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21アルクレイの疑問に暗い顔をする副会長の女生徒。嫌な予感がすごくする。関わり合いたくない。余計なことを聞くなとウサギの鼻をわし掴む

 よし、と立ち上がる。立地を確認して上から全体を見る。ここは他国だ。他の聖女たちが旅行を計画していたのでよければ一緒にどうかと聞いてきて、暇だったので頷いた。もしかしたらパフェ店を出店することが、可能かもしれないから。


「ここでお菓子の家を作れるとは」


 デモンストレーション用にお菓子の家を作った。またもやデモンストレーションだ。今回は大きな光でも瘴気でもなんでもない。平和なイベントデーに向けて作っていた。

 学園があるのだが、聖女とは存在していますよと伝えるための広報活動だ。ここは学園の裏庭。裏庭は広く作られたものを幅広く使えて、余裕を持てる。


「クッキーはすでに焼いてるし、チョコも付けて」


 扉も付けて魔法で接着していく。次々できていくものに感嘆の声を上げる、聖女たち。ずっと見てたけど思わず声を出してしまったらしい。

 出しても気にしないと声をかけると、キャアキャアとオアシスの幻想が見えそうなくらい声が強い。学園だから余計に。


「ありがとうございます」


「……ええ」


 どういったものかわからないので小声で答えた。まともな生徒などと会ったことはなかった学生時代。生徒会副会長が見目麗しい顔をキラキラさせる。


「一人だよな。副会長?会長は?他の役員は……」


 アルクレイの疑問に暗い顔をする副会長の女生徒。嫌な予感がすごくする。関わり合いたくない。余計なことを聞くなとウサギの鼻をわし掴む。


「なんでもない。聞く気はないから」


 一言二言で拒否すると、残念そうに見てくる。聖女は正義のヒーローでも、悩みを解決してくれる便利屋じゃないからね。悩みは親にでも言えると思う。こんなところに通わせてくれるんだから。

 自身とは違い少しはまともに聞いてくれるでしょ?と思いつつかなり出来上がっているお菓子の家を見てから、サンプルにこの家で使われているお菓子を皿に入れる。


「これ、この家に使われてるお菓子のちっさいものなんだけど、食べていいよ」


「え、本当ですか?まぁ!ありがとうございますっ」


「ペコラ様のお菓子は一級品だものっ。幸運ね」


 副会長も交えてティータイムテーブルを速攻作って設置した。聖騎士たちは慣れた様子で紅茶を入れる。

 ペコラが魔法で動かして入れても時間は同じなのだが、手持ち無沙汰な聖騎士たちはやらせてくれと頼んできて以来、こうして手ずから入れていた。


「なんて、香り高い」


 副生徒会長は貴族らしいので、ペコラの農園で採れたミルクティーに陥落しても仕方ない。貴族でも王族でも飲めることはない特別なものだから。


「ミルクティーなんて、ああっ、なんて美味しいのっ」


「クッキーもジャムが絶品よ」


 聖女らはウフフ、とオシャレでロイヤルな空気を発生させている。マイナスイオンたっぷり。ペコラはアルクレイとモシャモシャ和風の菓子を食べていた。

 いやうん、これには理由がある。デモンストレーションをやるに当たって、なんのお菓子を使うかで今お皿に出しているお菓子を、かなり食べたのだ。もう二人とも食べ飽きた。


 副会長もお菓子の美味しさに舌つづみを打ち、打ち解けていく。その中でなかなかに色々織り交ぜながらユーモアも垣間見せる。コミュニケーション力が高い。


「ご結婚はなさるの?」


「ええ……そう、ですわね」


 おお、不穏な空気を感じた。

 ちなみに、聖女は結婚を許されているので既婚者もこの中にいる。夫は聖騎士の率が高い。日々接している時間が桁違いだからね、当たり前のことだ。約束されたお約束。


「ま、まあ、そうなのね。幸せなのね、ね?」


「えっ、ええっ、そう、ね?花嫁様だものね?」


 聖女は伊達に人々と接していないので、人の機微を察したのだろう。気まずく答えるが違う話題を出す。


「お菓子を当日どうするの?」


 たずねられて、笑みを浮かべず淡々と答える。


「どうしようか?ふわふわ浮かせたらそのまま勝手に割って食べてもらおうかな、みたいな感じでやってもらいたかったんだけど」


「素手でですか?」


 副会長が目をぱちぱちさせる。


「素手、嫌なの?」


 首を横にして副会長に聞くと、彼女は気まずそうにしている。


「貴族の子女と子息ばかりなので」


「レースの手袋でも付けさせればいいの?」


 なんて手間をかけさせるんだ。面倒くさくなった。やめようかなと浮かぶ。やめようかな?


「あ……その、言い聞かせますから、皆様に」


「いや、いいよ。食べさせるのは無しで。違うことをやる。嫌なら食べさせるなんてしたくない。わたしのアイテムボックス内は、全部質も値段も高いから」


 無理やり食べさせるほど、こちらのアイテムは安くない。首を振って食べさせることは中止する。


「え、申し訳ございません」


 慌てて謝る。まあ、食べるか食べないかの選択肢くらいで怒らない。怒ってないからと言い放ち会話を切る。何か別のアクティブなものを考えておかないと。いや、別にペコラがやる必要はないか?

 聖女たちの方を向いて「あなたたちがやる予定なのはなに?」と問うた。


「私たちはお花を咲かせるのです。視覚的に、一番わかりやすいのですよ」


 ふふ、と笑うのは年上の人だ。プリンアラモード馬車に一番触ってた人だ。好奇心が一番強い人。


「花ってなんの?」


「普通のお花ですよ」


 ペコラもアルクレイも特にデモンストレーションに対して、思い入れがあるわけじゃないし。となると、聖女たちに丸投げするしかあるまい。


「じゃあ、これは観賞用にしてそっちメインにしておいて」


「承知いたしました」


「え、あのっ、お辞めになるのですか?」


 オロオロとし始める副会長であり、会長補佐。なにか変なことを言ったつもりもなく、イベントの変更なのにそこまで焦るってどうしたのかな。


「あ、あのっ。わたしの不用意な発言で取りやめになさったのならお詫びいたしますっ、ですから、お菓子を配ることを再検討していただけませんか?」


「やらない。貴族とお菓子のアクティビティは相性が悪いから」


 拒否する。もし、嫌がられたら地面にめり込ませる自信があったから。そんな大惨事になるよりは、平和の要である花のショーでも見せておけばいい。

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