18私が聖女じゃなくて片割れの双子も聖女じゃなかったらって考えたら嘘つき聖女の姉妹として追放されてたかも
ペコラも立場が聖女でなければ、偽聖女を語る姉妹のいる家として後ろ指を刺されていただろう。たまたま聖女だっただけだったから最悪を免れた。もし、どちらも聖女でなかったら……。
「私が聖女じゃなかったら嘘つき聖女の姉妹として追放されてたかも」
「ん?」
アルクレイが疑問を拾い上げて、食べていたたい焼きをモグモグしていたのに頭を上げる。
「私が聖女じゃなくて、片割れの双子も聖女じゃなかったらって考えてたら」
説明と考えを相手へ伝えるとウサギ案内人は「そういえばそうか」と心底低い声音であんこを咀嚼する。そのたい焼きは何個目だろう?すごく大食いだ。
「本当に身の毛もよだつことをやっていたな。おまけに両親も心の底から本物だと思い込んでいたんだろ?盲信ではなくなったが、お前の可能性を万に一つも浮かべなかったのが不思議だ」
「そこはまさに盲信。双子って時点で目が曇りきってた。私たち以外にも双子はいたから」
何度でも言える。うちの双子が聖女じゃなかったら、他の家の双子が聖女になるわけで。その時はどうなったのか気になる。数学的か確率的に、たまたまペコラが聖女だっただけなのにね。
「言いにいったんじゃない?」
「うちの子が聖女なんですっ、てか?認められることはないだろ。単に捕まるだけだ」
「本物はこちらだと思い込んでるから、捕まらないと思うかも」
「どちらにせよ恐喝で逮捕案件だ」
アルクレイの言いたいことはわかるけど収監されようと、また舞い戻るとしか思えない。
「うちの子が聖女なんだ夫婦が生まれるよ」
「なんだそれは。くっ」
「あ、笑った」
笑わせるために言ったので、ペコラの勝ちである
「私が聖女でなくとも偽物扱いされて、追い出された。私も」
「他国でまたやると?」
「やるでしょ?」
二人で怖い話だね、と想像し合う。想像が膨らむごとに地獄のような日々が起こるだけだとわかった。
別日、今日はパフェの新作を広めるために公開販売をする。うさぎのアルクレイは客を集めるために効果的なので、もしゃもしゃ何かしら食べている姿を誰かに見てもらう。
「え、あの生物かわいい!」
アルクレイのようなウサギはこの世界にいないみたいなので、珍しい個体なのだ。人が止まったらすかさず新作パフェを声に出して売り込む。システムで出したりできるけど、たまには気分転換に売る。
「抹茶パフェのたい焼き付き〜」
「えっ、新作?なら、あの子は聖女なの?」
「いやぁ、流石に店員は雇われだろう?」
人々はどちらだろうとなりながらも、新作パフェと聖女に興味津々の二重奏で近寄ってくる。
「三つください」
魔法で箱に詰めて渡す。他のパフェもあるので看板にあるが、おすすめは新作ゆえに抹茶パフェをこれでもかと押す。
販売しているとウサギを撫でたそうにしている子どもがいて、触ろうとするのを彼は浮いて避ける。
もちもちふわふわしているから、さわりたくなるんだろうか。代わりと言ってはなんだが、巨大うさぎのもちふわぬいぐるみをアイテムボックスから取り出す。
ドムっと音を出して地面に落としたそれを、皆は目を丸くして見つめる。
「お触りご自由に」
一言言うと子どもらが瞬時に駆け寄り抱きつく。周りにいた子たちが抱きついた適度で、埋まる面積ではない。むちっとしたぬいぐるみに「わあああ」と叫び倒す子ら。
「大きい!」
皆何かしら叫び、文字通り飛びつく。大人たちものちのち飛びつけるかは知らないが、子どもやぬいぐるみのおかげでさらに集客効果がアップした。
「おれより目立ってる」
「触られたいの?」
「嫌だ」
目立ちたいけど触られたくなかったみたいで、もそもそもと食べ続けた。目立ちたがり屋なのか、ウサギボディに自信があるのか。
最近ペコラが名前よりもパフェ聖女とか、パフェの聖女と呼ばれていることを知った。なかなか悪くない。パフェの異名はなんとなく付けられるのだろうなぁ、とわかっていたからこそ付けられても気にならないし、予定調和だ。
パフェを配り歩くように売っていると、どこかから視線を感じる。ねっちょりとした湿気のあるもの。
殺意を込めて視線を送り返すと「ぎゃっ!?」と聞こえて横に倒れる人が一人。ばたーんと倒れるその物体Xに人々は何事かと見遣る。
「な、なんだっ」
「倒れたぞ」
「え、あれ、女の子?」
ペコラはまだ大人ではないので片割れも大人ではないから、表現するのなら子どものカテゴリになる。だから、もしその子を見たのなら子ども扱いして心配するのだ。
「あ!偽聖女だ〜」
「あっ」
わざと大声でわかりやすく代わりに名刺をぶっさす。慈悲などない。
あの子はペコラを森に捨てることを両親に発案して実行させた主犯だ。犯罪において罪が重く罰を一番与えられるのは指示した存在。実行犯よりも実刑はつく。
「なんであの子がここに?というか、今も罪に問われてないのはなんで?未成年だから?」
王国の国王ならば雨が今も降り続いているからと、矢面に立たせて雨乞いくらいさせていると思っていたのに。逃してる。
それか、謝りに行けと国から蹴り出されたのかもしれない。哀れだなと一ミリも思わないから、謝罪なぞ受け取らない。
「聖騎士の皆!」
近場にもちろんいた彼らを呼び寄せて、偽聖女の元家族であり血の繋がった姉妹を捕らえてもらう。逃げ出す暇もなく。逃げ出してもペコラが捕えたので、逃げられないけど。
呆れながらお城に運んでもらう。皇帝に王国へリリースしてもらわないと。その間、めちょめちょと水のようになにか言っていた。多分、謝罪かなと思ったけど僻みだったので聞く価値なし。
「私が聖女になるはずだったのに。そうじゃなくてもなんであなたなのよ。私じゃなくても他所の双子なら」
こんな感じのことを延々と、引きずられながら呟く。




