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104/106

104寿命まで付き合うことになるかもしれない恐怖に父親と娘がいつか気付く日まで

 国王の父親も流石に体型に物申していた。


「健康スキルなのだからお前は健康だ。痩せなさい」


「健康なのは体だけ!心は今にも死んでしまいそうなの!」


 どうやら王妃とは母の系統が似ているらしく、王が可愛がるほどには儚さが似ていたみたいだ。要は好みらしい。

 絵に向かって夜になると酒を片手に染み染み語っていたから、ペコラは把握している。娘可愛さというより故人の美化としか言えない。

 妻もここまで問題を起こして健康なのに体型維持もしない娘を甘やかした夫にどう思うかという点がすっぽり抜けてしまっているのは、どうかと思う。


 仮にフラニーを外に出しても儚さではなく、国民の税金の行き先が腹の中とみなされて周りからの反感や顰蹙を買うと思う。


 フラニーの血を分けた兄弟たちもまだフラニーの状態をあまり知らないみたいだし。見に行かない上に興味がないから見張りも密偵も監視も誰も命令しなくなっているから、興味も失せて見放されていた。

 なので丸々とした母親に似た王女はどこにももういない。それを知るのは国王だ。目で見てしまい、妻にそっくりだと過去に浸っていた目からは曇りが取れて現実が残酷にも、ハッキリクッキリと見えてしまう。


「痩せろ!」


 妻はこんな体型じゃない。と今度は責任転嫁をすることでフラニーはぽかんとする。


「え、当たり前ではないですか。私はお母様ではありませんよ」


「母親の娘として肉肉しい体を晒すな。王家として恥ずべきことだ。不摂生をするなっ」


「部屋に閉じ込められていてどうやって痩せろというのです?」


「講師と医者を呼ぶから元の体型に戻るがいい」


 王はそれだけ言ってあれだけ甘やかしていた娘を突き放すように、目を合わせず去る。いくらなんでも急展開過ぎた。王が愛していたのは妻に似た子供であって、似ていないと心がすぐに離れるほどの愛着しかない。


「なに、あの王」


「本性ってやつだろ」


 あれだけベロベロに甘やかしていたくせに、なにを被害者ヅラしてるんだ。無責任な父親の王も段々ムカついてきた。ずっと見ていると多少感情移入してしまうのが映像のデメリットかもしれない。


 今更可愛がるのをパッとやめるのは王族として、王家としていかがなものかと思う。処理を王太子に一任しようとしている動きもあるところが、さらに気に食わない。

 やるのなら育てた親の責任だろう。面倒を見るのを放棄するなんて許されるわけがない。最後まで面倒を見るのがこんな風に育てた責任が。


 ここまで無責任に全てを押し付けて許されるのは赤の他人だけだ。なんの過積もない、なにもしていない。他の子供を後ろへ押しやり忖度させ続けた末がこれとは。


 どうしてやろうとかとイタズラ心が疼く。誰かのためにやるのではない、ここまでコケにされてこの結末はなんだか違う気がして。

 可愛がっていたことを悔いるところまではわからなくはないが、そこまでだけ。残りは全く共感できない心理。

 どうしてそうなると皆、王の子供たちも呆れているのが会話からわかっている。彼らは王の無責任さに辟易していた。あんなに可愛がっていたくせに突き放し方が親のそれではない、と。


