41他国の聖女へ仕返しをしたけれど同じクラスになってもアピールしてきて最悪なスクールライフ
餌を待つ魚を見たことがあるので、声が出ずあっけに取られていることくらいは理解できた。こんなに責められ続けたのは初めてってところか。
いや、あのわがままな性格な聖女となれば言いたい放題言ってそうなので、驚いているところは違うところなのかも。
「皇帝からも呆れた言葉をもらっております」
「……皇帝からも?え、ど、どういった?」
「野放しにするのなら囲い込むなと」
「ぐっ……!」
隙がない正論にぐうの音も出ない。出てるけど。それよりも、本当にどうしてくれよう、あの聖女。
いくら聖女でも普通は限界がある。いつ、妖精の愛子の妖精が力を貸さなくなるかもしれないとか、考えないのか?
「私も言い含められないのなら、この国から帰ってから余すことなく伝えます。この国の王は聖女を持て余し、国民に負担を強いると」
ここに来ている他の聖女も堂々と意見する。力の強い聖女を言い聞かせられないというのとは、何をするかわからない存在。いつ厄災に転じるか分かったもんじゃない。
「待って欲しい、伝えられるのは困る」
「では、対処をしてください」
「あ、は、はいっ。対処します。しますのでどうか」
ちなみにこのやり取りも映像として残していて、どしどし皇帝へ送っている。なんなら、今現在の映像として生中継しているので報告を待つように頼んでいるところも、情けなさが溢れる光景はばっちり見られていたりする。
ペコラは予感がしている。あの聖女から、妖精の加護とやらをなくすことになりそうだなと。初手から暴走というか好き放題しすぎている。主に自分に向かってきているところがマイナス点。
その後、頻度は減ったけど、部屋の付近を聖女や聖女の担当者がウロウロすることがあった。勿論聖騎士たちが睨みを利かせているので退散するけど、ツィツィは己を至高と勘違いしているからか聖騎士たちに話しかける。
無視しておけとペコラは指示しており、ペコラの意向を盾に断っている。利用されてもいいし、利用して追い払いやすくするためなのでどんどん聖女の特権を、全面に押し出しておいてほしい。こうでもしないと粘るのだ。
「なんで出て来ないの?実はこっそり出て行っているのかしら?」
ツィツィとツィツィの周りがこそこそ言っているのが聞こえて、目を細めた。
「出て行かれている様子はありません」
なにを考えているのだ、あの聖女。他国の聖女のところに押しかけるだけではなく、聖女の護衛を自分の護衛にしたがるなんて正気とは思えない。なんていったって、あちらにも当然聖女を守る人はいる。
それなのに目の前で護衛に転身しないかと。やるわけないでしょ、バカではないのかと悪態をついた。ペコラはわがままなぞ言わない、部屋に居続けるインドア派だ。護衛視点で言うと部屋にい続けられる方が絶対にいいに決まっている。
命令とはいえ人の寝る場所がある部屋を見張るなんて気持ち悪い。最低。しかも見張っている人は男だ。せめてそこは女性にしておいてほしい。これっぽっちも心情は良くならないけど!
ますますゴミ具合に拍車がかかってきている。見張らせるなんて自分がされたらどう思うか考えてから、やらせればいいのに。嫌がらせなのか?
「こうなったら、私の方から同じ目に合わせていこう」
ツィツィが起きたら、ぎょろぎょろ動く目が己を見ているという演出を行うことにした。むかついてしかたないのでよき発散になるだろう。
「きゃああああ!!」
ここまでは聞こえないけど王城が騒ぎになった。自分含めた聖女たちは誰のせいか暗黙の了解だったので素知らぬ顔をして、何も言われていなかったことを盾に何も知らない顔で過ごしていた。
「きゃあああ!!またよ!誰か来て!」
時間をずらして起こる事態に周りはてんやわんやなのである。怒らせることをしてしまったと思っていないので犯人なんて見つからない。恨まれているとは思っていない。そこらへんは度し難いよ。
「いやぁ!またっ、またよ!早く来てよ!」
トイレ中にも起こった。しかし、誰かが来る頃には気配もカケラもないので、狂言と思われ始めている。
他国から来た聖女たちは、静かに紅茶を飲む。ペコラからの差し入れだ。お城の中なのに驚くほど、温度差のある者たちに気付く聡い存在はいない。
聖女たちを見られれば気づけたかもしれないが、聖騎士がいる扉の中を覗けることはないので、おっとりとした空気で過ごす不自然な面々が知れることはない。
金色に縁取られたカップを手に聖女たちはふふふ、と笑う。ここだけ世界観が平和である。ペコラも何食わぬ顔でオレンジ・ペコを飲む。この紅茶は高級茶葉でお高いもの。アイテム産だ。
ミルクティーに使われるキャンディーと呼ばれる品種も好きだ。今度栽培してみよう。
「いよいよ明日から学園ですね」
「まだこれからなんだ。もう色々あったから帰ってもいい気がしてきた」
アルクレイも、確かに色々ありすぎたなと笑う。笑いごとじゃない。ツィツィとは同じクラスなのだ。洒落にならない。絶対に絡まれるし、不可避な出会いが精神をガリガリ削ってくるしで。
「ろくなことしなさそう」
「数週間後に無事であるといいな……あっちが」
心配するのなら自分を先にしてほしい。けれど、言いたいことは盛大にわかる。フッと笑って学園もちょっとは楽しめたらいいなと挑んだ。
「で、それが今」
「どうした」
「いや、ちょっと過去を回想してた。結局学園で絡まれるしと思ったら少し違って、周りも気まずさに謝ってきてるなぁって。考えて見たらこうなるんだろうなぁ」
ツィツィが同じクラスになってやり始めたのは「自分はすごい聖女なのよ」をペコラに見せつけることだった。話しかけられ続けたりを想像したが、自分大好きならば見せたがるって結果になるのか?
同じクラスに同列の聖女がいなかったから、人間を入れたあとの科学変化を知らなかったみたい。いつもの聖女ではない人相手なら敬えと言ったりと、いつものことをしていただろうに。
しかし、ここにいるのは他国の聖女。年下であり、凄さを見せつけて自分のそばにいたがるようにどうやらしたいっぽい。あのドヤ顔は面白いけど、それだけ。
自分の周りには立派な聖女がたくさんいるので、質の悪い者を尊敬するほど経験が少なくないので。ちりほども心は動かない。無視しておく。
「な」
何度目かの優越感のマウントに響かないことが嫌らしい。どうでもいい。はやく終わらないかなと思ってる。周りの生徒が謝るのは見下していることを看破しているからだ。




