29学園にある菓子がなくなったのなら作れと命令してください。あの味が忘れられません。早くしてください父上。王命を出せば
処刑や謹慎、幽閉に島流しなど多種多様な意見がかなり出る。元々人気はない人だからこそ、汚点として片付けたい気配をひしひしと感じ取れた。
「やったことの大きさを思えば、国家転覆罪です」
二番目の役職を得ている王の相談役が、暗い顔で告げる。王も拒否したいがそうなるのも仕方ないと頷く。
「兄上を連れてきた方がよいのでは?聞き取りをまだしていません。聴取を行うべきです」
「そうです。聞くのです。なぜ、あんなことを言ったのかを」
王妃が堪らずハンカチで口元を煽って、口からか細く言い募る。周りも確かになぜあんな真似をしたのか、愚かな真似をしたのかを聞くことをやろうと纏まる。
「連れてきてくれ」
「ハッ」
王は兵士に命令する。兵士はキビキビとして去る。室内は、ジメついた空気が過った。
「女生徒とはどうなさいます?」
「当主と夫人を呼ぶ。王子についていた学友たちの親たちも呼べ」
ここへ来ていない人たちも召喚を唱えた。呼ばなければ刑も情報も得られないままだ。何があったか急いで文官に文章を作らせた。
早くやらないと、遅いと帝国をもっと怒らせるのでは無いか、と言う焦り。文官たちは急いで走り回って今回のことを文字にする。
「この映像はいつまで流れるのですか?止まらないのですか?」
映像は今も流れており、王子たちがお菓子の家を見つけたところから始まって、ループしていることが窺える。ペコラは何度も、ループさせるように設定したのでずっと流れる。
少しずつ映像を流す場所は少なくするが、王城の真ん中に映像をお城の大きさのままに巨大映像に集約させるつもり。
「プロジェクターマッピングみたいにやろうかな」
「空に映すのもいいぞ」
他国にもすぐに知れ渡る。黒歴史が拡散しやすいのは、異世界でも同じだろうし。
王たちは悩まし気に息を吐いた頃、王子が部屋に到着する。様子はやはり可笑しい。クッキーもクリームも食べ終わっているのに、手を舌で舐め続けているのだ。
異様な行動に問いただそうとした人たちの口を閉じさせるには、強烈な光景。王も王妃も。
「話せるのか?」
「話しかけても返事をしません」
「なぜ、あんなことをした?」
祖父の肩書きになる先王が、かろうじて口をなんとか開く。
「お菓子はまだ来ないのですか」
言葉は普通に出たが、出た言葉は全員を絶句させるには事足りた。何を言ってるのだ!?と怒る大臣、兄弟たち。
「兄上!あなたは!聖女様の作ったものを無断で許可なく壊したのですよ?どうしてくれるのです?」
「ああっ、どうしてくれる?答えろ!」
兄と弟たちが問いかける。
「はあ……菓子はまだあった。早く持ってきてくれ。おい、お前、持ってこい」
ペコラの知るプロフィールならば、今は作った菓子の中毒になっているはず。
「お断りします」
兵士は恨みのこもった声で答えた。お菓子の残骸を見た兵は聖女が楽し気に作る姿を見ていたので、それを壊した王子が悪びれないどころかさらに要求するなんて、という顔だ。
「はぁ?私は第二王子だぞ?兵士など取るに足らないものが王族に逆らうな」
「お前こそ、王の私を前に王族の特権を振りかざす!見苦しい!」
「口を酸っぱく言っていたが、お前には心底がっかりだ」
息子を叱る王。孫に失望の瞳を向ける先王。王妃と先王妃も化け物を見る目で息子、孫にあたる子を見ていた。
「何を言っているのかわかりません。私は王子です。王の息子です。兵士が私の言葉を無視して拒否しました。罰してください」
第二王子は相変わらず手をぺろりとさせながら、首を傾げる。それを見て、周りも一人残らずコイツは何をいっているんだ?とざわつく。可笑しな方向性が変化しているからだ。
「父上?学園にある菓子がなくなったのなら作れと命令してください。あの味が忘れられません。早くしてください父上。王命を出せば」
「もう嫌!黙りなさい!」
先代王妃が瞼を震わせて叫ぶ。叫んだのなんて初めてなんじゃないかな?
「お婆様?どうなされたのです」
どうなされた、と聞きたいのは第二王子以外。お前がそれを言うのかと皆目を剥く。ペコラはバッドステータスの効き目が強いと、強さに感嘆する。
「謹慎させる。まともに聞けないようだ」
「兄上、なぜ、聖女様のお菓子の家を食べたのですか?」
「食べたいから食べただけだ。あれは極上な味で……ああ!食べたい!食べたい!今すぐもってこいいい」
「ひ!」
「なんだ、様子が変だぞ?」
「美味しすぎたから?そんなバカな」
王子が謹慎するために、私室に行かされるのを見送ると次に側近の学友たちを連れてきたが、全員が同じ症状と状態で問いかけてもまともに聞き取れず。
どうなっているのだと皆は話し合うが、答えなど辿り着けるわけもなく堂々巡り。
「なにかの毒か?」
「いや、恍惚としていたぞ」
「毒ではなく、暴食の症状だ。弱るならともかく元気だ」
「だったら、なぜ話しもまともにできないんだ」
政治に精通はできていても、中毒に陥る子どもらの尋問は無理だろうから。ペコラはバナナ味のバームクーヘンを食べながら鑑賞を続けた。場面は変わり、ピンク髪の子どもが呼ばれる。扱いは階級が一番下なので、扱いはずっと雑だ。
「え……ひっ」
ピンクの髪の庶子。男爵が浮気してできた子どもだとかで、最近引き取られて学園に入学した問題児。王家の婚約を壊し始めているともっぱらの噂。噂ではないので事実だ。
正直今回の件も問題だが、王家がなぜ今回の婚約破棄しかけている件を無視しているのかが、気になる。
そして、彼女だけ今のみバッドステータスを取り上げている。反応がなくてつまらないので、なにをしたのかわからせるために正気に戻した。
彼らのように正気を失っていたら、いつまでも後悔も反省も危機意識もない。今後、残りのメンバーたちも取り上げよう。ことが終わったら元に戻すのもありかな?
いや、もう消して正気になって罰を受けさせる方がいいのかもね。そちらの方が見応えもあり、この国も刑を課しやすいだろうという優しさ。
「男爵令嬢。君は聖女様の菓子を食べた記憶はあるかね?」
今もこの部屋に流れる映像を見ながら、尋問官が彼女に問いかける。それにびくっと肩を揺らして黙り込む。




