25こんなことになるなんて?こんなことになるとわかっていたくせに白々しいと聖女は突き付けた
もうもうと土煙を上げ猛スピードで学園に向かっている。
映像には画角で映ってないけれど、生徒たちは王子たちの場所がわかっているらしく、集まっているようだ。今からそこに、国で一番偉い人が行くから離れた方がいい。
「ふざけた国ですこと」
「事前調査はしたのではなかったの?」
「レクリエーションをする分には問題にされなかったのかも、しれませんわね」
聖女たちが不快げにこの国の不満をもらす。もう二度と来ることはないだろう。
第一も第三も聖女たちの姿くらいは見ようと思っていたのに、第二がやらかして権利を失うことになるので聖女らのことで、王子のことを跡形もなくボコボコにするかもしれない。
「どうしたのですか?あれはなんなのですか?」
「父上はどこにいる?」
おっと、一番目と三番目が聞きに来たが聖女たちの方を向く。
「近付くな」
聖騎士たちはしゃんと立って、王子たちを阻止する。
「な、なに、を」
「兄上が食べているあれはもしかして、ですが……聖女様の作られたものなのでは」
兄上ということは、今しがた発言した子が第三王子。
「な、なんだと!?あいつが食べているのは……は、あれ、は、もしかして!報告にあった、お菓子、のい、いえ?」
「不法侵入して、バリバリバリバリバリバリバリバリッ食べてるけどね」
バリバリを強調した。具体的に言うと汚い擬音語になる。お菓子の家の取っ手を食べて意味わからんとイラッとなった。家の概念壊して。
あんたたちのために建てたんじゃない。腕を組んで足踏みのようにタンタンタンとイラつきを見せつける。
アルクレイはなんと、ウサギの妙技である後ろ足をだんだんしていた。
「う、あ、そんなっ、そんなことがあっていいわけが」
ダーン、ダーンと足を踏む音が第一王子と第三王子の精神を追い込む。二人はダラダラと汗を流す。自分の兄弟が聖女にやってしまった。
謝ることで許されるときはすぎているので、頭を下げても意味があるのかと二人はオロオロする。
「申し訳ありません」
「ごめんなさい、ペコラ様っ」
どれだけ謝っても中継されている通り、菓子の家は元に戻らない。詫びの代わりの案がないので無理だ。ペコラも腹に据えかねている。
いくら王族でも監督されずのうのうと自由に闊歩できている時点で操作できていない。
そんな子どもをここまでわがままモンスターに育てたのは誰か?となるわけで、それはこの国と王と家族と国民と全てだ。
聖女のお菓子の家はこの国の兵が他の人たちにうっかり食べられないように守られていたはず。
なんで、顔パスされてる?
なんで、通らせた。
なんで、通れた?
全てに付合する言葉。どうせ不敬罪でぶん回したのだろう。我が名は第二王子であるぞ、この顔が見えないのか?と。言わなくても普段から言っていたのなら大差ないし、考えるまでもなし。
王は悪くないと庇う者たちがいるからもしれない。けれど、わがままを言うことくらい耳に入っていただろう。せめて聖女が来るまで耳にタコが生えるくらい、事前に言い聞かせるか自由に歩かせないくらいはできた。
他でもないこの国で一番の権力者だから。なのに、なぜ?
「第一と第三、あなたたちも現場に行ってきて。父親と並んで止めてきて」
「へ」
「あ、の、わたしたちの言うことは聞かないと思われます」
「甘やかしてるの?」
睨みつけると、アルクレイがガラリと空気を変えてみるみるうちに大きくなる。今までは片手ほどの大きさだったが、大型犬三匹ほどの大きさに変化していく。
「ひ、あ」
「な、うさ、ぎがっ、あ、すみまっ、あ、アルクレイ、さま、でしたよ、ね?すみ、ません。うちの、王家が、おわ、び、しますっ」
すごく黙る。いくら可愛いうさぎでも大きいウサギは怖いのだろう。でも、止めはしない。いくらでも威圧感を与えて欲しいのだから。
「詫び?」
首をぐりんと傾けて、真顔でずうっと目を見ていると本気でキレッキレに激怒している瞳を垣間見たのか、二人とも喉を鳴らして何度も首を縦に振る。
何度肯定しようと、彼らに払えるものはなさそうだ。自分が持つアイテムの方が、最高ランク。
食べ物も素材もなにもかも、ありとあらゆるものが。彼らにあれらの賠償を求めるために、金額をゆったり勿体つけて紙に書き込み、二人へ渡す。
「あ、拝見、させて、もらいます」
「あ、兄上、私にも見せてください……ぶ!!?」
とてもではないが、この国で払えるとは思えないけど。例えばクッキーに使われてる薄力粉。最高小麦ランクマックスのものを使っている。この時点でこの国の予算をズタボロにする。
あのお菓子の家はデカい。デカいのでクッキーも小麦の菓子もたくさんたくさん使われている。
その量を計算すると絶句するような金額になってしまう。おまけに王族が率先して家を荒らしている。もう逃れられないくらいの掛け算。
「慰謝料抜きの値段」
「っ!?」
「あ、あ、そ、ん……む、無理だ」
第三王子は第一王子より若いからすぐに声に出る。わかりやすいからいいけど?
「他にも、私たちがくつろいでいた部屋に入ろうとした違反も、まだ追及してない状態での失態」
「え、兄上が!?」
「そ、そのことはっ、ついさっき報告に。こちらに来ようとしたら、映像が……」
「この映像が、どこまで広がってるのか嫌でも知ることになるからな。そのことの対処で忙殺されるだろう」
アルクレイがのしのしとさらに一歩進み、口調を低くする。
「は、この映像はここだけではないのですか?」
呆然と立ち尽くす面々。ここには王子たちが意外にも働いている人がいて、聞いているから顔つきで青ざめているのが、わかりやすい。
「こんなことになるとわかっていたくせに、白々しい」
首を振って尚も知らんふりをしてきたツケを聖女らに押し付けようとしていたのは、なんとなく薄々感じ取っている。
帝国も別に清廉潔白ではないし、後ろ暗いことは国として間違ってないこともある。それが国を動かすことだから。でも、聖女を巻き込み問題を解決しようとはしていない。




