11 聖女を本格的に侮辱した行為をやらかした人達の末路ってあんな感じなんだなぁと思い出して自分だけのために立ち上がってみた
しかしまあ、雨がどうにかできるとか、どうにかしてあげると一言も言ってないけど?
ペコラの元夫、勝手に名前を買取り妻にした男に関してだけどエグいことになってるので映像に映すのは教育に悪いのでカット。
聖女を本格的に侮辱した行為をやらかした男の末路ってあんな感じだよ。
思い出したけど、自主規制のモザイクがかかるので思い出すことも困難だ。
「聖女を妻にしたって、自慢してくるかと思いきや。とんでもない目に周りが合わせてて。私が何かする必要もないって、あれは予想外だった」
同意のない人身売買に匹敵するから、余計にあんなことになったのだろうか。
自分の知らない間に起こっていたから、正直被害者意識はゼロ。結局、戸籍も復活させることは許されないからと無しになっている。
手紙で再三、新たに取得するのでもう一度来て欲しいと、しつこい。
今回は戸籍のことではないが、雨の調査という都合のいい理由があるので、訪問理由にしておく。雨を止ませる予定はない。
あの国は少なくとも、魔力がなくなるような事態にでもならない限り、永遠に降る。農家の能力は便利だ。
「さて、どんな具合かな。成熟もなかなかかもねぇ」
るんるんと今度はメロン馬車を模した乗り物に乗る。今回も聖騎士たちにお願いしてあるので、共についてきてくれていた。
雨が降るエリアに入るが、ペコラの範囲設定でそこだけ雨に触れても濡れないようにできる。というわけで、自分たちだけ濡れない状態で二度目の訪問。半年ぶり。つまり、雨が降ってもう半年。大災害。
王城に行くと人が人で埋め尽くされていた。ジメジメしてて耐えられないので、自分と聖騎士たちのところだけ湿気を払う。彼らはそこでジメジメさせてたらいいよ。
王に用意された椅子なんて何があるかわからないからと、自分で椅子を取り出す。デザインはハートの背もたれをしていて細長い。うさぎのパートナーを隣に連れて座る。
何も言ってないのになめらかに見ながら頭を下げた。
「……」
無言で過ごしていたら、そろりと頭を上げた王が口をハクハクさせてなにか、言いかけている。
頭を上げろとか、口上すればいいという言葉がこの場では適切なのだろう。けど、ね?
ペコラは許さないので許可は出さない。彼らは頭を下げたまま、ちらちら上目遣いで「許して欲しい」「雨をどうにか」「偽物に騙されて」と口々に言い出す。
この場は反省会じゃないんだけどなあ。顎に手を乗せてその都度「イヤ」と言ってあげれば皆の絶望に苛まれた呟きが部屋にこだまする。
雨もやまない、聖女からも許されない。この国はとっくの昔に、大罪国へと判定されており他国からこれでもかとハブられていたりする。
他国が併合しないのは聖女からも嫌われている国が欲しいという、奇怪な人たちがいないだけ。ある意味、平和だよ。
王は誰かの治療を望むと手紙に書いてあったけど、割高な値段を告げると他の聖女に頼んだと住んでいる王から聞いている。
しかし、聖女たちも虐げた国の王によい心情はないわけで。断っているらしい。
仲間意識とかわからないけど、一度やると許された気になるから断固としてやり通すのが吉なのだろう。
ペコラの気持ちを思うと治癒できるわけがないと、聖騎士たちは苦笑していたので、つまりはそういうことなのだな。
「聖女たちに、パフェ送ろうかな」
頭を下げる人たちを眺めながらタッチパネルを操作して、パフェ店の店舗地域を吟味。
「ペコラ」
「ペコラ、ペコラ」
自分を呼び捨てにする存在。目をやることなく騎士たちは、心得た様子で静かにしろと注意する。ペコラペコラとうるさいな。
捨てたのにまだあると思い込んでいる彼らは、捨てた事実を認められなくなったのかも。
これっきり二度と、聖女をボロボロにしたものたちへ声をかけることはなかった。
その後、さまざまな職業レベルの魔法を祖国へ向けながらパフェ店を経営して、店舗数を世界各地に増やしていく。
アルクレイは相変わらず美味しいとパフェの容器を空にしてくれる。
「復讐はいいのか」
「保留。経営も今のところ、楽しいから」
今となっては彼は心の支えでもあり、覚醒した時に現れてくれて良かったと思っている。
ウサギ案内人はニッと笑いかけてペコラに信頼の瞳を向ける。あまり、そういう感情は向けられたくない。善人ではないから。
「プリンアラモードとパフェどっちがいい」
「どっちもパフェだろ。なんだったら二つ食べる」
食いしん坊の相棒に口元を緩めて、二つのグラス容器をアイテムボックスから取り出した。
ここは、パフェの農園。色々ひと段落がついたから二人して、のんびり過ごしている。
復讐とか柄じゃなかったけど、過去の己を浄化させるにはやる必要があった。救済とでもつけておこうか。
アルクレイがマズルをひくひくさせて、ニンジンパフェを所望したので。グラス容器にギチギチに入れられたニンジンという、ただの野菜スティックなのでは?と言いたくなる見た目。
それでも好物なのだからと作ってあげたくなる。角が丸くなったのか、ひと段落した仕返しに心がホッとしたのか。
パフェが実る木々をかき分けて、風がそよそよと薫る。
「ようやく、本来のお前になったな」
「私は初対面から私だけど?」
虚を突かれて、目を丸くする。
「お前は真面目で頑張り屋だから、力を抜くのができないタイプだ」
ペコラがゲームをしているときからの、案内人の記憶を持つ彼。なんでも知っていると言いたいのか。
「そろそろ、お前のために生きてみるのはどうだ」
「初めからそうしてる」
「今世の聖女を慰めたら、お前は誰が癒す」
小さな体躯を見下ろす。翼を生やす彼はいつもの態度でニンジンを咀嚼。音が大きい。
「自分の機嫌は自分で取る。常識」
「聖女はお前とは違う意識で動いていた。他人のために動いたということだろう?」
息を呑む。そんな考え方はアリなのかな。
「良いじゃないか。お前は、今度こそ自分のために生きるべきだ」
また下を見ると今度はつぶらな瞳で見上げられていて、視線が交差する。生意気なことを言う案内人を持ち上げて、ギュッとした。
「やめろ。ニンジンが胃から出てくるだろう」
後ろからキックを受け流し、耳をにぎにぎした。ウサギではあるが、本物ではないので、できる。
「うさぎのくせに」
「くせにと言うな。アルクレイという名前がある男だ」
胸を張る胸毛はふわふわで、メレンゲよりも上質な触り心地にとまらない。
翼で逃げるまでやり通してから聖女は、寂しかった夜を一瞬思い出してから。そんな過去は二度と来ないと立ち上がった。
「トマトパフェ、食べるぞ」
遠くから聞こえた相方の声に、大声で応えた。
「私も食べるっ」




