03本物の聖女を見殺しにして自国から出してしまったから全てが始まり全てが終わる
ペコラの親たちが王に詰め寄られている時、ほのぼのと木を見上げて満足そうに見上げていた。
カジュアルゲームの中にはミニゲームや農業といった要素もあり、お店経営もあったのだがそれを現実でも始めてみたのだ。
木に実るのはツヤツヤなパフェ。
「凄いな」
アルクレイもぼんやりと見ている。この世界に詳しいのかと思いきや、この世界に来るまではただのシステムだったので、台本を読まされているだけの存在。なので、この世界の詳しいことは彼にもわからないとのこと。
しかし、携帯からペコラの人生を動けない状態で俯瞰して見ていたので色々、全て知っているらしい。
知られていても正直役に立たないし、立たなかったから立たなかったで、それがどうした?という回答になるんだけどね。
見てましたよ、そうなんですね。これが普通。可哀想ですね、なんて言おうものならぶっ飛ばしてたけど、復讐したくなるのは当然だと後押ししてくれた。
当然復讐に走る気満々だしね。となるわけで、王家は双子の片割れに当然事実確認を兼ねて呼び出したという経緯。そこでノコノコやってきた。
普通は焦って体調不良を言うかと思いきや、いつもよりも期待に満ちた瞳でキラキラさせながらやってくる。どういう神経をしてるんだと言わざるを得ない。
もっと、何か言われて聖女の力を見せてくれと言われたらどうするのだとか、思うべきだし。
バレたら死か、制裁か、監禁か。
少なくとも無罪放免にはならないと思う。なぜか、それは……。
「本物の聖女を見殺しにして、自国から出してしまったから」
感慨深くなって、ゆっくり思い出すのは、家族たちの三人だけの団欒の風景。あそこに自分の居場所は一ミリもなかったな、と笑う。クスクス、と思い出し笑い。
経緯について知っているのはスキルと魔法のおかげ。現在進行で映像が見られるのだ。
今見ているのは数日後のことだが、森に捨てられてスキルを確認したりした時に、監視カメラのような能力があったので。都合がいいと実家に向けて放ったのだ。
思った通り、程よくいい展開になっており映画のように見られる。映像もスッキリしていて、そこにいるかのように鮮明に映し出している。ここに、コーラやジュースを置いて鑑賞を始めた。
映像の中での双子の残りは、王の問いかけに汗をダラダラ流して親もまともに助けにならないと知るとぐちぐちと言い訳、できないなどと言う。そんなことは、王の前では無意味だ。
段々、王も含めた偉い方々の視線が疑心に染まっていく。こいつ、嘘ついてるな?と。正解正解、大正解。王が偽物の聖女に疑惑を向ける中で国でとんでもないことが、発生しつつあった。
「瘴気です」
監視することで、三人の家族を家に帰した王に差し出された報告書には、瘴気発生のウマが記されていた。それに対して王は頭をガッと大仰に抱える。
これも全て監視カメラの魔法でサラッとこちらから見ていた。ぽりぽりした、美味しいお菓子を食べながら。隣にはアルクレイもいて、パフェを食べている。適当に、そこら辺から摘んで来たのだろう。
「瘴気?」
「各地から報告され始めております」
「聖女を……あの聖女は本物なのか?」
王は苦悩に満ちた目で側近に問いかける。彼に問われた男は、スウッと目を逸らしてクビを振る。本物の可能性はかなり低い。王城全体が既に判断していた。
今の所聖女の能力を何一つ見せていない。唯一の点として、聖女の両親が昨日は咲いてなかった花が今朝咲いた!と嬉々として監視役の相手に報告したとは、聞いた。
それは単に、花は咲くものだから咲いた日がその日だっただけだ。そんなもの、赤ん坊にだって咲かせられる。咲いた日に咲いたからと言われて聖女の奇跡だと喜んでいるのはこの世であの両親のみ。
聖女とて顔面を青くしていたらしい。流石に花が咲いたことで聖女と認められることはないと、理解しているのだろう。問題はそこではなく、あの家族が三人ではなく少し前まで四人だったこと。
調査をした結果、あの家は双子のいる家として近隣では有名。最近は見ないと近所の者達はいっていたが、最近どころか、かなり時間が経過していたのだ。
捜索願いも出さずに家出をしたと言い張っている。しかし、あの家を起点にして噂などを追うと、聖女が自分の姉妹に意地悪をされていると仄めかしたという。
それを見たものはいなく、声も聞こえなかったので今思うと不審な点があると言うものもいたほどだ。
現に双子のいなくなった方の婚約者だった男の方に聞きにいくと怪しさしかない証言が取れる。
『あいつは自分の身内が聖女と知り、嫉妬して虐めていました』
とはっきり言ったが、やはり虚偽としか言えない。
婚約を白紙にして、さっさと聖女ではない方の双子の子の名前だけを売った事実もある。双子で聖女の可能性アリという価値が欲しい家が、名前だけを買った。
そこに関して、今後犯罪行為の疑いが浮かび上がり、さらに聖女というのがあり得ないことに頭痛を感じる王。
今更ながら行方も追っているが、わかっているのは執事を締めて吐き出させた証言。森に捨てるように指示があったとか。
なんと、酷い。このことを知る面々の脳裏には、そればかりが浮かぶ。どんな気持ちで捨てられたのか考えただけでも胸が痛む。
他人の己達ですらそう思うのに、実の親が片割れの子どもの言葉を鵜呑みにして捨てるなど、正気ではないと判断を下すには十分だ。
王は疲れた顔で隣国の王、聖女覚醒について教えてきた王へわかっていることを手紙にして、送る。
こんな、大スキャンダルなことを送るのは国にとって恥でしかないが、瘴気発生が確認されたのであれば聖女の派遣を願いでなければならない。もしかしたら、断られるかもしれないと末恐ろしくなる。
「うーん、アルクレイはどう思う?私がこれに応募するとかどう?」
「お前がやったことなら、消すのも容易い。他の聖女の時間を浪費するよりは、やった方がいいとは思うぞ」
ペコラは聞いておいてなんだが、アルクレイに笑いかけた。
「瘴気って、瘴気に見えて別のものだから、聖女にも骨が折れるし。ここは一つやろっかなぁ」
ペコラが全て仕組んだことだと誰一人知ることはない。携帯から出てきた案内人は知っていることだが、案内人がペコラを裏切る可能性はないことも知っている。
だからこそ、心置きなく世界ごと引っ掻き回せるのだ。にんまりと笑い、飲み物をごくりと飲む。
聖女と聖女じゃない双子。ではない方、の意味がここでは反転してしまっている。聖女たる己はここでのんびり実家と祖国がじわじわと弱っていく様を見物するだけ。
助けはない。やがて、瘴気のことでの相談と今回の経緯をペコラの住む国の方の王も、あらかた調べて把握したらしい。ペコラへ手紙と本人が現れてこうこう、こうなんだなと確認を兼ねて言ってくる。
「概ね合ってる」
「なるほど。瘴気のことは、そちらが解消してもいいと言うのは本音か?」
この国の王は、戸惑った顔つきで言う。ペコラが瘴気を発生させたと知らないから、あの国を助けにいく真意がわからない、とでも言いたいのだろうな。
その心配は不要だ。なんせ、己はもう既に報復を始めたから。これで聖女として登場すれば向こうは……フフ!
思わず笑みが浮かぶ。
「ペコラ様?」
おっと、まだ王の前だった。顔を引き締めて大丈夫、なんとかするから、と言い含めておく。




