28あなた方のご兄弟、ひいては王族がやったことなのですよ!?逆ギレですか?
婚約者の令嬢も元になるかもしれないが、止めなかったことを咎められるのか王家がなにかしらフォローするなりなんなり、やるかもしれない。
正直興味なんてないけど。企みに乗ったことはわかっているので、こちらからは何にもしない。
例え王族に言われたからと、聖女に助けを求めていれば、王家に逆らえず聖女を巻き込んだことを誠心誠意謝っていれば、説明くらいはやっておけば一人くらいは聖女が手を差し伸べる人が居たと思う。
全てに従い利用しようとした事実は消えないので、令嬢は巻き込まれながらも苦しい立場になるだろう。
ペコラに狙いを定めて使おうとしたことも、なかなかに腹黒いし。到底お人よしの集まりの女たちだって、嫌だと思った。
「お部屋にそれぞれまとめて入れてきました」
近衞のまとめ役と王族を補佐する地位にある男らが、暗い顔をして王たちへ報告する。菓子を取り上げようとすると酷く暴れると聞き、王妃は顔を手で覆う。
「一体何が起きているの?誰か説明して」
王妃らの親である先代の元王と元妃が部屋に来て、ハリのある声を凛と出す。二人の住む場所や部屋にもあちこち映像が現れたのでおちおち、部屋で過ごしてなど居られなかったのだと推測される。
「父上、母上っ」
王が不味いという顔を浮かべて、まだまだ貫禄と権威を持つ存在を見た。王妃は小さく会釈すると俯く。
「実は、ですね」
説明が行われて、先代夫妻は聖女のところへ行くと先ほどよりも音量の喪失していく声帯で、覚悟を決めた顔を浮かべる。悪化するのでやめてくれと周りが止める。
「昔は聖女など、少し力がある程度の乙女であった。今回の聖女はここまでできると言うのか?」
己の萎びた様子の父たちに頷き、肯定する人々。
「まだ全体像がわかりませぬが、聖女の中では一番強いかと」
ペコラの祖国での瘴気の一発解消など、他の情報を集めていたらしい報告書を読み解き、大臣は追記する。
「そんな力を持っている者の作ったものを、あんな風に壊してしまった」
皆が総合された内容を無言で聞き、項垂れる。
「謝らねば。せめて筆を取り手紙を送るしかあるまい」
「手紙もお断りすると、すでに言われております」
城で働く御用聞きの文官が述べた。空気は凍りつき、策は尽きたと皆が互いを見る。他の王子たちも加わり聖女たちと出会った時のやり取りを伝えると、さらに悪化していたことを知っていく。
それに集まる者たちは、顔を青色や白色に深く染めている。わなわなと彼らは震えるのを止められない。王子たちに、なんてことをしたのだと、王の傍にいる者たちが王子らを攻め立てた。
「ただでさえ激怒しているというのに!なぜっ、聖女たちに話しかけたのですか?映像は流されていて何をしたのか見ていましたよね?問うことをすることは、王のご子息とはいえ許されることではありません!」
「そ、それは……」
「私たちは、父上がいなかったので探していたら聖女の方々にたまたま会い、話しかけただけです。すでに怒っていました!」
まるで王子たちが発端のように言われて、罪を丸かぶりさせる意図のある尋問に眉をひそめて彼らに反論する第三王子。ペコラもそれはさすがにこじつけが過ぎると同意。
「あなた方のご兄弟、ひいては王族がやったことなのですよ!?逆ギレですか?」
「責任をとってもらわねばなるまい」
「この国は今後どうなる?」
「王族だけではない。貴族の子息、高位貴族の側近たちも共に食べていた」
「ピンクの髪の女子生徒は誰だ?」
お、遂に大臣らがピンク髪の子について、問い正し始めた。わくわくする。
「あれは男爵家の当主の娘だ。母親は庶民なので庶子だ」
「はぁ?貴族籍に入っているのか?」
「入っている。入学より少し前に入ったと子どもたちが話していた」
子持ちの貴族の者が同じ学園に通う子どもに、王子と親しい女の子について聞いていたのだろう。王子がただでさえ婚約者を蔑ろにしていることは、周りにとって知らない人なんていないのかも。
大人たちは知っていたのに止めなかったし、知らんふりをしていた感じか。腕を組み、アイテムボックスから取り出したバームクーヘンを食べる。
「バームクーヘンのバニラ味とチョコとバナナ、どれがいい」
アルクレイが三つを豪華に食べながら、問いかけてくる。
「抹茶かな」
選択肢にないけど、食べて美味しかった味を告げる。
「抹茶?あるのか?この皿の上に無いぞ?」
ウサギは足をトントンと鳴らして、抹茶をこの皿の上に出すのだと言葉にせずに言う。
「はいはい」
ドンと丸ごと渡した。
「わかってるじゃないか」
述べるとすぐにもぐもぐし始めた。美味しそうに食べるところがいい。見ていて気持ちいいから。続きの映像を見たら王子たちを責める人たちを、先王が厳しく止めた。
「やめなさい!」
揉めている場合じゃ無い!と叫ぶ。先王にも鋭い顔や恩のある年配の貴族たちが、何か言いたげにするものの、尊敬の眼差しを向ける。威厳もあるのでまだまだ支持されている証拠だ。
「すみません。先王陛下」
現在の王が頭を下げる。今日一日で頭を下げた回数は、過去最多だろうね。
アルクレイは食べ終えたらしくペコラの膝に頭を乗せて寝る準備をしている。もう飽き始めているみたい。
「寝る?」
「寝ない。食後の寛ぎをやるだけだ」
ウサギの寝方でボーっと映像を見ている。ペコラも吊られてうとうとし始めている。まだ夕方だが、色々あって精神的にも肉体的にも疲れた。
映像を見ると先王に導いてもらうしか無いと、周りの人たちは期待の眼差しで彼らを見遣る。頼りすぎもどうかと思うけどな?
「責任を取る取らないの話は、調査の後だ」
「そうだ。お詫びを!」
「手紙も受け取ってもらえないのに?」
手紙を受け取れないとなれば残るは言葉だが、帝国に詫びの文を送るのだろう。聖女らに届かないのなら、国として国にごめんなさいを言うことに考えは行く。成り行きだ。
それでも聖女たちは首を振るだろう。圧倒的に今回はこの国が悪手だから。彼らは歴代最高の力を持つ聖女を敵に回した時点で、運も尽きている。
「聖女に許してもらえそうにありません」
「それでも謝罪していることを見せることが大切だ」
先王や王も同じ意見らしいので、その方向性に固まる。
「第二王子はどうなされます」
第二王子の罰について今度は話し始めた。




