もわらわらと、プリンアラモード馬車に集まってもちもちと触る。さらっとこの国の王もガッツリ触っているところ、嫌いじゃない。
「これに乗るのですか?」
彼らは初めて見たものを見上げて、ワッとなり騒然とする。規格外だから。
「うん」
頷く。ペコラは中に入ると動き出す。操る存在はいらない。自動車だから。
馬車に見えるけれど見た目だけだ。静かに音も立てず移動する乗り物。これを見たあちらの国は度肝を抜くことだろう。
「今から向かう」
いい気分だと笑う。カタカタとなることはなく、揺れることもない快適な旅。聖騎士たちも順調に着いてきていることは確認済み。
「まずはあちらの王と話すの?却下。会談はなしと言ったのに。王と話すなんて会談なのに、屁理屈捏ねて」
「向こう側からしたら当たり前だから、話し合いというか、雑談のようなものなのだろうな」
話はしないと言ってあるのに、何かにつけて。メイドも侍女もお付きも必要ない、としっかり送ったので用意されていても使用することはない。
なんせ、自分で部屋を改造して使うのだから。コーヒーなんてドリップマシーンがあるし、ご飯も自分で作れる。