 父親を皆それぞれ、言葉は違えど非難していた。王としてやはり器ではないと王太子は改めて直面したものに苦い顔をしている。

 難しいのなら後押ししてあげようかな、と己の心に宿る貴重な親切心を今ここで解き放たないでいつ、解き放つというのか。今やるべき、今不満に思うのなら動くのだ。


 取り敢えず、先手を取り王に王ができなくしてもらわないと。思いついたのは物語から。魔法を行使すると王の部屋を写しながら調節する。


「とんでもない王女だ」


「あなた……いい加減して」


「どうしてだ?皆に嫌われていると聞いている。お前も嫌いだろう?」


「好きも嫌いもございません」


 王妃の妻が嫌そうな顔をしている。己の娘の悪口を配偶者に愚痴るなんて、とんでもない王である。血の濃さを強く感じてしまう。


「嫁がせることも無理になるなんて」


『役に立たない娘など王室の籍から抜きた方がいいな』


「え?」


 王妃がキョロキョロした。


「なんだ?なにか虫でもいたのか?」


「い、いえ」


 否定した女はぎこちなく言ったものの、今のが独り言の類なのかどうか考えていた。その間にまた同じ現象を体験した。


『気味悪いな。最近話を真面目に聞いてくれない』


「あ……」


 今度の今度は空耳ではないと把握したのか、王を凝視した。まさかと思っている顔に視線に気づいた夫が再び目を合わせてくると、怪訝そうに尋ねてくる。


「あなたのお話は……いつ聞いても興味深く感じおりますので」


「ん……そうか」


 嬉しそうに答える男に女はやはり、と思案した顔になり今聞いたものが心の中の声だと知る。ペコラの思っていた通りの反応をする王妃に満足した。王妃と王のやり取りを一通り観察し続けて、王妃が言う気がないようだと確認してから画面を終了させる。


 今回言うか言わないかはそれぞれ委ねる。知られても王は自覚がないし認知できないので、聞いても影響などない知ったら部屋から出られなくなるだろうし、知らないままでも身内に利用されて終わるだけだ。


 王女のことを考えている余裕などなくなる。それが目的ゆえに王は引っ込んでろ、という気持ちで仕掛けた。邪魔に思われやすくなるから。

 うまくいったようで王妃はしばらく聞いていたが、うるさくなったせいなのか男が寝入るまで起きていた。その後何かを考えている瞳でねている男を見つつ、目を細めている。


 やがて、王妃もゆったり寝具に身体を横たわらせた。色々納得して明日に備えようとしているのだろう。きっとその時が来たら大事件の扱いになると予期しているわけだ。


 次の日も王たちの事変を見守る。


「何をするっ!」


「父上は呪いにかかったらしい。もはや人間として生きていけません」


「なっ、なんだと!」


 酷い暴言に王は立ち上がるが、心の中が透けているので全てが周りにどう思っているのか知れている。そのことを王も実感していたがまだ王位に居続けられると楽観視していた。


 しかし、王家の王の心の中が筒抜けでは国を運営できない。策略も必要な取引もやれはしないのだ。相手に舐められて足元を見られて国が弱る。

 心が読めてしまう王など椅子に座らせ続けることは不可能だと、王室会議で可決された。当たり前の処置。


 王妃である王の妻も娘や息子の言葉を聞かず、一人だけに目を向ける視野の狭さに顔をずっと顰めていた。他の子たちにも話しかけてあげて、と告げても一向に態度を改めない相手に期待することをしなくなった経緯がある。

 すでに見限っていたことをあの夜、まざまざと知ったのだろう。そんな顔をしていた。すっきりした顔つきを。王はそんな妻に気付くことなく、眠りこけていたのは相変わらず事勿れなんだなと笑った。


 王の罰は捨てた娘と共に暮らすことだ。お互い強烈で逃げ場のない時間を過ごさせること。娘の方はいずれ出されることはあるだろうが、王は許されることはない。一番やらなければならなかった大人が一番先に放り投げて知らんぷりをしたのだ。


「お父様酷い!」


「勝手に読むな!」


「読みたくないわよ!勝手に出さないでよ!」


 叫ぶ日もあればお互い無視をする。文句を垂れ流す父親に、もう嫌だと眠れない日もある娘。勝手に心を読み暴言を吐く、恩知らずの娘に怒鳴りつける父親。

 貴族や王族の仮面を取れば二人の光景は下町などで繰り広げられる親子にも準ずるものなのだが、そんなものは知らない二人なので嫌悪と険悪さが広がって深まるだけ。


 帝国の王もこの結末にはかなり納得していて、こういう方法もあるのだなと言っていたとか。聖女たちも無礼な聖女が勝手に削れていくところがよかったようで、罰に満足している。


「アルクレイは結末、どうなると思う?」


「変化もなく、受け入れて生きるしかないだろうな」


 奇しくも王女のスキルである健康のせいで、どれだけ嫌になろうとぐっすり眠れるし食べれるので、病気になって建物から自由になれず父親から離れる日は遠いだろう。

 ずっと子離れできず離れられなかった父親は、無理矢理同居させられた途端に繕えなくなった。


 王女は父親が甘やかしていることを鼻にかけて、他の血縁者たちに優越感を抱いていたのに今は離れたくて堪らない。どこかの時点で思い知ることになると皆わかっていた。


 寿命まで付き合うことになるかもしれない恐怖に、父親と娘がいつか気付く日まで。

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― 新着の感想 ―
あれ?王妃って生きてるんですか? 上の方で「>どうやら王妃は亡くなっているらしくフラニーを最後に〜」って書いてあったから亡くなってるのかと…。
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