103痩せろ!
しかし、相手にムッとすることを言われると聖女なんだからと言うのが口癖になってしまい、逆に部屋から出せなくなっている。城の中ならまだ庇えても外で発言しまうとなると、王とて庇える範疇を悠に超えてしまう。
使用人たちには守秘義務はないのと同じ。いくら口を閉じるように言いつけても漏れるのはどこの世界も同じである。王女が聖女ではなくなったのに今も聖女ぶってわがままを言う、だとか。王に甘やかされているから兄王子は呆れている、とか。
聖女たちや皇帝、兄たちに怒られたのに反省の意思がないということが、噂を余計に拗らせてしまい加速させた。泣く時も嘘泣きっぽいと常々言われるように。本人はその噂を知らないから泣くたびに、可哀想に思われている自分に酔いしれている。
「フラニー、泣くのはもうやめておきなさい」
「え、なんで、お父様!?可哀想なのよ、私!今も謹慎が解けないのに泣くなって酷いわぁあ!」
周りから「また泣いている」「嘘泣き姫」「嘘つき王女」「健康フラニー」「詐病お姫様」などと様々な誹謗中傷を囁かれていることを案じて止める父親。
しかし、そんなことで止まるのなら帝国に行かない程の自己中心的な性格なので、親の心子知らず。今も父親を悪者にして今の状況を利用しようと泣きつく。
泣こうが泣くまいが謹慎がなくなるわけも監禁状態が解けることはない。期限は今の所ないのだから。下手に自由にしたり謹慎を解いたりなんてして、社交界に赴いたりした場合どんな嘘をばら撒くかわかったものではないというのが王太子たちの気持ちだ。
帝国を怒らせているので謹慎などを解く気はなく、さらに怒らせる予感がするので他者へ嫁がせることもやれない。近隣国でもおそらく間諜たちによりフラニーについては知られているだろう。
どれだけ閉じ込めていても、自国のセキュリティが高いわけじゃない。防げているとはお世辞にも言えない程度には守秘できている自信がなかった。
ペコラはアルクレイとフラニーたちがどうしているか眺めつつ、これを聖女たち用に編集して回した。貸しに貸した。今回は無料だが、次回からはちょっと、ほんのちょびっとだけお金を集金してもいいかもしれない。お捻り的な感じで。
「素晴らしいですわっ」
「ドキュメンタリーというのですね」
「ノンフィクション、いいですわ。見応えもあって面白いです」
ペコラは然もありなんと太鼓判を押す。自信満々で作り上げた一品なのだ。動画のコンテンツは溢れ出るほど過去見たのである程度わかる。
動画は一つの作り方で見てくれる人数も変化しそうだ。編集力を鍛えたら見る気のない人も見てくれるかもしれない。これは制作側の目線である。
聖女たちの意見をちまちまと取り入れて行けば、聖女たちも動画コンテンツの魅力を知り始めて観覧閲覧視聴、言い方は様々であるが楽しむ層が爆発的に増えた。
聖女たちだけでは勿体無いからと聖騎士たちも観たい、と聖女を伴侶に持つ騎士たちがソロリソロリと言い始める。
この世界の常識では聖女は覇権を握るような存在なので前に出て言うことは無理だから妻経由で言って来ているのだ。
世話話ならフットワークが軽いものの、あれやこれやを頼むのは荷が重い行為なのかもしれない。その割には結構好き勝手に、プライベートを喋りまくる騎士もいる。
嫌味もなく単に世間話程度だから心臓とか精神とかが鋼で出来ていると見受けられるため、皆微笑ましく聞いたり聞き流していたりした。
聖女たちは心も能力も余裕があるので強者の余裕もあり、広い心で受け止めているのだろうか。でも、意外と世間話もバカにはできなかったりする。
言葉がきっかけで夫婦になる聖女が多いらしいから。先輩たちが教えてくれているので本当なのだそうだ。実感がやけにこもっていたから、多分だけれど身近に観たことがあるのかもしれない。
聖騎士たちが動物の動画を観たいと意見を聖女越しに伝えて来て、アルクレイの貴重なお宝動画を撮ってみたらウケが良過ぎて凄く笑ってしまった。
他にも猫や犬などをあちこち撮影してお土産にすると周りから黄色い声が上がる。男の声量も同じくらい混ざっているので、楽しんでくれているようでなによりであった。
「かっ、かわいいですわあ」
「聖女様、赤ん坊が寝ているだけなのに癒されますね」
さらに聖女と聖騎士のやり取りが活発になって、今まで知らなかったことを知れるようになったと好評をいただいている。そこまでの情報をペコラに上げなくてもよいのだが、とちょっと返事に困ってしまう。
そして、ほのぼのエピソードと真逆のギスギスエピソードがフラニーたちに訪れていた。きっかけを動画として視聴していると、外に出してもらえないストレスで丸くなった王女がドスドスと分厚いヒールで、父親に向けて抗議しているシーンによりわかる。
節制をしておけば、ここまでにはならなかっただろうに。国王も止めればいいものを。丸くなっても健康がスキルなので本当に問題がない健康体なのだと医師が死んだ目で告げていた。
「最近、体が重いの!外に出してくれないせいよ!」
周りの目が全て「食べ過ぎてだろう」と呆れた怒りと蔑みに満ちている。




