26王子たちや王は聖女らを使って第二王子に痛い目に合わせて世間からのバッシングをさせて力を削ごうとしていた
ちゃんと報酬を払うと約束して依頼を打診したりする。他の国は王よりも立場が上になる聖女に解決できないことを押し付けようと誘導することは少なくないのだ。だから、まとめ役は彼らと会わないように守っていた。
「白々しいとは、心外です」
王子は必死に否定するが、否定するのも織り込み済みだ。第一王子たちや王は聖女らを使って第二王子に痛い目に合わせて、世間からのバッシングをさせて力を削ごうとしていた。
その動きは副生徒会長のやり方でピンと来た。聖女を使ってどうこうしようなんて大胆な真似を高位貴族の令嬢とは言え、一人でやるわけがない。
リスクと国をかけた、ルーレットみたいに危険な賭けだ。あまりにも足元が呆気なくなくなる行為。
おそらく父親か、王の意向を受けたか使役され、思考誘導をされている。でなければ、この兄弟が仕組んだ可能性はあるし。
「あなたたちなの?あなた?それともあなた?誰が私たちを利用しようと言い出した?ねえ……」
「ひ」
「え、そ、んなこと」
「その発言に国をかけられる?」
冷たい声音が空間を満たす。
もう口から言葉が出てこない彼ら。これ以上言えば国がなくなるかもしれないと漸く理解し始めたのだ。遅いが。
さっきからうるさい、口を開くな、と言外に言っていたのに全くカケラも伝わらないから苦労した。誰が言葉を許したのかと、誰が口答えしていいと言ったのか?
彼らには初めから発言権なんてないのに、ペラペラペラペラと。言い訳や謝罪など、無責任な舵取りの結末に影響はなんら及ぼさない。
「国、かけられるんならしゃべっていいよ。今までみたいに、ペラペラベラベラ話せばいい。聖女に迷惑かけておいて、企んで。人のものを使って汚いもの、拭かせないでくれる?」
最年少なのに受けたことのない圧力に、ブルブルガタガタと震える王族たち。周りの役人たちも例に漏れず受けたので、冷気のある空気が漂う。
実際に結露が窓に張り付く。聖女や聖騎士たちには何も起こらないようにしている。
パキパキと音を立てて壁が凍り出す。周りにいる者たちは、寒さに息が白く出る。はあ、と息荒く床に崩れ落ちる者もいて、見てみると兵士だ。
「王が帰ってきたら氷の城になってて、驚くかな」
視線も凍りつくままに、城全てが時間をかけて体温が下がる。
「さ、むいっ」
「ゆ、お許し、をっ」
「あ、ひぃ!?」
「なにが、起こって」
このまま、自室にあてがわれた部屋へ戻ろうかと思案していると声をかけられる。
「ペコラ様」
一人の聖女だ。
「ペコラ様、私たちの分まで怒ってくださりありがとうございます」
「私も、嬉しいです」
他の聖女たちも目を伏せる。
「でも、ですね」
聖女たちが周りに集まり出して、ペコラを囲む。アルクレイの元にも聖騎士たちが集まり、王子との距離を段取りよく離す。
「アルクレイ様から離れてください」
「手遅れですが、今すぐお離しします。お体に触れますね」
不敬罪を言い渡してきた場合、アルクレイの後ろ脚がアバラにヒットしてヒビを入れているところだ。
けれど、彼らは揃ってぼんやりしているから問題なかった。
「ペコラ様。あなたはもう悪役にならなくてよいのです。あなたは悪役ではない、悪魔でもない」
「え」
アルクレイに前にかけられた言葉に似た言葉に驚く。思わずアルクレイに目をやったが、尻尾を揺らすだけ。
「一人の人間なのです。あなたは他のでもない、感情のある女の子なのです。私たちは誰も女の子のあなたを前にコソコソ隠れるつもりはありません」
「庇ってるつもりはないけど」
今回も正当な怒りからくる制裁。
「ええ。わかっております」
聖女たちはにこりと笑う。
「ペコラ様のように強くはありませんが、私たちは聖女です。せめて聖女の中に紛れてただの、生きる人間として過ごして欲しいと私たちは……願っておりますの」
二番目に若い聖女が言葉を継ぐ。言葉を聞いていると何故か、少しずつ沸騰した気持ちが平行線に戻っていく。うねり出していた髪の毛も、浮くのを止める。
それは自分で決めてそうなったのではなく、自然と魔力が沸騰するのを停止したのだ。不思議な感覚。
「……ペコラ」
「アルクレイ?」
アルクレイを見るといつもの大きさになっていた。ちょこんと肩に乗る。
「帰ったら、お菓子の家を振る舞い直すぞ」
「……うん」
ずっとずっと、この世界に生まれた時から仄暗い空気しか吸えなかった。
今は、そう……思えば苦しくない。かもしれない。
正しい空気なんて思い返せば知らないから気付かなかった。
「今度はビル並みの、デカいものを作るのはどうだ」
アルクレイが手足を伸ばして再現してくる長さに、想像を広げる。ビル。ビルなら一人一人のオフィスをテーマにした部屋を作れる。
なら、ドールハウスのように小さなものを作るのもいいかもしれない。次々と浮かぶアイデアに頷くと彼もよし、と受け止める。
聖女たちはペコラを真ん中にしてゆっくり囲むのをそのままに、部屋へ歩き出す。何かを言おうとした、この国の人たちを視線だけで聖女たちは黙らせる。これ以上、幼い子を傷つけてはいけないと。




