24え、お菓子の家に不法侵入者?ヘンゼルとグレーテルじゃあるまいし。食べてる!王子達勝手に私の作った作品を!王座から降りて今すぐ行け
聖女の世話を本来彼らがやらないといけなかったのではないのか?と気付く。流石に、女子生徒一人に聖女たちとの打ち合わせをさせるのは、過労並みの仕事量だ。
王の懐刀的な地位の人がやるべきで、まだ未成年一人でワンオペさせる行事じゃない。祖国の時でも国が一丸となっていたのだ。
「なんで会いたいんだろうね?」
「ピンクが会いたいと言ったんじゃないか」
「言いそう。私も実は聖女なんですとか言いそう。聖女は聖女がわかることを知らなそうだし」
あの子になんの力が使えるんだろうと、目を細めてプロフィールを確認する。なるほど、治癒か。薄い能力で切り傷を治すくらいだ。副生徒会長も使えるけど、功績を掠め取っていると書いてある。
そんなのどうやって掠め取れるんだろうと不思議。掠め取られるとわかっているんだから、治すのやめればいいのに。後出しジャンケンみたいなもんだし。
「殿下、そういえば」
まだコソコソ言いながら去っていく、思春期拗らせ子どもたち。これ以上得る者はなさそうなので、追うのは止める。
「えいっ」
「力が必要なのねっ、えい!ていっ」
パフェを皆食べ終わり彼女たちにモグラ叩きゲームを提供して、一時間も経たない間に警戒音が鳴り響き、アルクレイたちは顔を見合わせる。
「え、お菓子の家に不法侵入者?ヘンゼルとグレーテルじゃあるまいし」
確かにお菓子の家は、実際の原寸大の二分の一なので人は余裕で入れるけれど、本当に入る輩がいるわけがないのに。
試しに、お菓子の家に事前に仕込んでおいた魔法を起動して、映像を見る。
「はーあー?うそっ、食べてる!」
「グレーテルたちだな、具体的には。許さん。牢屋ではなくオーブンに入れてやる」
現実でそんなことするやついないでしょ!と思っていたのに、いた。貴族であり王族たちに連なる血筋たちが。むしゃむしゃ食べてる。もうどうしようもないほど、誤魔化せないぐらい。
枝で叩くより枝にして木にする罰だなと思いついたのは、心が沸騰していくせいだ。叫びに皆がこちらを向く。映像を全員見られるように可視化した。
「な、なんてはしたない!」
「ペコラ様の作品を!?」
「事前に許可を得ないなんて信じられない。無許可など傲慢が過ぎる」
「意地汚い。王族の汚点ね」
「ペコラ様。今すぐ国王へ話をしに行きます。みなさま、行きましょう」
ここまで食べられたら、止めてもどうせ捨てることになるので停止せずに、ライブ中継として王に突きつけるしかない。枝にしてやる。アルクレイもウサギの後ろキックを練習しているのでヤル気だ。
「さっき、あの子たちがそういえば……とか言い去ったあとの内容ってもしかして、学園で聖女によるレクリエーションがあるから、その手伝いをしたら会えるんじゃないか、っていう続きだったの?手伝いが妨害と崩壊と外交問題なの?え、あの子らヤバ」
ペコラは王に会いにいくために、事前に映像を城中に、いや、この国に流す。言い逃れもできないだろう。隠蔽されないようにしたい。ペコラはアルクレイを肩に乗せて肩を怒らせて無表情で王座へ向かう。
たった今、王城は文字通り大パニックだ。王子たちがお菓子をむしゃむしゃ食べているだけの映像は意味がわからないだろうから。
「なんと!抗議にお供します」
聖騎士たちもローラーのように並んで、威圧感を城の中で撒き散らす。他国の者たちが廊下を独占しながら歩き王がいる部屋を目指す。
王子の父がどこにいるのかは知っているので足には迷いがない。皆で進むと、この城に勤務する仕事をしていた人たちが場所を慌てて開ける。
「いかが、しましたかっ」
今回の責任者が呼ばれたのか聞いてくるが無視していく。何度も聞くが聖女のペコラがお菓子の家を制作していることは見ていたのに、映像を見てわからないとは。
俯瞰して映しているからなにをしているのか一目瞭然。その目にはあれがなにかわからないというのか?
「退きなさい」
「ひ、あのっ、なにかやってしまいましたか?」
「したから、今から王に話をしに行っているのです」
聖騎士の一人がらちが空かないと軽く言うが、進行と止めようとするので上空に浮かせた。
「ウワア」
浮いたから叫んだ声は後ろに流れる。もう誰も静止させることはなかった。ザッザッと足音が響き、王のいる部屋に着いた。
部屋は王の自室と電子の地図には記載されている。現在ここにいるらしく、他にも数人いる。パニックの城について報告しているのかも。
「国王陛下に申し上げます」
まとめ役の聖女が声を張る。扉の前にいる兵たちは押し入っているわけではない集団を排除できない。しようとしたら、城の外にある柔らかいところへ逆さまに突き刺す。
「国王陛下、出てきてください」
数秒経つと扉が開く。初動が遅い。遅い遅い責任取れ取れ。頭の中はそれでいっぱい。
このイベントに行くことが決まってから家のデザインと空間を使った遊びを考えて、皆の意見も集めて計画したものをぶち壊された怒りが止まらない。
「な、なんだ、ろうか」
王はなにを王子たちがやらかしたのか、わかってしまっているのか聖女と聖騎士らの殺気めいた視線に、目をうろつかせる。
「国王陛下、わかっておりますのよね?あなたの息子である王子と同学年の者たちが、聖女ペコラ様のお菓子の家を無断でああやって、暴食しているのを」
指を差して映像を捉える。王はさらに汗をかき、土下座をやろうとした。けれど、先に止めることが優先だと皆に叱責されることで油の刺されていないブリキの動きで、周りに指示する。
「父親なんだから、あなたが直接言って」
「え」
「今すぐここに行ってきて、やめろって言いに行って。保護責任者として」
「い、や、あ、あの、今すぐとは、警備のも、もんだ」
「行かないって言うの?今も浅ましくボリボリボリボリ食べてるのに?ぐっちゃぐちゃになってるのに?生産者としてまともに育てられないくせに?」
言葉責めが延々と続くと、王は首をぶるぶる振るが指をペコラも差して「お前が止めてこい」と低い声で最後通告を与える。
「あ、い、いま、すぐに!行きます!」
走り去っていく男を地図で見ると粗末ではないが、ランク下の馬車に飛び乗って近衛兵も慌ててついていく。




