10祖国には大雨を降らせてみたら片割れに猫撫で声で止ませるように無茶を言う親の言葉がねっとりと耳に残る
一方的に婚約破棄してきた時の文面もあるから、それを全世界に公開とか。ペコラの悪口を言ってるときのこととか?たくさんありすぎて皆見飽きちゃうかな?
「頭下げるんだって」
「一人か?数が足りないだろ。普通に考えたら全員下げるべきだと思う。これが自分なら頭を下げるがなぁ」
バカにした冷奴な瞳で、愚かな家族らを一瞥し続けている。リンゴをモシャモシャしているウサギは、そろそろパフェからリンゴを取るのをやめて欲しい。ほら、ただのパフェに成り果ててる。
それにしても、雨が降りまくって外に行けないからって、フラストレーションを実子に向けるのはどうかと思います。
謝るのはまさかとは思うけど一人にやらせようって、魂胆じゃないよね?
明らかに聖女が全員分を望むんだって、わかんないかな?
もしかしてだけど、ペコラの性格を昔のままと認識していたりして。そうしたら、こちらを一人で済ませる思考になるかもね。
映像を変えて、実家の方にやってみたけれどあちらは罪悪感を感じてないから特に揉めているわけではないのだ。
映像には、実娘であり聖女でなかった部屋へ親たちが出てきてと優しく問いかけている。
聖女じゃなかったのは明らかなのに、まだ優しくするのか。それなら、ペコラを除け者にしたり冷遇したりしたアレはなんだったのかと疑問でたんまり埋まる。
聖女じゃなくても普通に対応できたのにって、おかしく思えたけど、元々彼らはどこか価値観がズレている人たちだったのかな。
「出てきてちょうだい」
母親が猫撫で声を出して、父親は出てきて欲しい理由を口にする。
「国王様がお前に聖女として雨を退けて欲しいんだそうだ。双子の一人が本物だったということは、お前にもきっと備わっている。父さんたちは信じているぞ?」
映像を見つつ、腕を組み首をグリッと動かす。
「え?」
思わず、何事だろう、と思う。聖女はこちらで片方が聖女というのは過去に聞いたことはない。アルクレイもリンゴを最後まで食べながら、生クリームを舐めている。
「そう思わないと今までの現実に相互の形がハマらなくなるからだろ。総合性がズレてしまうが、あの偽物がちょっとでも使えたら親たちはお前をあんな風に扱った理由が、ただの冷遇と理由なき暴行だったことになる」
「あれはまごうことなく、暴力の何ものでもないけどね。言いたいことは勿論、わかるけど」
つまりは、周りに責められているからせめて、片割れが力の片鱗でも使えれば聖女を庇おうとして、森へ放逐したという言い訳が周りに言えるというわけ。
そんな道理はないけれど。普通に犯罪だ。おまけに本物を捨てた彼らは世間から大罪人として扱われている。
皮肉にも片割れが本物と思われていた時期のペコラと同じような扱いを受けていた。
あの頃とは違い、ペコラが実は本物であり虐げていたのは偽り。だが、今回はただの真実なので助かる希望も隙もない。
ペコラがそんなことはない、親たちは何も悪くない、とわざわざ言うことがなければ人生において永遠にそういった対応を世間から受け続ける。
だからこそ、双子の片割れは聖女と名乗ったことはない証明をペコラにさせようとした。聖女は王より上。法律もときには凌駕する。
けれどけれど、ペコラはその法律でドギツく裁かれて欲しいと思っていた。庇うなんてとんでもない。裁かれろ。
ペコラを虐げた側の貴族や近所に住む者たちも、類を見ない大雨に外へ出ることもままならない裁きを身をもって受けていた。
外に遊びに行けず、買い物も雨量が余裕でくるぶしを超えるので。とてつもなく大変な作業へと、今やリンゴ一つ買うのにも苦労している。
遊びに行けないと泣く子ども、外の仕事は無くなってしまい失意に酒を飲む大人。酒を買うのに雨の中を活かせる気かとケンカも絶えない。
「お前が行きなさい!」
「うるせえ!」
物を投げ合っても、騎士も兵士も来ない。彼らも治安が悪化してしまう中で、びしょ濡れになりながら向かうほど仕事熱心ではない。
酒場に行っても買い物は同じようにできないので、がらんどうだ。町も国も雨の国として限界を迎えていた。
外に行っても地面はどろどろで、植物も水分過多により枯れる。皆が家の中に居させられる共通の場面。
そんな中での聖女としての活動を親たちは、聖女でもないただの女の子にやらせようという無茶。無理なので片割れは部屋から出てこない。
国王もすでに聖女ではないと理解しているのに、なぜさせようとしているのかサッパリだ。もしや、ペコラをあぶり出そうとしていたり?
たとえ、元家族がなにをされようとも一ミリも動く気はない。まだ家族愛に期待しているのかな。
そんなわけがない。最後の日にイヤと拒否したところを見ていたし。どんな鈍感でも恨んでいる、好きではないことくらいわかりそうなもんである。
「あの人たち、死ぬまであんな感じでしょ」
元親たちの評価を下し、ペコラをバカにしていた双子の片方と親しくしていた子たちにフォーカス。
アルクレイはパフェのサクサクしてるものを食べていた。ついに中身まで食べ尽くそうとしている。
仕方ないなと生クリームを追加しておいた。パッサパサよりも、一緒に食べた方が美味しいよと告げる。
「お前を散々痛ぶった奴らも身内に、痛ぶられているとは。やったことは帰る、いい例だな」
「足りないなぁ」
パフェ店の計画書を読みながら、唸るように画面へ向けて問う。
「ちょっと、見に行こうかな」
「出向かないと出かけそうにないからな、この映ってる罪人たちは」
ふう、とパフェの容器を空にするウサギ。その小さな身体のどこに入るのか。
「手紙を出して、ちょっくら顔を出すことを大々的に、拡散してもらわないと」
王は言わなくても無駄にでかい声で、聖女が来ることを周りに伝えるだろう。謝らせたいとヤキモキしてたし。それをやっと解消するときがやってきたのだと。




