20よしわかった。あなたを今から森に送ったあと届けを出すからこの世からいなくなる本当の怖さを知れ
おかげで、血管がキレッキレにバリバリになった。
おかげでやつらを森に飛ばしちゃったじゃないかと目頭を揉む。確かに罰の候補に向かわせるとはあったが、もっと先の話だったのに。どうしてこうも堪え性がないのだろうなぁ、自分は。
おっとっと、となっているとアルクレイはいいんじゃないか、おれはせいせきしたぞと満足そうに胸元をふっくらとさせている。
うさぎにはマフラーのような体の部分があるんだけど、そこが見事にふくふくしている。揉みたい。
「森に何日放置する?」
「信頼が崩壊するまで」
お菓子とかご飯をころりと転がして愛しい娘にだけやるか、分けるか見る。二人して鑑賞しているとおにぎりを一つぽつんと置く。
ここまでもう半日経過していて、明かりはオマケとして灯している。灯している方がお互いを認識できるから、善意ってわけじゃないよ?
「雨を止めてと頼んだのよね?」
「頼んだわ!でも、敬語とかダメとか、私より下なのにっ、生意気にっ」
「何を言ってるんだ?止めてほしいとお願いしたんだよな?丁寧に」
二人に詰め寄られて片割れはキュッと肩を窄める。それだけで彼らは察した。頼み方がいつものような言い方で、丁寧とは程遠かったのだな、と。そこからはもう八つ当たりと、九つ当たりと全部当たりで全て乗せだ。
「同じ双子なのにどうしてできなかったの?聖女の片割れなのにっ」
「そうだぞ?聖女じゃなかった方なのにどうしてそうも偉そうにしているんだ?もしかしたら覚醒の方法も教えてくれたかもしれないんだぞ?遠くしてどうする」
あれだけ持ち上げていたのに、お腹が空いているからか余裕なく叱りつける。でもでもだってと、涙を流す子。
「水はもうたくさん。あそこに降り注いでいるのが見えるでしょう?あなたが泣いたら、余計に降るかもしれないわ」
「ああ、そうじゃなかったが聖女の片方なんだから雨が降ったのはお前のせいなんじゃないかって、言われ出している。姉妹を排除したお前はそれでなくとも捨てさせたんだから、騒動の責任を感じ持ちなさい」
他責思考がやはりすごい。未成年の子どもをここまで一方的に責められるとは。少なくとも三人はそれぞれ同じ分配で責任があるんだけどな?
これはおにぎりを分けることはなさそうだ。転がす必要もないな。実験も無意味か。
「ねえ、あれって食べ物?」
「ああ、そうだ」
「小さいわ……」
おにぎりを見つけた二人は子どもを見てから隠すように二人で分けた。やっぱりこうなるか〜。この二人はこれで盲信系ではなく自己完結系だとわかった。二人が幸せならばそれでよいという証明。
「アルクレイ、二人の罰を始めようか」
「ああ」
計画書と書かれたファイルをめくり、ぱらりと読む。それに沿って書式を作り上げて文章を書き込む。本人たちの書き方をそっくり使ったので簡単にやれた。
「提出」
役所の判子も押すと完了。やることにより罰は色々なものを思案したが一番最悪から二番目となった。
「お腹すいた」
雨が降りしきる中で、雨粒しか飲むものがない。呻くように呟く双子の片方は、人生がガラリと変わっても世間は許してくれないことばかり嘆く。
「あんなに怒るなんて……」
双子は明確な死の怖さを知らない。飢えて死ぬのも孤独に苛まれて死ぬ恐怖をまだ知らない。
森に置き去りにされた片割れは孤独の末に精神を覚醒したものの、ならなかったら死して森の一部と成り果てていただろう。
「もうとっくに信頼はなくなってたか……残念」
映像を小さくして殆ど見えないようになる。もう大画面で見る意味もない。同じものが映り続けるだけだから。首を振り違うことをしようと切り替える。
ペコラがアルクレイに目を向けたら、どうする?と口にする。元親たちの処置は済ませた。それにより唯一の子どもにも、楽な人生を生きることは難しい。
「なにする?」
「あっけなく終わったな。まあ、祖国は大雨で崩壊はいずれ起こるからあとは待っていればいいんだな。なにをするかについては、提案がある」
アルクレイの耳が顔に当たってくすぐったい。内容を聞きながらふんふんと首を向く。その提案を採用しようと立ち上がる。
画面に目を向けるとまだ雨に向かって顔を上げていた。もうちっとも似てないな。
後日、聖女が彷徨った日程をおにぎりで乗り切った夫婦を攻め立てる、第一子の姿が街中で見受けられた。
ヘロヘロになって帰宅した三人の目には、テーブルの上にある死亡届通知書が自宅に送られていて。夫婦はどういうことだと騒ぎ、それを冷えた目で独り身になった子どもがなにも感情を映さない瞳で、眺めていた。




