14子連れの豪華な服装をしためんどくさそうな女の人が怒鳴りつけていたのでメッする
ああいう権力者と知り合いになっていい目に遭うことはないと断言できるのだ。
美味しいものもテクノロジーも権力もすべて手に入れており、必要とするものなんてなかった。聖騎士に壁になってもらいつつ、アルクレイを見る。
子どもに混じって遊んでいた。うさぎが子どもの手を避けつつ器用に跳んでいる。うさぎは跳ねるのが得意だから、慣れているのだろう。
ポヨポヨポヨン、と音をさせて全員が遊び終える。満場一致でバルーンルームが聖女活動を学園で見せるアクティビティに決定した。
「私も……」
皇帝もバルーンルームに入りたそうだったので寝る前に飛び跳ねてもいいように、部屋へ置いてきた。中は亜空間なので外側から大きくなくても中は広々しているタイプ。一週間後に回収しに行ったら感謝されて珍しいチョコレートを譲ってくれた。
もうすぐ学園に行く翌る日、パフェ農園に招かれざる者が現れた。このパフェ農園はペコラの魔法が張りめぐされているものの、聖騎士たちもわざわざ巡回してくれている。
その人たちと誰かの言い合う声が聞こえてきた。映像魔法で確認すると子連れの豪華な服装をした、めんどくさそうな女の人が怒鳴りつけていた。日々、聖女を守る聖騎士に怒鳴りつけるなんてなにを考えているのか?
いや、その前にこの人を調べたら他国の貴族だった。今は避暑地として帝国に来ているんだそう。旅行中だとプロフィールに書いてある。暇なのかな?
妻だけなのかと思っていたら夫の方は皇帝に挨拶をしに言っていた。妻と子どもも連れて行けばいいのに。
「私の子がやりたいと言っているの!早く伝えて!」
「無理です」
「私たちは護衛です」
「連絡係ではありません」
聖騎士らは淡々と断る。こういった癇癪を持って言いに来る人、いなくならないのが今も不思議だ。
他国とは言え祖国であれだけ言いまくったのに、そんな聖女の苛烈な性格がいつまでも伝わらないのってなぜ?
「ちょっといい?」
『ん!?』
「ペコラだけど。変な貴族がうちに来た」
騒ぎが収まらないので、皇帝におきていることをリモート映像を見せた。唖然としている男を待つ、なんてことはしない。皇帝だから貴族の受付なのかなと、勝手に想像したから。
クレーマーみたいな女の人は一通り文句を言うと、そこで仁王立ちした。皇帝が我に帰って映像を見てからどこの貴族だと頭を振る。
頭痛がしているみたいでしんどそう。あの人みたいな人はよく来るのか聞いたら「滅多にない」だそうで。滅多にないことが起きているのだな。これはなかなかレアな珍事。
「追い払ってもらえるの?」
「ああ、そちらに担当者を向かわせる」
相手はイライラした顔で女を見つめている。アホなことをしてくれて、と今にも言いそうだ。他国の貴族が皇帝に迷惑をかけたら国際問題ということは、自分にもわかる。
「うるさかったな」
「あ、起きたの?」
「うさぎの耳は性能がいいんでな」
今喚いている貴族はおそらく、強制送還だろう。それと夫人の夫も。挨拶しに来たのに帰れと言われるわけだ。
いや、帰れと言われる前に連座で牢屋行きだ。他国で問題を起こしておいて何事も起こらないで済むわけもないか。他国に引き渡すときに聖女へやらかしたから、今後のレンタル権を失うかもしれない。
夫の方を見てみると待っている様子で落ち着いている。問題の妻を連れてきて、のんびりできるなんて妻の性格を甘く見ていたらしい。兵士がやってきて、皇帝の前に突き出される。
何事かと問うと先ほどの妻の喚く映像を見せてみると、顔を青くさせて震えた。ひぃ、と口から漏れる。
妻の方を見るとまだクレームのようなことを言っては要求を押し通そうとしていた。パフェ農園のパフェを見にきたんだって。あと、バルーンルームの話を聞いて遊びたいらしい。
全てペコラがやっていて関係していることなので、まとめてできるんだろう己に会いにきたと要約すると、そう述べている。
パフェはパフェ店で食べればいいのに、やってくる必要はどこにもない。おまけに聖騎士と揉めてまで。やっていることがめちゃくちゃだ。
やがて、喚く奥方と道端の石ころをずっと蹴って、暇を弄んでいた子どもは皇帝の私兵に回収されていった。その時の妻の顔は見ものだったな。
顔面が真っ白になって、言葉にならない言葉を言っていたけど言語化できないみたいで。子どもはボーっとしていたので、いつもあんな風に怒鳴っているから現実逃避しているのだろう。
父親の貴族はそれを放置していることになる。表面化した問題を今になって末代まで払うことになりそうだ。
『なんてことをした!?』
「わたくしはあの子が遊びたそうにしていたので、伺っただけですわ!」
『聞いたがそんなことは一言も言ってないと言っていたぞっ?』
『あの子は照れ屋なのです』
夫婦は自国の交渉人が来るまで、夫婦喧嘩を繰り広げていた。子どもは別室だ。
後日、子どもだけバルーンルームに招待して遊ばせた。父親と母親は自国の大臣にこってり絞られている最中みたい。この国に子どもだけ留学という名目で学校を移して親と引き離すことになった。
ペコラが進言したのではなく、皇帝が子どもと親の歪さを見て即見抜いた。ペコラは感心したので、細やかなご褒美として皇帝へパフェを送る。貴族の対応をしたからと思われるかもしれないが、本当に褒めた部分は知られたくないのでそれでいい。
子どもは留学して暫くはボーッとしていたが、半年ほど経つ頃には親元から離れたお陰か笑顔が浮かぶようになったらしい。
「えー、大きい〜」
「嘘だろう!?」
バルーンルームの体験教室のような日も順調に進んだ。学生たちがこれが噂のものかと話していたので、これの存在はかなり話題になっていたみたいだ。
「入りましょう!」
「こ、怖いなぁ」
「ぼやぼやしてると置いていくぞ!」
そんなことになっていたのを知らなかったペコラは、さらに大きいものを出して生徒たちの話題をさらに大きく広げた。彼らは顎が落ちそうな程見上げて年相応に中へ入ると時間いっぱいまで遊び尽くす。
「もう一度やろうよ」
「もうクタクタなんだけど……」
「今日だけなんだよ?」
お昼になって聖女たちと学食を食べる。色々あるけど何がいいかな。カレーはあるかな?
ペコラが相棒のアルクレイに問いかけると、彼はあるわけないだろ?と当たり前の返答。わかってるけど、言いたくなる語呂なんだから。




