02婚約破棄、婚姻、離婚歴のち廃棄より覚醒。よし世界を壊そう
子どもを勝手に知らない間に婚姻届の名前として貸し出す倫理観って、改めて思うとわけがわからない。
別に、貴族の家だったわけではないが貴族の称号を聖女ならば与えられる予定はしているとか、聞いたことはあったけど。
結局、蚊帳の外の己には全く関係なかった、ということになる。まあ、どうでもいいことか。関係ないし。自分からしたらバツイチだろうとなんだろうと気にしない。住んでないし会ったこともないから。
隣国にサクサク向かうことにした。その際、乗り物として馬車に見える機械仕掛けの馬車を出したので、速度は自動車並みを出せるものにする。
中に入るとナビを起動して、アイテム欄にある携帯を取り出す。これこれ、現代人からしたらこれがあればいいのだ。これ以外ある必要はないというほどの代物だ。
そういえば、カジュアルゲームには聖獣とかいたけどどこで油を売っているんだろう。携帯のカジュアルゲームのアプリアイコンに触れる。この画面はいつものもの。
他にもタプタプと触ると、いろいろ気になる項目がある。カンストしているから流れ作業でしていたけれど、現実世界に関係してくれるのならば話は違ってくるわけだし。
「この世界を……壊す?」
にんまりと赤いリップが上向きになる。しかし、それを止める声が聞こえた。
携帯から声が聞こえてみればブルリと震えて画面から光が飛び出して、案内役としてたまに出てくる進行役キャラクターが現れた。
「待ってくれ」
「……誰にものを言ってるの」
「!……待って、ください」
「ふーん、ま、いいや。で、なに?」
例え、案内役でもなんの制止力にもならない。こちらのこの悲劇を無くせなかったくせに、今更なにをしに来たかと思えば。
呆れ果てるしかない。もっと早くどうにかしてくれれば、まだ辞めてあげられたのにね。クスッと笑う。
「この世界を滅ぼすのだけは」
「んー?なんで?」
「なんで、か……他の世界、お前の世界にも影響する」
案内人のビジュアルは翼のあるウサギだ。
「ああ、次元の狭間とかの理論か」
「知ってるのか?」
ウサギ、案内人のアルクレイに関してはこちらのことを知っていて、ペコラも同じくらい向こうのことを知っている。プロフィールなんてやり込んだ自分の頭の中にある。彼は可愛い見た目だけど思考は人間に近いと思う。
そんな彼が辞めて欲しいと懇願するのをあえて無視して、隣国へ向かうことを決めた。カタカタとならない乗り心地にココアを注文すると、出てくる飲み物。
アイテムボックスにレシピがあり、素材さえあれば簡単に作れるのだ。
そうして、隣国へ行き、隣国の聖女たちと無理矢理護衛やらなんやらを突破した後に、この人は聖女と認める発言をしたことにより煩わしい待ち時間を短縮できた。
そこからは王と話すことになったのだが、たかだか異世界の一国の王に対して価値をまだ出していないので、話し合いなんてしないと突っぱねた。
住むなと言われるのならば、天空にでも土地を作ればいいのだ。闇雲に突っぱねたのではなく、やりたいことが目白押しだったし、単に聖女達の能力を確認したかっただけ。王は自らペコラの建てた荘厳な館に現れた。
最初は館に目を奪われていたが、建てたことをすでに見張りとかに聞いていたのか、そこからは顔をキリッとさせて切り替える。スタスタと入ると自動で扉は開く。
護衛は単に多数の足音に汚されたくないからと止まるように告げて、王だけくるように言い伝えた。
何かいいたそうにしていたが、威圧を与えたらなにも動く真似をしなくなった。全く、何様なのかとやれやれと言いたくなる。
「なんですか?短めに要件言ってね」
「……なぜ、今まで聖女と隠していたのか聞きたくてと思いまして」
飽き飽きしそうな、退屈な質問にペディキュアを塗り終わると靴を履く。
王が先ぶれとやらを出したが受け取らなかったので、こうしてこちらがなにをしていても、向こうが押しかけてきた体なのでペコラは好きに過ごすのみ。
「隠していたっていうより、覚醒した理由が捨てられたから」
「っな」
王は絶句した。ニコリと笑ってことの経緯を教える。原因は隣国だってね。これで、隣国はツーアウトということになり、徐々にスリーアウトで終わる。
「それは、本当でしょうか」
「うん。見たいのなら、みればいい」
追い出された時、森に置き去り、その前の冷遇映像をかなり簡潔にアニメーション化したものを渡す。
そこからは展開が早かった。ペコラを捨てた国がじわりと制裁を受け出すと、原因を探りペコラの国の王家が問いかけると聖女と噂されるところから聖女覚醒があったと報告される。
制裁の理由を聞いたことをすっかり忘れた故郷の王は、慌てて調べて喜びのままにペコラの生家を呼び出して覚醒したのかと聞くが、覚醒した可能性はある、という双子の側の嘘を鵜呑みにしたことを告げてる。当然ながら王は喜ぶ。
「本当か!なんの、奇跡だ?」
「はっ」
双子の父と母、ペコラの両親である二人は同じく隣に並んでいた双子の最後の一人を見る。
「おお!そなたが!?隣国より聖女覚醒が認められたと聞いている!隣国は聖女のことについてこの国の誰よりも詳しいので、事実なのだろう。さ、見せてくれ!」
「っえ」
双子はきょとんとした。王城に呼ばれるまでは、もしかしたら聖女だから王子と婚約してくれと言われるのかしら?とたった今まで夢想していた。それが、急に覚醒したのだからやれとは?
「あの、どういうことですか?私には、まだ発現してませんが。確かに私はそのような兆候がありますけど」
彼女のずるいところは、決して聖女である、聖女の力を使える、聖女だろうという揚げ足を取られたりされないようにするところ。
そうして、うまく生きてきたがここにきて、破綻の兆しが現れて頭が真白になる。
キョロキョロと無意識に周りを見てから両親を見た。助けを求めていうわけではないが、今日は本調子ではないと言って欲しくて。
「ほら、ついにあなたの力を見せる時がやってきたわよ」
「偽物と思われると嫌だから、ここぞというときに出したいのがお前の望みだったものな!」
双子の両親はある意味、純粋で感化されやすい。良くも悪くも。良い部分は双子の片方の言葉を信じて同じ気持ちでいてくれるところ。悪いところは。
「あ……きょ、今日は……」
ペコラを最も簡単に捨てたわけではない。ずっと長い時間をかけて洗脳するように、あの子がいたらいじめられて辛い、聖女だから嫉妬されているのかもと言っていたから。
だから、両親だって本当は嫌だったが、犯罪者予備軍なのだけれど兵士に突き出すよりも、自分たちで裁こうという善意で双子の片割れを森に捨てた。
親の愛と本気で思い、遂行したのだ。それは、例えるのならば軍人の上の命令には絶対的な意味を持っているかのように。自分のやることには意味があると思ってしまったのだ。
ペコラが聞いていたら鼻で笑い、子どもを意見も調査もせずに一方的に捨てる行為は、ただの育児放棄だと冷たく吐き捨てただろう。
そんなことはつゆ知らず、双子が完全に生き絶えていることを前提に聖女と吹聴していた少女は震える。両親や周りは騙せても、自国の王に嘘を突き通せる気概まではない。




